「着物の適正価格(相場)がわからない」のはどうして?
着物に興味を持った当初の悩みはつぎの3つでした。
1.着物の適正価格(相場)がわからない
2.着物のTPOがわからない-いつ、どんなシチュエーションにどんな着物を着るの?
3.着付けがわからないー着物をどうやって着たらいい?
ここでは、悩みの1つ目「着物の適正価格(相場)がわからない」という悩みに対する自分なりの考えを整理します。(残りの2つはまたいつかまとめたい…)
もちろん正解があるわけでもないので、ここで述べることは一個人・ユーザーとしての考え・仮説にすぎません。
また、残念ながらこれを読んだからといって、答えがわかるわけでもありません。
かつ、すごーく長くなりますが、お付き合い頂ければ幸いです。
・「着物の適正価格(相場)がわからない」という悩みの原因は3つ
私は
「着物の適正価格(相場)がわからない」という悩みの原因は3つある、
と思っています。
原因① 着物は複雑な流通構造をしていること(産地→製造問屋→前売屋→小売→消費者)によって売値と原価の関係が不透明であること
原因② 着物小売店と消費者(ユーザー)との知識の格差
原因③ 着物小売店に対する消費者の不信感
・3つの原因に対する着物業界の変化
3つの原因に対して着物業界、特に着物小売店が、その事実・対策の必要性を認識していないとは思いません。
例えば、着物業界の方々と各界有識者との会議をまとめた平成27年6月16日 経産省「和装振興研究会報告書」にも、価格に関する原因についての記載があります。
(蛇足ですが、この報告書はめちゃくちゃ面白いので、着物業界に興味のある方は一読をおすすめいたします↓)
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/wasou_shinkou/pdf/report01_01_00.pdf
以下灰色部分は引用
製造問屋が複数の製造工程を管理し、前売問屋が需給調整を行うコーディネーターの役割を果たすという、従来型のシステムは、大量供給型の市場では効率的に機能してきた。
しかし、市場が縮小した近年では、従来型の製造・流通システムを機能させることが難しくなっている。
また、このような多段階分業型システムでは、各段階で価格が上乗せされ、製造コスト、流通コストが上昇する点もきものの高価格化の原因になっているとの指摘もある。
「東京都中小企業業種別経営動向調査報告書」の呉服関連の経営比率を見てみると、
呉服小売業の昭和 56 年度時点の売上原価率は 64.2%であったが、平成 25 年度には、49.5%と低下している。
また、織物卸売業についても、昭和 56 年度には 80.9%だった売上原価率は、平成 25 年度には 74.8%と低くなっている。
きものの価格が高くなる要因として、流通が複雑である点を述べたが、
出荷数量が大幅に減少したことで、各流通段階で過剰在庫を抱え、各流通段階において返品リスク、金利の負担分を価格に上乗せすることが行われた点も指摘されている。
さらに、出荷数量の減少が顕著となった昭和50年代以降、委託販売が増加したことも指摘されている。
この委託販売では、在庫リスクは製造問屋が持つことになるが、
価格については、小売側が消費者のニーズを把握しながら決定するため、在庫リスクを持つ製造問屋が販売価格を決めることができない状況にある。
これが、消費者が価格の不透明性を感じる原因になっているとの指摘もある。
ただ、消費者が抱える悩みを業界が認識しているからといって、例えば上場している業界大手の着物販売会社に関しては、従来の販売手法を大きく変えようとはしていない、と私は思います。
この根拠は、例えば東証一部上場の着物販売会社の有価証券報告書を見れば、その事業戦略・事業のリスクの記載内容を見る限り、大きな変化が見られないからです。
上場会社の有価証券報告書はインターネットで公開されているので、試しにコマーシャルで目にするような有名な着物販売会社を検索してみてください。
一例として、従来からとられていた、個人情報の名簿を入手し営業する手法が有価証券報告書の事業リスク欄に記載されており、かと言って他の手法への代替は検討されていないことからも、大きく事業形態を変えるつもりはないんだろうということが垣間見れます。
でも、変化ははじまっているのではないか?
