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アイドル16人に落っこちたムビナナを振り返る

5月20日に公開された「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」が、9月下旬に千秋楽を迎えました。「アイナナ」の劇場版なので通称はムビナナです。
アイナナ沼に飛び込んだ経緯については当時書きました。

…と思ったら全然経緯を書いてなかった。何してるんだ。
つわりがひどくて起き上がれなかった頃、ソファに横になったままそのクールのアニメを消化していた流れで、たまたま録画された3期を観始めました。ビジュアル(主に顔)の良さ、アイドルものなのに皆の表情が暗いまま話が進むところが気になってアニメを1期から遡り、YouTubeで公開されているMVを見ては「曲ごとに制作スタジオが違うの!?」と驚愕し、ストーリーの続きを知りたくてついにアプリに手を出す。出会ってから3ヶ月で、ストーリー4部まで完走しました。
Podcastでお話したアイナナ関連のエピソードは、以下のプレイリストにまとめています。

その後はキャストによる過去ライブのアーカイブ、7周年イベントの配信、Re:valeのライブビューイング、ŹOOĻ現地…と少しずつ現場を重ね、リアルタイムで5部と6部のストーリーを追って、ムビナナへと至ります。

生身16人分の情報量

初めて観たのはDAY1、拍手もペンライトも歓声もなしの通常上映です。初見で応援上映に飛び込む勇気はなかった。平日の夕方、友人と待ち合わせて映画館へ。

わぁ特典豪華〜なんて言ってた上映直前。

去年の7周年イベントで披露されたCGライブとは違う「アニメーションの劇場ライブ」だということは理解していました。「アニメやアプリで観たライブシーンが続く感じかなぁ、お顔は、動きはどうかな、セトリどうなるんだろ…」などと出かけましたらば、なめらかなアニメーションどころじゃない。

16人が、そこにいた。いたんですよ。

ハーフアップ&すらっと美人なお顔立ちに反して、重心低い踊り方でガツガツ攻める一織。7周年でも思ったけどダンスの元気がいいよね。
肩入れて踊るハードめなダンスが得意そうなのに、誰より自然なウインクを次々とキメるトウマ。ああ、この人アイドルのキャリア長いんだった。
3人の体格差が際立つTRIGGERにおいて、長身を活かした踊りからゆとりが滲む十さん。ビーストを超えて菩薩のよう。足なっっっっがいね。
ファンサの化身ナギの、磨かれた立ち居振る舞い。エレガントな所作ってこういうことか。モンジェネから掴まれた。これからは殿下って呼ぶね。
小柄な分、手足を大きく使い続ける三月のスタミナ。彼は弱点を自分で武器に変えて夢を追いかけてきたんだな。4秒間のキラキラに撃たれた。

…え、皆そんなにしっかり踊るの?
そんなにばちばちファンサするの?
君たち、そんなにかっこよかったの??

予想以上に、実在する人間の動き方、踊り方だった。モーションキャプチャや3DCGの技術に緻密な演じ分けやキャラクターの作り込みが掛け合わさった「生身の人間16人分の情報量」とライブ演出を浴びました。わかっちゃいたけど16人て多いよね。全員集合したときいつも、誰を追えばいいかわからなくなる。

アイナナのストーリーは、中心となるグループ「IDOLiSH7」の成長譚を軸にしながらも、4組16人の人間関係が絡み合って紆余曲折していきます。大事な曲を盗まれたりメンバー不信になったり、突然国に帰ったりベランダから落とされそうになったり。そんな渦中にいてもずっと、彼らはファンに向けて「アイドル」をやってきたんだな。それらを経た今、ステージの上でこんな表情をするんだな。
情報量に押し流された帰り道、ぼんやりとそう思いました。とにかく初回は受け止めるだけで精一杯だった。
それでも、彼らの一挙手一投足や些細な視線の動きから、私がこれまで追いかけてきた物語の16人と同一人物だということだけはしっかり伝わりました。
ストーリーを通じて1人1人の人柄に好感や愛着は持っていたものの、基本的には俯瞰で人間模様を楽しんでいました。推しは誰かと言われたら、1人だけ乙女ゲー街道を爆走する蕎麦屋こと八乙女楽と歪んだ二階堂さんかな…という感じ。
ところが、ムビナナでパフォーマンスを真正面から浴びて初めて「君らアイドルだったんか…全員推せるわ…」と思った。2年経ってアイドルに落ちた。しかも4箱16人。
よく考えたら、アイドルライブ体験もムビナナが初めてでした。ファンに夢を見せる、大変なお仕事ですね。すごいや、アイドル。

