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Katharine・ニューヨークでルームシェア

ルームシェアした70歳代のキャサリンはアルコール依存症でした。

ニューヨーク大学の学生掲示板で見つけた彼女のアパートは、家賃が当時(1980年代後半)の日本円で8万円。当然半分の家賃だと思っているから15万円ぐらいのアパートならそこそこ広いだろうと想像して決めたけれど、面接にそのアパートへ行ったら、まあ古い。足を踏み入れたら狭い、暗い、あまり綺麗じゃない。入ってすぐにキッチンがあり(狭い)、その先に12畳ほどのリビング(兼彼女のベッドルーム!)そして6畳もない狭い部屋が私の部屋になる、と。金額のわりに狭すぎないか?しかも私の部屋になるというそのスペースは、リビングの先にあり、たいした仕切りはなく、ドアもない。ルームシェア、というより同居?一緒に暮らす?ルームシェア、同じか。

その時はビックリしたけれど、一方でおもしろーい、と。なんでも新しい体験と思えて他を探す気もなかったし、綺麗なおばあちゃま、というだけで入居を決めたのでした。最初から色々分かるわけがないのは当たり前だけど、同居を始めてからは驚くことが多すぎたねキャサリン。

驚き其の一は彼女がアルコール依存症だったこと。面接時はアルコールを片手に、ということはなかったし、同居を始めてからも、しばらくは夜には必ず飲むぐらいだったけれど、気づけば朝から一日中飲んでいる。朝からカウチ兼彼女のベッドに座って一日中ウオッカを飲んでるの。オレンジジュースで割って。朝おはようの挨拶をする時には、彼女の手にはもうウオッカ。手の届く範囲にウオッカのボトル。

それまでアル中の人を見たことがないし、アル中なんて頭にないし、考えたこともなく、人生にアル中なんてなかったから、彼女がアル中かも?と思い始めたのも、飲むことで変わる彼女の言動から。飲み始めて少しするとブツブツと何か言い始めて、そのうちに声が段々と大きくなり、言っていることがはっきりと分かるようになる。なにかを罵る言葉の連呼。ずーっと。大体いつも同じ単語を連呼するのだけど、テレビに反応して、テレビに向かって罵る時はほぼ会話で、私に意見を求めて来たりする。

なにしろ寝ている時以外は、いつもアルコールを片手に、何かをずっと罵っているか、部屋の中をウロウロする。ただウロウロする。これが一日中、毎日なので私は自然と外に出ていることが多くなっていったよね。彼女のことが嫌いではないのだけれども。

彼女の友人とも少しづつ知り合うようになり、共に過ごす時間を持つようになって聞いてみると、やはりアルコホーリックだと。けれど彼女、友人たちと一緒の時は酔っていないふりをする。毅然としてるの。でも依存症だと振る舞いがとても不自然になるのね。話していても何か変で、依存症って怖いね。

もともとすごく綺麗でおしゃれ。本当に綺麗な70歳代の女性だからアルコール依存症にならなければどんな感じの女性だったんだろう。なぜ飲まなきゃいけなかったんだろうと、今なら思うけど、当時まだ20代の私には、彼女が飲まなきゃいけない理由を考えたこともないし、だから飲むことを止めたこともなかった。

驚き其の二は、家賃は私の支払いが全額だったこと。シェアだから半分だと思ってましたが、全額だったのです。それは彼女が体調を崩して故郷に帰る話が出て、新たなルームメイトを探すときに分かったこと。びっくりしました。どうりで・・・と思い当たることがいくつかあって、本当に驚いたけれど、怒る気持ちは忘れてました。ニューヨーク、毎日が新しいことで、なにが起きても不思議じゃない街だから。この頃の私はエネルギーいっぱい、ポジティブな感情しかなかった。だからどんなことも楽しく受け止めていられました。

驚き其の三は、彼女が昔に女優をしていたこと。ナルホド、綺麗ですもん。顔、小さいの。肌は白くてシミとかなかった。それでスレンダー。背筋が伸びていて、年齢関係なく色気があった。笑う彼女が好きだったな。と思い返すと、彼女の姿やムードは綺麗だったね。

彼女は酔っていてもお化粧はしていることが多くて、化粧を全くしなかった私なんかより、はるかに大人の色気があったのです。彼女の友人も綺麗な人や洗練された雰囲気の人が多くて、何度か遊びに来ていた仲良しのアシュレーという男性は彼女と同じぐらいの年齢で、俳優だと言っていて、その時は「ふ〜ん、ほんとか?」ぐらいで聞き流していたけれど、あとで「摩天楼は薔薇色に」という、マイケル・J・Fox主演の映画に、チワワを抱えたリッチなおじさま役で出演しているのを見てびっくり!本当に俳優だったのですねアシュレー。

キャサリンがどんな活動をしていたのか全くわかりませんでしたが、十分に綺麗な彼女だもの、華やかにお仕事をしている時期があったと思うのでした。1年も一緒にいなかったけれど、狭いスペースで共に生活できたのは、年齢が離れていたから良かったのだと思います。何気にお互いを尊重できていたような気もするかな。

Life Tips: Love is not what you say. Love is what you do⭐️

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