じゃぁ、何も変わらないし、悩みは解消されないかというと、そうではない、と私は思います。
着物業界はこれらの原因を取り除くために、一部のメーカーさんや小売店では「変化」が進んでいると思います。
報告書でもこんな取り組みが記載されています
・買う人を増やすため、メーカー側で「希望小売価格」を設定することにした。これによって価格の透明性が確保できた。
・消費者の目安とするために、きもの価格の信憑性を確保できるメーカー希望小売価格を積極的に取り入れ、それを広く知らしめる。またそれによって小売価格の極端な高低差をある程度防止できると思われる。
・消費者からの「きものの値段が高い」という指摘を受け、産地と連携してきものを展開している。上代を決めて全国的に同価格で販売している。エシカル、フェアトレードを説明しなが
らものづくりをし、情報発信している。
・自身の店はきもののネットショップであり、職人さんと一緒にオリジナル商品を作っている。問屋は通さないことを基本とし、上代は明確にしている。リアルに服を買う感覚だと2~5万円の価格帯が中心であることを念頭に、価格を設定している。
・日本の職人が作るものは問屋を通さなくてもそれなりの値段になる。1 万円程度の和素材の
小物から入ってもらい、徐々にきものに興味を持ってもらえるような取組をしている。
例えばあづまさんのYouTube番組や、
染織こだまさんの全国各地での販売会、webショップを見ても、
これまで非公開情報だった、価格などを含む製品情報がインターネットで自由に知ることができます。
着物業界も今の日本の経済環境に影響を受けることは避けようがないことです。
昭和50年代頃と言われる着物の出荷金額のピークは1.8兆円でしたが2013年には3000億円規模、ピーク時の6分の一まで減少しています。
出荷数量の減少を受けて供給側が高付加価値商品に偏った販売をしていてもとし、今のライフスタイルには合っていないことは明白です。
従来型の販売手法を維持したとしても、現代の日本ではインターネットが普及しており、消費者も情報にアクセスがしやすくなりました。
かつメルカリ、リサイクルショップなどの中古品市場も拡大しています。
着物業界がいくら旧態依然としていたとしても、周りの経済環境を押しとどめることはできません。
着物業界、特に着物小売店がオープンなマーケットになり、競争原理が働くことは、価格の低下と品質の向上につながり、
消費者、ユーザーにとっては大変喜ばしいことです。
どんどん着物業界が変化していくことを、私は望んでいます。
消費者(ユーザー)も変化したらいいんじゃないかな?
じゃあ、消費者、ユーザーは着物業界に期待するだけで、なんにも変わらなくていいのかというと
私は消費者、ユーザーも変化することが必要だと思っています。
例えば、
・着物を楽しむためには、最低限のリテラシーを身につける、勉強すること。 どんな値段であったとしても、自分が納得していないのであれば買わないこと。
場の雰囲気に流されたりしない、賢い消費者になりましょう。
結局その価格が妥当なのかどうかというのは個人で最終的な判断をするしかありません。
一般的な相場がある人しても、その個人の考え方次第で、その商品が高いのか安いのかは変わります。
自分の足でお店を複数訪問して比較すること、
検討している商品について、インターネットを利用して検索すること、
周りの詳しい人に聞いてみること、
図書館や本屋さんで着物に関する本を読んでみること、
勉強する方法はいくらでもあります。
自分で勉強することもなく、
自分で判断する指標を持たずに、
小売り店の方に高すぎる!1円でも安くして! 、というのは、
消費者と小売店の信頼関係を壊してしまうことになるのではないでしょうか。
納得して、いい買い物した!と思える楽しい着物ライフを送りたいし、
周りの人も送ってほしいなと願っています。
そして、もう十分着物に詳しい方々についても、
・「着物小売店は怖い!着物警察は怖い!」とネガティブな面だけを伝えず、「こんなにユーザーに親切なお店もある」「着物ユーザーのつながりがある」という情報を発信・共有すること
・「お仕立てvsリサイクル」の二項対立、二者択一の考えからも自由になり、それぞれの良いところ、悪いところを知ること
がもっともっと進んで行くといいなぁと思っています。
例えばYouTubeでtontonのきよみさんが、YouTube視聴者で地域ごとのグループチャットをつくり、着物ユーザー同士の情報交換を促進しているということは、とてもいいのあることだと思っています。
長くなりましたが、
着物業界も着物ユーザーもどんどん変化していこうという話でした。
読んでくださってありがとうございます。
それではまた今度
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