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スペイン流育成① 体の向き

スペイン流≠ティキタカ

「スペイン流」という言葉からは、まず第一にバルサの「ティキタカ」が想起される方が多いと思います。しかし、グラウディオラ監督がティキタカを肯定しない様に、スペイン流の育成とはティキタカを磨くための育成法ではありません。
スペイン流の指導は、ティキタカの美学に陶酔するようなものではなく、実際は合理的な思考の下で体系だって構成された論理性の高いサッカーを目指した育成手法なのです。

ロティーナの「体の向き」

私がスペインの指導法に興味を持ったのは、清水エスパルスのロティーナ体制が失敗に終わったことです。

そしてシーズン始動とともに、ロティーナ・サッカーへの構築が始まった。公開された練習で見えてきたのは、緻密な戦術に向けたトレーニングだった。攻撃や守備の場面での立ち位置やタイミング、さらに体の向きなども含め通訳を介した指揮官からの細かな部分の指摘には、選手たちも当初戸惑いを見せていた。

スポルティーバ「清水エスパルスがJ1残留争いを演じたのはなぜか。残り4節で示した来季への可能性と権田修一が最終節に語ったことは?」

ロティーナのチームの選手たちが時折口にする「体の向き」「ポジション」というのが何なのか気になっていました。

DV7アレックスコーチによる「体の向き」

長年この「体の向き」の答えにたどり着けなかったののですが、ダビドビジャのスクールのアレックスコーチが初めて私にこの答えを示してくれました。

ボールが来る方向とパスを出す方向が見える体の向き

まず、大原則として人間の視野角を非常に大切にします。だいたい視野角の幅は感覚的ですご100度〜120度ぐらいだと思います。その範囲にボールが来る方向とパスを出す方向が収まる形で、向かい合った味方の中央のポジションを取ります。

ボールが来る方向とボールを出す相手が見える様に体の向きを調整する。

ポイントとしては、

  • ボールが来る方向とパスを出す方向が見える様に体の位置を調整

  • 向かい合った味方の中央あたりのポジションに立つ

  • パスが来る遠いサイドの足でトラップ

  • パスは必ずトラップした逆の足で蹴る

  • トラップした後すぐにパスを出すために踏み込む

でプレースピードを向上させるためにこのことを守る、常にボールの来る方向と出す方向を見ておくことで相手に奪われるリスクを最大限に抑えたプレーを実現することができます。

この体の向きについては、「ダビドビジャのサッカー講座11」に詳しく解説されています。非常にシンプルな内容の本ですがスペイン流サッカーの最も重要なポイントが凝縮されている良本です。

井上潮音とイヴァンコーチ

一部で有名な井上詩音とイヴァンコーチのやり取りもこの「体の向き」に関するやり取りです。日本では割と180度ターンを選手に求めたり、トレーニングする事が多いように思いますが、後ろから迫る相手が見えなくなる180度ターンではなく、相手を常に視野に収めておく体の向きを重視しています。

ポジショナルプレーのベースとなる体の向き

この話はダビドビジャやロティーナに関する話だけではなく、ペップ・グラウディオラもバルセロナから離れ、バイエルンの監督に就任した際も、初期段階でトレーニングとしてこの体の向きに関する練習を行ったことから明らかです。

このセッションでは、2人の選手に頻繁に指示が飛ぶ。最初はトニークロース。コンスタントに流れるようにパスを循環させるため身体の向きをアドバイスを受ける。次を考えてパスを出すことで、常に自分より前にいるチームメイトたちに時間を与えることができる。選手時代のペップにとっては自明の理であり基本だった。バイエルンサッカーの未来の指導者たりえるクロースのために、多くの時間を費やした。

「ペップ・グラウディオラ キミにすべてを語ろう」

「ポジショナルプレー」と呼ばれるベップのサッカーにおける相手を混乱させるために行う「事前の15本のパス」も、体の向きを適切にとったプレースピードの速いパスであることが何よりも重要なのです。

次回はこの体の向きに関する話を前提に「なぜ偽サイドバックが生まれたのか?」というポジショナルプレーに関する話をしていきたいと思います。

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