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二重手術、埋没法のお話⑧

今回は珍しく予告通り(【予告】とは)、『元に戻らない埋没法手術とは?』に関して書きたいと思います。前後編にわけて、今回は総論的というか概念的なお話をして、次回で実際に私が手術する場合のお話を書こうと思います。

今回のまとめ

埋没法でラインが消えない秘訣は埋没法に向いているまぶたを選ぶ事に尽きる。とは言え100%埋没向き!という状態ではないまぶたに埋没法をすることもあり、そういう時は『丁度良い強さで結ぶ』と良いよ!




結ぶ強さの話

強く結んだ方が長く持ちそうな気が何となくしませんか?実はそんなことは有りません。

安心してください。私も美容外科医になりたての頃はそう思っていました(恥)。

埋没法で作った二重の線が消えてしまうのには、前回の記事で書いた様に、糸に引っ張られたまぶたの組織が緩んでしまう≒ゆっくりと組織が切断されることが大きく関係しています。この切断は糸を強く結ぶほど早く進みます。

では緩く結べば良いのかというと、それはそれで問題があります。緩すぎてはそもそも皮膚の引き込みが作れないからです。

強すぎず、弱すぎずの適切なテンションで結ぶ必要が有ります。


では適切なテンションとは?

十分な引き込みが作られる範囲でなるべく緩く結ぶことです。糸による違い、術式による違いについて解説します。

糸の種類による違い

ナイロンでは癒着を生じさせるために、ポリプロピレン(プロリーン®)やポリビニリデンフルオライド(アスフレックス®)に比べて強い力で結ぶ必要があると思っています。明確なエヴィデンスは無いのですが、ナイロン→ポリプロピレンの移行期に「ポリプロピレンならもっと緩くても良いのでは?」と気づいてから、それまでよりも少しずつ弱いテンションで結んでみることを繰り返した結果からの推測です。

これは完全に憶測ですが、癒着を生じさせるためには皮膚と瞼板なり挙筋腱膜なりの距離を近づける為に強く結ぶ必要があるのがその理由ではと考えています。

術式による違い

ループ式ではループの全長で皮膚のすぐ下に通した糸が皮膚を引き込むのに対し、点留めでは3〜4mm程度の長さで2〜3箇所だけなので、同程度に皮膚を引き込むためには点留めはループより強い力で糸を結ぶ必要が有ります。

また、点留めでは通常裏側で瞼板内や挙筋腱膜上を通すことはせず1〜2mm程度結膜に糸が露出した状態で手術を終えます。露出したままですと角膜を傷つける事になりますので眼瞼結膜に糸が覆われる様にも強く結ぶ必要があります。

適切なテンションで結ぶこと自体は一本一本の糸が短い点留めの方がコントロールが簡単です。以前の記事で術者の技量による差が出難いと書いたのは、これも理由の一つです。

ループ法の中でも現在私がお勧めしている多交差6点法は、天然の二重で最も引き込む力の強い中央部を含む6ヶ所に縦方向の糸が通るので、両端の2ヶ所にしか縦方向の糸の通らない通常のループ法よりも弱い力で結んでもまぶたを引き込むことが可能と考えています。

『厚いまぶたは埋没法に向かない』の意味

これも常識ではありますが、本気で『なぜ』を突き詰めて考えることって少ないと思うんですよね。一つには以前に『二重手術、埋没法の話③』で書いた様に、皮膚から瞼板までの距離が遠いので癒着が生じ難いというのも一つの理由です。そちらでは話を単純化するために書きませんでしたが、もう一つは、重瞼線を作るためには厚いまぶたでは強く結ばないと皮膚が引き込まれないので、この記事の冒頭で述べた様に糸に引っ張られるまぶたの組織の緩みは速く進んでしまうのです。


雑談(或いは古の恐怖)

さて、いつもより短く終わりそうなのでちょっとした雑談、いや怪談かもしれないお話を。

私が最初に常勤美容外科医として働き始めた今は亡きKクリニックでのお話です。その頃は売り上げ面ではSとKのツートップが鎬を削っておりました。

そのどちらのクリニックでも、埋没法はナイロンの点留めでギュッと強く結ぶ事になっていました。Kクリでは新入職のドクターに、その理由は緩すぎるとそもそも二重にならない、結び目が落ち込まず目立ったり場合によっては皮膚から露出してしまう、裏側の糸が粘膜に覆われず角膜を傷つけてしまうと説明されていました。

まだまだ自分で切開系の手術をする様になる前のこと、全切開法の手術を見学していた時です。師匠が瞼板のすぐ前を剥離していくと、糸の結び目が見えました。糸を強く結んでいた為に、皮膚のすぐ裏にあるべき結び目が瞼板のすぐ前まで落ち込んでしまっていたのです。術後の小カンファレンスでその件になり、私が「なら、強すぎず弱すぎずの丁度良いぐらいの強さで結んだほうが良くないですか?」というと、師匠は「今はその方が良いよね。剛くん入る前は埋没の保証って1年だったから」

(意味がわかると怖くなる話)これ以上は書かずにおきます


あとがきと次回予告

次は実際の手術に即して、こんな時はこんなことを気をつけてるよとか、そんな話を書こうかなと思っています。正直、今までの感じからして次回では終われないかなー。あと、またMac立ち上げてイラスト何枚か描いてからになるので、数日はかかるかも知れません。イラストの進捗によってはこの記事にもイラストを追加する………かもw


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