回を重ねるたびに全員の新しい魅力を発見することになるんですが、初鑑賞時点での「今まで気づかなくてごめんめちゃくちゃかっこいいよ推すわ大賞」はナギさん&三月さんです。勝手に目で追ってしまうことが自分でも意外で、思わずさん付けしていた。

毎回違うライブ体験

ペンライトへの抵抗はまだちょっとある。けど拍手はしたいなあ…。そんな興味を抑えられず、その週末はDAY2の応援上映へ。手元には友達が用意してくれた100均の7色と、ŹOOĻのライブで買った狗丸トウマの2本槍。周りにいらした匠達の技に圧倒されながら、見よう見まねで楽しく振ってきました。

基本はソフトな物腰で品よく踊るのに、そーちゃんのリズムの取り方はときどきすごく思い切りがいい。
ササゲロの「いやーだよ」でこれ以上ない共依存メンヘラ顔を作り込んだパフォーマー虎於、笑顔で「怖くない」って歌えて、よかったね。
パッツンおかっぱ巳波さん、足の開き方や挑発視線から自信が漲っていた。一織や巳波さんのようなソフト美人がゴリゴリ攻めて踊ってるの、いいよね。
モモちゃんは一貫して表情管理が完璧。「自分が好きだった存在」になると決めて努力した人なんだよな、といつも思う。運動神経の良さと体幹の強さが伝わるダンス。
美プレで八乙女楽の「うーぅわなっびっとぅっぎゃっざぁー」を待ってしまう。顔が近いんよ。ダンスの緩急と、程よく力の抜けた歩き方がよい。
Pieces of The Worldで一言だけユニゾンするはるちゃんの横顔を見ると、彼の「ここ」に想いを馳せてしまう。

内容はセトリ違いの2days公演。大小さまざまな映画館で観ました。
「今日はなんだか画面が白いな。照明強め?」とか「画面のなかの歓声がよく聞こえる…今日レインボーアリーナにいる観客とは仲良くなれそうな気がする」とか、劇場や設備の差も含めて1度きりのライブだと思えた。応援上映で一緒になった皆さんの、掛け声やペンライトの色も毎回楽しみでした。

ドルビーシネマの入り口で。特典のサイン箔押しカードが綺麗。

音と映像にただ浸かる、ドルビーシネマ版もよかったな。あんなに見えないものが見えて、聞こえなかった音が聞こえるんですね。黒が真っ黒。白が真っ白。音像も音の遠近感も明確。繊細な濃淡が重なったNiGHT FALLの衣装も、歌った後にすっと空を流れる涙も、階段をのぼる順番を待ちながら、ステージ下で足踏みする陸くんも全部見えた。ドルシネで一度見えると、通常のスクリーンでも見えるようになるから不思議。ドルシネはムビナナ以外の映画でもまた観たい。
ちなみに日付変更と同時に行われる週末のドルシネ争奪戦、奇跡的に1番乗りでどセンターをいただきました。いつも全然繋がらないのに。鹿児島からアクセスしたから…?

