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【弁護士語り】法学部で得られる「リーガルマインド」とは?

昔、家族で「行列のできる法律相談所」を見ている時
弁護士って六法全書の内容全部覚えてるん?
って父親に聞きました。

父親「そうやで」小学生の私はそれを信じたまま、よくわからず法学部へ。
・・・結論、嘘です笑

実際は法学は丸暗記するほど単純なものじゃありません。

では法学部は何をする場所でしょうか?
それは「リーガルマインドを身につける場所」です。

今回はその「リーガルマインドとは何ぞや!」を詳しく説明します!

1 リーガルマインドとは要するにこういうこと

まずはいつも通り結論から。
リーガルマインドとは「法的思考力」です。
それじゃ説明になってないですね。

リーガルマインドとは、
「ルールに従ってバランス感覚を持ちつつ妥当な結論を導くスキル」
です

例を挙げてみましょう。

いじめっ子田中さんはいつも鈴木さんに辛く当たります。
「お前なんか存在する価値がない」
「どっか行けよ」
とある日、田中さんは鈴木さんをからかってヘッドロックしました。
積もり積もった鈴木さんは怒り爆発。
田中さんを振り払うにとどまらず、
ボコボコにして骨折などの重傷を負わせてしまいました。

田中さんはどんな法的責任を負うでしょうか?

感覚的に「田中さんだけじゃなく鈴木さんも悪い」と感じたのではないでしょうか。
一方で、「そんなことはない!いくら何でもケガをさせた方が悪い!」
と考える人もいるかもしれません。

こういう問題が発生したとき
「1つの合理的な答え」に至るスキルがリーガルマインドです。

この世(日本)に法律が存在せず、道徳だけで良し悪しが判断される社会だとすると、上の例の答えはバラバラになりますよね。
鈴木さん擁護派
鈴木さん反対派
どちらも道徳観としてはあり得ると思います。

でもそれでは社会の統率がとれないので、法律がある。
その法律に従って考えるスキルが「リーガルマインド」です。

つまり、リーガルマインドを身につけた人、
例えば弁護士や裁判官、検察官は、上の例では大体同じ結論に至ります。
※法解釈の問題がある場合は除く。これはまた別でお話しますね。

なぜ同じ答えに至るのかというと、理由・要素が2つあります。
1つは、法律に基づきロジカルに考えるから(論理的思考)。
もう1つは、結論の妥当性に関する感覚が近いから(利益調整のバランス感覚)。

これらを身につけること=リーガルマインドの体得です。

2 第一の要素:論理的思考力(ロジカルシンキング)

論理的思考というと難しそうに聞こえますが、
法学における論理的思考はとてもシンプルです。

①「〜という場合は××ということにする」というルールを把握する
②今目の前にある状況が「〜という場合」にあたるか検討する

なんとたったこれだけです。
これも例があるとわかりやすいですかね。

ワールドカップの時だけサッカーを見る私ですが、
サッカーでは「オフサイド」というルールがありますよね。

知らない方のために超ざっくりいうと
相手の選手より相手のゴールに近い位置にいる見方選手にパスを出したらダメ」なルールがオフサイドです。
(厳密にはもっと細かい決まりや他のケースもありますが)

このルールを把握することが

①「〜という場合は××ということにする」というルールを把握する

ということです。

では、日本戦を見ていたあなた。
日本の◯◯選手が△△選手にパスを出したが
△△選手は、相手チームのどの選手よりも相手ゴールに近かった、
という状況を目撃したとします。

このとき、あなたは「あ、オフサイドだ」と思うでしょう。
この思考が

②とある状況が「〜という場合」にあたるか検討する

ということです。

あまりに当たり前ですよね。
もう少しお付き合いください。

オフサイドは
ルールもわかりやすいし、
目的した状況がそのルールが適用されるケースなのかが一目瞭然なので
無意識的に判断できるぐらい簡単なんです。

一方で法学の場合は、①も②も複雑です。
①については、ルール自体が複雑怪奇。
②については、どんな状況なのかがわからない。
だから判断が難しい。
法学部ではこういったロジカルシンキングの訓練をするんです。

ちょっとはイメージ沸きました?笑

3 第二の要素:利益調整するバランス感覚

オフサイドはどんな場面でもオフサイドです。
でもピッチを出た社会の場では、
ルールをそのまま当てはめたら妥当な結論にならない場合もあるでしょう。

先に挙げた田中さんと鈴木さんのケースもその1つ。
「鈴木さんが100%悪い」とするのは、
どこか座りが悪い感覚がありますよね。

それこそが「利益調整するバランス感覚」です。

社会通念というか、常識というか、一般人の感覚というか、
このあたりの感覚はとても大切で、
法律もそういった利益調整をして、一部これもルール化されています。

刑法の話でいうと、鈴木さんは「正当防衛」にあたる可能性があります。
単にボコボコにしたケースと異なり、先に手を出したのは田中さんということで、一種の利益調整がされる可能性があるということです。

また、ヘッドロックされたことに対し、骨折させるのはやりすぎじゃない?
こう考えるのが「過剰防衛」という考え方です。

法律でルール化された場合はわかりやすいのですが、
なんとなく「座りが悪い」という時に、より利益調整するバランス感覚が重要です。

この感覚ってたくさんのケースを見ないと、
そしてまずは①法律のルールを知らないとなかなかわからないんですよね。

じゃあどこで身につけるか?
そう、それが法学部です。

4 まとめ

法学部って何を学ぶところ?という問いについて、
「リーガルマインドを身につけるところ」という答えを説明しました。

そしてリーガルマインドとは、
論理的思考+利益調整するバランス感覚のこと。

法学部でこの考え方をスキルとして身につけると、
弁護士にならなくたって、
人と人のトラブルを解消したり
なにか組織の問題を解決したり
いろんな場面で役に立ちます。

ルールに従って冷静に。
でも人情ある利益調整で情熱的に。

こんなリーガルマインドが欲しければ法学部へ。
今回は以上です。


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