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春の歌

 春の歌、歌え、歌えと
 どこからか、声が聞こえた気がしたので、
 私は窓の外を見た。
 雲の隙間(すきま)から光が差している
 子供達が駆け抜ける(かけぬける)
 道端のお地蔵さんが微笑んでいる
 (みちばたのおじぞうさんがほほえんでいる)

 春か……。

 私は下着姿になって
 姿見(すがたみ)の前に立つ
 「こんな体形では夏の砂浜を歩けない」
 「気にすることなんか、ないよ」
 自分自身と会話する。

 どうせ死ねば
 焼き場でバラバラ
 灰になって
 形なんか無くなってしまうのさ

 冬と夏の間のこの季節
 私は運動することにした。
 運動の基本は歩くこと
 黒のトラックジャンパーを羽織り(はおり)
 ボストン・レッドソックスのキャップをかぶった
 スニーカーを履く(はく)
 ドアを空けた。