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OsiriXを使ったPACS導入方法を一挙無料公開

画像の閲覧には欠かせないPACSですが、皆様はPACSの運用費にいくらかけていますか?

1台数十万円のライセンス費や年間数百万円の運用費が掛かるのが当たり前だと思われるこのシステムですが、実はDICOMサーバーやビュワーは無料で使うことが出来るのはご存知でしょうか。

今回は高いライセンス費を払わなくても、自らPACSを立ち上げ運用する具体的な設定方法などをご紹介していこうと思います。

OsiriXとは何か?

無料(オープンソース)で使えるDICOMサーバーのソフトです。MacOS上にて動作します。データベースには比較的軽量な件数のデータを処理することを想定した「SQLite」と呼ばれるデータベースサーバーも内包されています。
その為、比較的件数が多くない施設を想定しています(大規模なデータを処理することを想定したORTHANCと呼ばれる無料DICOMサーバーも存在します)。

どうして無料で使えるのか

オープンソースと呼ばれる手法で開発されているから無料で使うことが出来ます。オープンソースとは世界中の開発者が無料で開発作業を行い、日々昨日をアップデートしています。開発者は、オープンソースに貢献することで自身の技術力をアピールでき、コードを公開することで、世界的に有名なIT企業などからヘッドハンティングを受けるチャンスもあります。
また、純粋にソフトの開発プロジェクトが好きで、自分の空き時間で貢献したい!という気持ちでオープンソースコミュニティーに貢献している開発者もいます。

DICOMサーバー仕組みを簡単に解説

OsiriXに代表されるDICOMサーバーは上記の図のような仕組みでMRI、CTなどから送信されてきたDICOMデータを受信し、各DICOMビュワーから閲覧可能にする仕組みです。
DICOMデータは世界共通の規格であり、その実態はJPEGデータの拡張データとなっています(画像データにメタデータとして、患者名や部位名などがDICOMデータを取り扱うソフトによって記述できるようになっている)。世界共通の規格であるため、DICOMデータを取り扱うソフトウェアは有料から無料のものまで様々なパターンが存在します。
各モダリティから送信されたデータを閲覧したり、3Dにするだけの用途であれば、高いライセンス料が掛かるWindows系のソフトなどを導入しなくとも、無料のソフトでも十分使用可能です。

安価なMacminiで十分動作可能

比較的安価なMacminiで十分動作します。常に電源を入れた状態で稼働させるため、メモリは多めの16GB、SSDのモデルにしておきましょう(HDDですと処理が重たいです)。また、DICOMデータの枚数が多くなりそうであれば、外付けのNASを同時に導入してください。大規模な病院だと以下のようなNASがおすすめです。

PROMISE Pegasusシリーズ
※必要な容量別に適切なNASを選んでください。PegasusシリーズはMacと相性が良く、RAID5という対障害性・速度性に優れています。

OsiriXの簡単な設定例

OsiriXは優れたソフトウェアですが、インターネットを検索してもその設定方法やノウハウ記事が殆どと言っていいほど引っかかりません。その為、独自に設置しよとしても、どうしても躓いてしまう事があります。ここからは基本的な設定方法を解説していきます。

DICOMデータの保存場所を設定する

※基本的に日々運用をしていると大容量なデータになりますので、保存場所を決める際はご注意ください。

OsiriXの設定画面を出しますと、上記のような画面が出てきますので、一覧の中にある「データベース」を選択してください。下記の画面に移ります。


デフォルトでは、Macの中の「書類」に「OsiriX Data.nosync」というフォルダが作成されてしまいます。このOsiriX Data.nosyncというフォルダの中には、DICOMデータや、データベース(SQLITE)等、OsiriXが動作するのに必要なファイルが多数保存されています。

Mac自体の中に保存したくない場合は、赤ラインが引いてある「選択」ボタンを押下してください。データの保存場所を変更することが出来ます。特に多数のデータを取り扱う事が早期から想定される場合は、外部のNASなどを保存場所として選択すると良いでしょう。

基本的に通信に必要なものはIPアドレス、ポート番号、AEタイトルだけ

MRIやCTなどのモダリティと、DICOMサーバーをつなぐ方法は、「IPアドレス」「ポート番号」「AEタイトル」のみです。基本的にはこの3つの情報を使って識別され、DICOMデータのやり取りをされています。

サーバーにもこれらの情報は付与されていますが、MRIやCTなどの各種モダリティにも同じくこれらの情報は付与されています。送信元から送信先に対し、これら3つのIPアドレス、ポート番号、AEタイトル(パソコンの識別子みたいなもの)を指定してあげる事で、データをビュワーソフトに送信したり受信したりすることが出来るのです。


