【もう一つの刹那】オザケンオタクの高校生によるサブスク未解禁シングルの紹介
はじめに
Amazonプライムビデオで逃げ恥を見ていた。
第7話でブギーバックを思わせる平匡の「なくなくなくなくない」みたいなセリフや、みくりの「心のベストテン第1位」といった表現にニヤリとした。
リアルタイムで見ていればTwitterなんかでオザケンファンと共感を得られたのかもしれない。しかし、その時僕はまだ小6だった。
さらに言えば、オザケンが大名盤『LIFE』を出したのは僕が生まれる11年も前なのだ....
僕は中3で『LIFE』に出会ってからオザケンに憧れ続け、youtubeで動画を見たりCDを買ったりとオザケン関連の音源を探し回っていました。
しかし僕には、まだやれていないことが3つあるのです。
1つ目、オザケンのライブに行くこと。大学生になったらすぐにでも行きたいと思っています。
2つ目、『我ら、時』に収録されているとされるエッセイ集『DOOWUTCHYALIKE』を入手すること。
『我ら、時』自体はレンタルで聴いたんですが、借りられたのはCD部分だけでした。
そして3つ目、90年代のオザケンのサブスク未解禁かつアルバム未収録のシングルを網羅すること。今日はこういったシングル群を紹介したいと思います。
一般的なオザケンのイメージとしては、ヒップホップをメインストリームに紹介した『今夜はブギーバック』や、最近では車のCMでカバーされていた『ラブリー』のイメージが強いかと思います。
しかし。
『LIFE』以降の、オザケンが活動を休止するまでのシングルで『刹那』にも収録されなかった作品も名作揃いなのです。
特にここで紹介するシングル群には、オザケンの『流麗さ』が全面に出ているものが多いように思います。
それらは名曲『ある光』のように儚さやスムースさを持ち合わせた楽曲が多い一方で、渋谷系の王子様と称された頃のキラキラ感はすこし減衰したように感じます。
ユーミンで言うと『COBALT HOUR』から『MISSLIM』の作風に逆戻りしたような、エンターテイナーとソングライターのバランスの変化。時系列順に聴いても楽しめると思います。
サブスク未解禁シングルの紹介
戦場のボーイズ・ライフ
名盤『LIFE』直後にリリースされたシングルで
、それに通じるハープやクラビネット、ブラスのポップさ。
『LIFE』収録の『ドアをノックするのは誰だ?』の副題が『ボーイズ・ライフ pt1.クリスマス・ストーリー』、この作品の副題が『ボーイズ・ライフ pt2. 愛はメッセージ』となっていたり、そもそも『LIFE』というアルバム名にあるように、確実な繋がりを感じ取れます。
同年に阪神大震災があったことも関係しているのでしょうか、逆境の中で祈り、挑戦する主人公が描かれています。
恋しくて
『僕らが旅に出る理由』に比肩する大名曲。
イントロにはバングルスの『Manic Monday』をサンプリングしたフレーズが。
かつての恋人との日々を回想する、いわゆる一般的な恋愛と日常に落とし込まれた歌詞が目頭を熱くさせる逸曲です。歌詞の全部分を引用したいくらいにいいラインが多いです。
最初の一節。あやとりというモチーフが『糸』という愛の表現に繋がるように、不思議な力に守られているという共感性の高いフレーズ。
不思議な力に守られていると気づけないんですよね。オザケンが詩人としての技量をさらりと見せつけた最高の第1パッセージ。
胸を苦しくさせる具体性のあるフレーズ達。
「知りながら」「知りすぎた」というように自覚的な感覚を持ちながら恋をしている主人公。
いわゆるさとり世代のような人物像も感じ取れます。
『お互いのことを知りすぎたけれど
嫌じゃないよ 今 そう思う』
意識的なニュアンスと愛を絡めた素敵な表現にどきりとさせられます。
Buddy
『恋しくて』と同じシングルに収録されている、陽気なヒップホップ的ナンバー。
キャノンボール・アダレイの『ウォーク・トール』をサンプリングしています。
自転車のカラカラした音とサックス、そしてBセクションのドラムマシンのビート。
浮かれた夏休みを思わせるポップな楽曲です。
恋ってやっぱり
オザケンが友人の結婚式の前日にホテルの浴室で書いたとされる1曲。
『恋ってやっぱり』で止めるんですよね。
恋ってやっぱり...何?
ここの言い過ぎない感じ、『僕らが旅に出る理由』でとても素敵な長い手紙の内容を言わない、みたいな隠しも流麗さ、軽やかさに繋がっているテクニックだと思います。
『分からないね』という、いたずらっ子の笑みを思わせる、幸せな未来への一節。
ここも願いなどの要素を混ぜない身軽さを感じさせます。
指さえも
リズムマシンっぽい音色とギターのゆったりとしたサウンド、オザケンの先駆けストリートファッションなど見どころ満載の1曲。
ひたすらに甘く揺れる歌唱にオザケンの柔らかく軽い歌声が光ります。
出だしからロマンチックでスイートな一節。
『desperation blues』、つまり『やけくそのブルース』とでも訳せるでしょうか。
『君』と『あの人』の使い分けがされているのかいないのか僕もよく理解できていませんが、君=あの人、とするとひたすらに甘いですね。
ここまで甘い曲はオザケンの中でもこの曲と東京恋愛専科くらいじゃないでしょうか。
春にして君を想う
オザケンが表舞台から姿を消す前の最後のシングル。サックスのもったりとした演奏がアダルトな雰囲気を醸し出しながらも、セクシャルではなくジェントルな方向に綺麗にまとまっている逸曲です。
未来を想像する穏やかな目線。『LIFE』とは違った、円熟味を感じる歌詞が心にじわっと染みる心地良さが楽しめます。
この曲について調べていたところ、この方のサイトで引用元について数多く考察されているのを見つけました。合わせて是非ご覧ください。
ダイスを転がせ
『指さえも』と同じシングルに収録。
ロカビリー風の曲調で不利(?)な恋に思い悩む主人公が書かれています。
僕もニコニコに当時の映像が上がっていたのを最近見つけたので、語れるほどよく分かってないのです。詳しい方、教えてください!
back to back
トラックものでフレーズを繰り返し、じっくりと進行していく1曲。
臆病で恥ずかしがり屋ながらも何を思ったのか夜中の通りをゆく主人公。
ちょこちょこ挟まるセンチメンタルなフレーズが愛おしい、隠れた名曲。
tableやdanceなど英語をほんの少し混ぜた整った詞が青年の心模様を鮮やかかつ軽やかに描き出しています。
『傷を創りつつ 深い愛を知ったよ』
簡潔ながらするっと入ってくる一節。
そしてこの曲の見どころはなんと言ってもキメ。
キメ部分の『炎みたいなこんな時』のために、歌詞とビートをじっくりと積み上げているようにも感じられます。
今回紹介した中でトップクラスに好きな一曲
です。
まとめ
アルバム、シングルごとに表情を変えていくオザケンの詞世界をより深く楽しめるシングル達を紹介しました。
これを見てオザケンに興味が湧いたぞ、という方はぜひアルバム『LIFE』から聴いてみてください。
また、オザケンのアルバムを一通り聴いたという方は「球体トリオ」での演奏映像などを見ていただけるとより楽しめるかな、と思います。
それでは、今回はこのあたりで。
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