独りぼっち、上等!
就活をしなかった私は短大を卒業して翌日からバイトに行った。
企業名は敢えて書かないが、とても品のない会社だった。
そこの社長さんはおじいちゃんで、見た目にも紳士的で素敵な
とても品のいい人だったので、大丈夫かなと思ったのだが
今までに見たこともないような下品な人種の人を
ものすごい沢山の数、見てしまったショックで2日で辞めた。
*
さて、これは困った。
やりたいことがあったから、就活をしなかったけど
働かなきゃ食べていけない、生きていけないと
慌てて次のバイト先を探した。
営業のような仕事は辞めておこうかな
(先の品のない会社の内容が営業だったので)と思って、
なかなか数少ない「軽作業」と書かれた求人広告に目を付けた。
この会社の面接の日、まずまずの熱が出てしまった。
ちょっとふらつきもあった。
が、絶対にこのバイトで決めてやる、、、そう思って面接に行った。
面接は沢山の人が来ていた。
その当時、流行りはじめの天然石のアクセサリーを作る仕事で
大きなテーブルに40人くらい一度に集められて、
皆、手に「やっとこ」を渡され、手の器用さをテストされた。
(社長自らの実技面接)
まずまず器用な私はするするっと作業をこなした。
熱で変な勢いもついていたのだと思う。ガンガンに作ってみせた。
「GWに軽井沢に期間限定のお店を出店する立ち上げに参加できる人」
と聞かれ、迷わずに手を上げた。
完全に『やる気のかたまり』のようだったと思う。
私が選ばれない理由がない。ちょっと引くくらいの勢いだった。
結局翌日もその面接は同じくらいの人数が集められ、
ほぼ日勤で採用されたのは私を含めてたったの3人。
男2人、女1人(私)という狭き門だった。
熱が出ていたけれど、行ってよかった。
*
その会社は今ではとても大きな会社になっているけれど
当時はまだそんな大きくなくて、
今は会長になっている社長もとても身近な存在だった。
アグレッシブでとにかく頭が常に回っている人で、宇宙人のような人だったけど、「ちゃんと話せば伝わる人」という印象で、私は好きだった。
最初は地下で多くの人たちと軽作業をする、というよりは
社長や他の社員の人と同じ1階で仕事をしていた。
バイトはほとんどが主婦や女子学生で
(主に納品する天然石を集めたり、パーツを揃えたりするといった内容)、男性は社員が2人と、バイト2人、そして社長の5人という構成だった。
*
GWの立ち上げには男性社員と社長、バイトの男の子(今の相方)と
女性社員2人と私が参加した。
最初の1ヶ月の期間とGWの軽井沢でのお店を立ち上げた期間というのは、
とても充実していたし、社長にとっても勢いのつく内容だったので、
これに参加した私は社長ともざっくばらんに話せるようになっていたし、
また男性社員やバイトの男の子ともすっかり打ち解けていた。
そりゃ、そうだろう。
だって10日程、毎日泊まりでやって、大成功だったんだもの。
私が忘れられないのはお店の最終日、売上が今までの最高を達成し、
報告を受けた社長が喜んで「よし!今からそっちに行って飲むぞー!」と
夜遅くに駆けつけたこと。
こんな風に自由で大らかで真っ直ぐに自分を出す社長は裏表がなく、
私とはとても相性が良かった。
*
が、それも終わり、いよいよ地下の作業場で作業します、、、
という初日から、嫌な空気が流れていた。
入れ替わりもあるが、ほぼ約30人位いるバイトの女性たちから
「嫌われている」のか?私…という状態。
え?なんですかね、この雰囲気。
初日のお昼時間。1人で食べるのもなぁ~と思ったので、
恐る恐る感じの一番良さそうな主婦グループに声を掛けた。
「一緒にお昼、いいですか?」と。
なんと返事をもらったのかも、定かではない。
そのくらい、全く会話に入れてもらえなかったし、
声をかけてもらえなかった。ただそこにいるだけ。
なんだこれ?と思いながらもその時間をやり過ごした。
・・・
あっそ!くそったれ!