先程のOsiriXの環境設定から「リスナー」をクリックすることで上記の画面が表示されますが、この画面で自身のAEタイトル、IPアドレス、ポート番号を設定することができます。IPアドレスは、Macの設定で、IPアドレスを固定し、固定したIPアドレスをこちらの画面に書いてください。

IPアドレスの固定化

Macの設定画面で、ネットワーク設定→詳細ボタンを押下します。


TCP/IPタブをクリック→DHCPサーバーを使用(これだとIPアドレスが自動的に変更されてしまうので、固定化します)のセレクトボックスをクリック


「手入力」を選択し、IPv4アドレスを固定化したいIPアドレスへ変更します。(大抵の環境は、192.168.XXX.YYYになります。Xの箇所は自分の環境に合わせて設定し、Yの箇所は任意の番号を指定します)

AEタイトルの設定

AEタイトルはお好きな名前を指定していただいて構いません(大体はPC名にしているケースが多いようです)。あとから見て、どのパソコンか分かりやすい名前にしておくと良いでしょう。

ポート番号の設定

ポート番号は、Macでファイヤーウォール設定を行っていなけれ特に気にする必要はありません。デフォルトだと、104番を使います。
※この番号以外でも使っていないポート番号であればどれでも構いません。
TCPやUDPにおけるポート番号の一覧

これらの設定は、モダリティの方に指定された設定情報を設定してください

MRIやCTを院内で使われている場合は、モダリティの設定を触れる権限を持った人は、モダリティのサービスマンしかおりませんので、モダリティに設定してもらった送信先のIPアドレス、ポート番号、AEタイトルを控えておき、これらの情報を先程の設定画面に設定してください。

日々のバックアップは忘れないようにする

基本的にDICOMデータは、送信されたPCの中にしか存在しません。その為、万一保存先のPCが故障したり、NASが故障した場合、全てのデータが失われてしまいます。

特に、ハードディスクドライブは、磁気(+極と-極)で情報を記録している為、MRIの強力な磁気には弱いです。なるべく距離を取れる場所に設置してください。

万一に備え、別PCやクラウドサーバー(当然外部からはアクセス出来ないようにしてください)にバックアップを作っておいてください。NASだけでは物理的な破損に対応できない可能性があります。OwnCloud等、クローズドのオンラインストレージを用いてバックアップを行ったりしているケースもあります。

ネットワークを外部と完全に切り離し、インターネットからは遮断する

PACSはクローズドネットワークで運用される想定のシステムです。その為、これらの機器を接続させるネットワークは、完全に外部(インターネット)と切り離してください。また、外部から持ち込まれたUSBメモリー等を不用意に刺さないこと。実行しないことが大切です。外部から持ち込まれたウイルスによって、システムを破壊されてしまう可能性があります。
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情報セキュリティ対策は万全に

クローズド前提で運用されるPACSは、外部からの攻撃に非常に脆弱です(外部とネットワークを完全遮断することで安全性を担保しているから)。その為、一度入られた後は脆弱です。

特にMRIやCTをコントロールしているワークステーション(PC)は、Windows上で動作しており、長いことWindowsのアップデートを行わない為、過去バージョンですでに既知となっているセキュリティホールがそのまま放置されています。基本的にワークステーションのOSはアップデートしないことが前提になっていますので、外部からクローズドのネットワークにしておく必要があるのです。

1台でもPACSにつながっているPCが、インターネットに接続されていたり、外部から持ち込まれたウイルス入りUSBメモリーが接続されている運用になっていないか、常にチェックと従業員に対する周知徹底が必要です。

よくある質問

基本DICOMデータは見るだけですが、大きなサーバーを入れなければいけませんか?

閲覧だけであれば、Horosと呼ばれる無料のDICOMビュワーがあります。基本受け取るだけで、大きなデータの保存を必要としなければ、PC1台で十分利用することが出来ます。

DICOMデータの受渡(主に他病院や患者)はオンラインで出来ますか?

OsiriXから直接メールで送信する事が可能です。しかしながら、オンライン環境を経由しますので、宛先間違い等は十分に注意してください。

DICOMデータの件数が多く、動作が遅いです。早くなるように改善出来ませんか?

OsiriXはSQLITEと呼ばれる小規模想定のデータベースを使っています。数万件のデータの取り扱いになると、検索速度や表示速度が低下します。

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