見たことないよこんな画面。

そのほかグループの舞台挨拶中継回などを経て、私の楽日は初めて出かける劇場でのDAY2応援上映でした。やっぱり大きなスクリーンはいい。周りにも画面にも集中しつつ、ペンラも振れるようになりました。最初の頃はどっちにも集中できなくてアワアワしてたのにな。

ダンススキルの高さゆえ全体にも調和できる環。結成当初は1人頭抜けていただろうにな。NiGHT FALLの、ズンズン指さす振りが好きです。
ユキさんのダンスは省エネ気味でコンパクト、軽くてしなやか。運動苦手なのは伝わってくるのに、佇まいに風格を感じる。王者。
観客はもちろん、陸くんに送る一瞬の視線すらプロフェッショナルなてんてん。ストイックさと華の同居、それでいて振り付けはどこか可愛い。
アイドルしている二階堂さんを見られて嬉しいです私は。流す部分としっかり踊る部分のメリハリがあった。あと可愛い振り付け似合いますね。
無邪気さとパフォーマンスを絶妙なバランスで両立させて観客を引き込む陸くん。7人と16人の真ん中に立って引っ張る、圧倒的なセンターだった。

そしてTOMORROW EViDENCE

セトリについても感想はいろいろあるけど、1曲選ぶならこの曲。
去年の大晦日にブラホワで映像を観たときは、正直「アイナナらしい青春ソングだなあ」くらいの印象でした。直前のUtopiaとBE AUTHENTICのインパクトがあまりに大きかった。ブラホワの結果も「…まあそうだよな、私は小鳥遊事務所のIDOLiSH7担当マネージャー・小鳥遊紡さんですし」と冷静に受け止めた。それなのに。今ではムビナナでいちばん好きな曲です。
ライブ全体のアンセムはPieces of The Worldだけど、MONSTER GENERATiONから始まった物語を総括して次へ進めたのはトゥモエビだと感じました。ブラホワに挑むだけでなく、「ピリオドの向こう」という名の合同ライブを形にするためにも必要な曲だったんだな。このあとアプリでこの曲を全員で歌う経緯を知って、モモちゃんの気遣いと懐深さにジンとする。やっぱり何がどうなってもRe:valeは王者だよ。
パネルが開いて6人が陸くんに駆け寄るイントロ、最後に9人が合流する間奏。曲だけ聴いていても映像を思い浮かべてしまうようになりました。

初めて接した「推し活」現場

いわゆる「推し活」やファンダムには縁が薄かったので、鑑賞&応援するという体験も新鮮で興味深かったです。好きなバンドや音楽家はいるけど「ライブ行くぞ!観る!跳ぶ!声出す!腕振る!はーー発散した!」または「じっくり観た…受け止めた…噛みしめた…反芻するぞ…」という受け止め方が多くて、応援したり支えたりという意識はあまりなかった。また、ペンライトは周りの迷惑を考慮して胸より高く振らないなど、初めて知るお作法もいろいろ。
ただ、応援したり買い支えたりという意識が強くなりすぎると、自分と他者との境界線が薄れる危うさもあるなと感じています。距離感を誤りやすいというか。これについてはもう少しじっくり考えて整理したいです。

…などと、今もキリなく考えてしまう。こんなハマり方をすることも滅多にありません。
1月にムビチケを買ったときは「まあ2daysを1、2回ずつ観れば十分か」などと思っていたのに、気づけば2年前のシンエヴァに並ぶほど通っていた。確実に自分の中で何かが育った。これがアイドルおたく成分なんでしょうか。
Pieces of The Worldのフォーメーションを追いかけたり、家でBlu-rayを何度も戻して美プレとNiGHT FALLの振りを練習したり(できてはいない)、最初は恐る恐るだった友人が音もなく沼に沈むさまを隣で見たり。初めてだらけの4ヶ月。

楽しい時間をありがとうございました!皆、ずっとかっこよかったよ。

…とはいえまだ名残惜しく、先日事後通販でようやく公式ペンラを購入。次の機会は16人分ぶんぶん振るぞ。さらに迷惑なことに、アイナナ未履修の友人にムビナナ本編Blu-rayを送りつけようとしているところです。

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