と思って、翌日からは1人でご飯を食べることにした。
そのフロアには経理やデザイナーなどの社員さんもいたのだが、
その人達(10人程度)も誰一人として私に声を掛けてこなかった。
いい年こいた大人が(私は当時19才)、
こんな小娘1人に総スカンでくだらねえなぁーと腹も立ったが、
私も意地になっていたので、仕事以外では一切口をきくことはなかった。
理由は全く分からなかった。
ただ気が利かない不親切な奴らなのかと思っていた。
事なかれ主義のくそったれ共め。
お陰で仕事の際にも言いたいことは全部言い切った。
特別媚びへつらう必要もなかったし、
仲良しこよしの馴れ合いも必要なかった。
挨拶くらいは普通にするが、それ以外の会話は一切なかった。
独りぼっち、上等だぜ!そのくらいに思っていた。
ただ同じフロアでお昼を食べるのが苦痛だったので
近くの公園で食べたり、そこにも人がいるときには遠くの公園まで
出向いていって、やっぱり1人でご飯を食べた。
遠くの公園が本当に遠すぎて、行って帰ってくるだけでお昼の時間が終わってしまう日もあった。こういう日は心の底から疲れた。
男性社員は私を見かけるたびに「〇〇ちゃん!」と声を掛けてくれたし、
バイトの男の子たちとも普通に話した。
必然的に仲良くなって時々お昼に誘ってくれることもあった。
が、それは日常ではない。
たまに来る女性アルバイトの人以外は殆ど話すことはなかった。
女ってめんどくせーな。毎日そう思っていた。
*
そんなある日、社員のデザイナーが私に声を掛けてきた。
「一緒にお昼に行こう」と。
は?今更?
かなり時が経っていた。
正直、全然行く気もなかった。
「なぜですか?」と私は冷たく聞きかえした。何を今更と。
「私、前から〇〇さんと友達になりたいと思っていたんだよねー」と。
・・・ふーん。
ま、別にいいですけど。
好意を持って話し続けてくれる人を拒絶するほどの理由も、
くそったれの私でもないので、普通に接するようになった。
そんな感じで、ちょっとだけ仲良くなった女性が1人だけいた。
その後、仕事の内容にすったもんだあって、社長に直談判して
それを聞いてもらって、私は少し社長には認められて、
私が内職のバイトさん(主におばちゃん達)をまとめることになった。
このおばちゃん達が唯一の「私の味方の女性たち」になった。
ただ、社員のデザイナーとたまにお昼に行くこともあったけど
やはり基本、私のひとり飯は続いた。
*
8月前にバイトを辞めようと決めて、社長に話をしたら
親睦会という名目で送別会も一緒に、、、と大人数での会食会を
開いてくれた。(初めての試みだったらしい)
その席で数人の主婦のバイトさんに言われたこと。
「〇〇さんが働いている全ての男性陣と仲良く話しているのが
気に入らなかったのよ」と。
はあー?ふざけんな。笑いながらも本音だろ?
やっぱりこいつら、本当にくだらない。最低だ。
私がどれだけきつかったか、腐った大人たちに向かって
いつも心の中で「くそったれ」と言い続けていたか。
話しかけてきたのが私の最終日で、それでこの内容とは、、、。
ぜってーこういう大人にはならないからな。
私は心に誓った。
初めての人には、1人でいる人には親切に。
それだけは集団生活の中、常に心掛けて生きてきた。
*
最初の先入観や見た目などで、その人を判断して、
試すようなことをする人がいる。敵対心とか、なんなんでしょうね?
全く訳がわからない。
同じような経験で1度、言われたことがある。
「最初、すごい能力があるって聞いていたからどんな子が来るかと思ってた、、、」とか。
え?それが最初の貴女が感じ悪かった理由ですか?みたいな。
そういうのって本当に意味がないよね。
だったら平和にいこうよって思う。
バイトでも仕事でもサークルでもなんでもそうだけど、
ちゃんと周りを見てみよう。
常に誰かと連んだ生き方をせずに「独りぼっち上等!」と思っていれば
同じような誰かを見つけてあげることだってできるし、
声を掛けることだってできる。
独りぼっちはいつだって複数形にもなれるんだから。
*
急にこんなことを思い出すってなんなんでしょうね。
ただ、いつも思うのは頑張りすぎたり、私のように意地を張ることさえ
くだらない状況もあるので、そういう時にはそこから離れましょ。
「逃げる」んじゃないんです、「離れる」んです。
きっと他にもっといい場所はあるから。
おわり
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