校長先生の話が、長い
1.学校での朝礼
昔々の思い出にある、小・中学生の頃の朝礼
全校生徒、あるいは児童・生徒数が多い学校ならば一部の学年だけ集められての週1ないし月1での朝礼・もしくは朝会である。
朝礼では生徒の表彰や生徒会からのお知らせ、
先生達からの連絡や注意事項と共に
校長先生の講話などが授業前に行われていたものである。
その中でも特に校長先生の話が長いと耳にしたことはないだろうか?
クラスでのおしゃべり、どこかからのウワサにしろ、
小説、漫画、ドラマに限らず言われてきたのではなかろうか?
聞いただけでなく、体験としての記憶も重なり
「あぁ、確かに校長の話は長かった」
などとみんなの会話で繰り返してきたのでないだろうか。
だが待って欲しい。
2.実際、そんなに長かったのだろうか?
朝礼の時間は学校にもよるだろうが15分~20分程度の学校が多いだろうし。
朝礼の後には当然授業があり、
時間割として限られた時間だけが朝礼に与えられている。
その中で表彰のあるなしはともかく、
お知らせや連絡はほぼ確実にあるだろうし、
実際に校長先生の話として充てられる時間は10分もないのでは?
校長先生ともなれば熟達した教育者であり、
自分の話に夢中になって間延びさせるような真似はしないだろう。
では、そんな10分足らずの話が長く感じたのはなぜなのだろうか?
3.理解できないから長い?
楽しいことは時間が早く過ぎ去るように、
退屈なことは時間が長く感じるように、
話が面白くないので長く感じてしまうのか?
校長先生の話と言えば、
昔の体験だったり故事を絡めての教訓、
あるいは最新の研究などからの知見と、
子供からした何の興味も湧かない可能性が高い内容となっている。
だが、子供はどこに興味を持つか未知数だ。
それこそ大人の思いもよらない点に目を付けては驚かされてばかりだ。
そんな子供達が一様に校長先生の話を楽しんでいないとも考えにくい。
それに何より校長先生の話は長いのであって、
つまらないというものではないのである。
勿論、理解できないからこそ中身を判断出来ない可能性もある。
であるならば、話の良し悪しではなく別の感覚的な物からくるのだろうか?
4.ドタバタアニメ
猫だったりネズミだったりの子供向けアニメを思い出して欲しい。
追いかけたり罠を張ったり、あっち行ってこっち行って、
あれやってこれやってと30分のわずかな間でドタバタと話が展開していく。
話の展開だけでなく、動きもせわしない。
跳ねて、走り、回り、叩いては捕まえる。
一つ一つの動作自体が早回しのようにスピーディーだ。
逆にお年寄りと話すときはどうだろう?
体調や聞き取りにくいからということもあるが、
それ以上に話や声のテンポ自体が緩やかである。
個々の感覚にもよるだろうが、
本人からしたらごくごく自然に話している可能性はないだろうか?
5.時間と齢と
ジャネの法則というものがある。
時間感覚は今まで過ごした時間により異なり
年齢の逆数に比例するというものだ。
例えば同じ1年であっても、
30歳程の大人にとって人生の1/30であるというのに対し、
90歳ぐらいのお年寄りからしたら人生のたった1/90でしかないのである。
10歳ぐらいの児童からすると1年はなんと人生の1割にも上る。
校長先生が50歳位とすると実に5倍もの時間感覚の開きがある。
もしこの倍率が時間感覚に適用されるとしたら、
大人と子供の感じる世界はどれほどズレてしまうのだろう?
6.倍々時間
ではこの時間感覚で大人の尺度を子供が見た場合どうなるのか。
30歳程の大人というと、映画を楽しむなら2時間と少し位なので10歳の子供からしたら6時間相当以上にもなる。
こんな長時間箱詰めにされたら大人でもなかなか耐えられないだろう。
報道番組やドラマも同様に、1時間枠であれば3時間相当。
ちょっとした大作映画だ。
それがニュースともなれば、
子供にとって慣れない難解な言葉をスローモーションで展開される、
ある種の催眠映画ではなかろうか。
7.体感~ジャンクション効果~
実はこの時間感覚のズレ、簡単に体感できる。
車の運転をしていると高速道路から一般道に降りた際、
妙に視界に入るものをはっきりと認識できないだろうか。
感覚が鋭い人ならスローモーションに陥ったような違和感を覚えるはずだ。
これは高速道路での速い運動に慣れた感覚が、
一般道での速度に対し相対的に遅く感じるためである。
あるいは動画を早送りで再生して見ていると、
標準の速度ではとてもスローな再生に観えることだろう。
ゲームで速度設定がある場合も同じく、
例えば音楽ゲームなどは同じ曲でも見た目速くも遅くも感じてしまう。
※音楽ゲーム:リズムに合わせて動くターゲットに触れるゲーム
この時間感覚のズレは先のジャネの法則とは原理が異なるものの、
同じ時間で展開されているものが、
主観によって感じ方が異なることを体験できる。
8.校長先生の話は、長い?
最初の話に戻ろう
校長先生にとって10分ほどの話は、
子供達の時間感覚にして1時間前後となるではないだろうか。
大人からしてもドラマを観たようなものだ。
子供からしたらなおさら長く感じるのも当然ではなかろうか?
大人の尺度で分かりやすくとは、
子供にとっての退屈なのではなかろうか?
彼らの時計盤につま先だけでも踏み込んでみたら、
学習時間は案外ずっと短くて済むのかもしれない。
尤も、今の社会が大人の時計で進む以上
「大人の学びやすい時間」
で語られる環境が、彼らの秒針を許さないのだろうけれど。
あとがき
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