二重手術、埋没法のお話⑨
前回記事は↑こちら↑です。
この記事のまとめ
今回の記事はいつも以上に患者さん置いてけぼりで、どちらかというと美容医療初学者の若手ドクターやナースさんに読んで欲しい記事です。
埋没法では元に戻りやすそうな瞼にどう工夫して手術をするか、基本に忠実に正確さを極める事ですが、それでも切開法には遠く及びませんよ。
二重の線が消えないようにする工夫
条件の悪いまぶたでは埋没法ではなく切開法を選択する、とまぁ、身もふたもない話ですけれど埋没法で戻ってしまうのを避けるにはこれが一番なんですよ。
ここまで点留めよりループが良いとかナイロンよりアスフレックス®が良いとか色々書き散らかしてきましたが、切開法と埋没法の差に比べたらそんなものは微差ですよ微差!とは言えダウンタイムだったり『切る』事への抵抗感だったりと、「じゃあ切ります!」とは中々行かないですよね。
で、あまり条件の良くないまぶたで埋没法をする際、何を気をつけるか。一つ前の記事まで書いてきた適切なテンションで結ぶという話は、埋没法に理想的なまぶた、つまり厚さはなく、年齢やアイプチなどによるたるみも無く、皮膚疾患もない健康なまぶたであればそう難しい話ではありませんし、術式による差もそう出ません。言い方を変えると適切なテンションの許容範囲が広いのです。厚いまぶたではこの『適切なテンションで結ぶ」をより精度を高めてやる必要があります。
以下、術式ごとに分けて書いて行きます。
3点留め
点留めの場合は、結膜側に1〜2mm露出している糸が軽く凹むぐらいが原則です。厚いまぶたではそこから更に締め込んで行きます。この締め込みをする為には、最初の2回を女結びでやってから締め込みを調整し、最後の一回を男結びで固定すると良いです。女結びの方が滑りやすいのでね。
締め込みの確認は、慣れないうちは開閉瞼をして貰うのが良いです。まず中央を結びます。目を開けてもらい、中央以外の糸を通す予定の場所とのちょうど中間ぐらいまで十分な引き込みの重瞼線ができればOKです。ここで適切なテンションを作っておけば、内側と外側は中央より少し弱いテンションでもちゃんと中央と繋がる重瞼線が出来るのが確認できるはずです。生まれつきの二重まぶたでも中央(正確には中央やや外側寄り)の引き込みが最も強いので、この順序でやるのが良いかと思います。慣れてくると瞼を閉じさせたままでも締め込んだ際の皮膚の凹みでわかるようになります。
通常のループ法
これ一番難しいのね。というのは、シングルループだと、前項で書いた生まれつきのまぶたで一番引き込みの強い場所とは違って、結び目の両端で引き込みが強くなるので。みんなどうしてんだろう?そういう点ではダブルループの方が有利よね。縦方向の糸が4本になるし、中央部は重なった二本の糸で引かれるから。点留めと違って、裏側の糸が結膜で被覆されるかを気にしないで良いので、テンションは緩めにできる。最近やってないので細かいコツに関しては触れません。
多交差6点法
これは一番詳しく書きましょうかね。
まず、この図で番号が綺麗に並んでいない理由は、皮膚側の糸を通す順番に従って番号を振ったからです。
実際の通糸の順序は
①’入→②’出→針持ち替え→①’入→①出→針持ち替え→②’入→②出→②入→③出→針持ち替え①入→④出→④入→④’出→④’入→⑤’出→⑤’入→⑤出→⑤入→⑥出→⑥入→⑥’出→⑥’入→③’出→③’入→③出→結紮………
って、こんなめんどくさい事俺はしてたのかと改めてびっくりしました。この順番に落ち着いたのは、瞼板側の運針で逆針(右利きの私だと左から右)が無いからと、結び目が端の方が目立たないかなって思うからです。
さて、この記事のテーマである適切なテンションの調整は何段階かに分けてやります。まず①→④(ここは一応見とこうぐらい)、④’→⑤’と⑤’→⑤で瞼板の中を通すことの抵抗で①-④間のテンションがほぼ決まります。同様に一番長い⑤-⑥間のテンションは、⑤→⑥ の通糸そのもので様子を見ながら、⑥→⑥’と⑥’→③’で決めて、最後に結紮で②-③間のテンションを決める感じです。
薄い瞼なら閉瞼では全工程で凹みが全く出ない程度にします。
厚い瞼に関しては詳しく書きましょう。①-④間のテンションは⑤’→⑤を通糸した時点で皮膚にピンと張った感じはあるが陥凹にはならない程度にします。③’→③の通糸後は①-⑤間は僅かに陥凹し、②-⑥間はギリギリフラットになるよう調整します。最後に結紮で②-⑥間が僅かに陥凹するよう調節します。
あとがきと次回予告
実は結び目の作り方にも変な拘りが(いやもう、ここまで来ると自分でも【変な】としか言いようが無いのです)有って、その文章も書き始めていたのですが、結び方のイラストが中々面倒でして(結び目部分の糸の前後関係が……)。
ここまででもそれなりのボリュームになってしまったので、一旦この記事を上げて、次回はその結び方のこだわりとか、結膜側の通糸を点ではなく線でやる理由とか、皮膚側の運針は実は今日書いたのとは違う(えっ!?)とか、そんな話を書きますが、これ一回で終わるかな?
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