前回は体の向きに関する話つまり1人のプレーヤーに焦点を当てた話をしましたが、それがグループ戦術からフォーメーションへとどの様に繋がっているのかを見ていきたいと思います。
ダイヤモンドのフォーメーシ
まずベースとして体の向きの考え方を延長して、基本的にひし形の関係を取ります。これは、フットサルの1-2-1のダイヤモンド型のフォーメーションと同じです。
それぞれのプレイヤーに求められる体の向きは同じです。サイドの2人はボールを持っているひし形の底の選手の方に正対するのではなく、それぞれにタッチラインに背を向け、サイドにいても体の向きを取れるようにします。
ひし形の頂点の選手はボールの位置によって右を向いたり、左を向きますが、可能な限りひし形の底の選手には正対しないようにします。
よく「三角形の形を作れ!」とコーチングする指導者がいますが、サイドの2人がボールを持った時に出せる先がないことを考えるとひし形のフォーメーションの合理性を強く感じます。
同じレーンの選手にパスを出さない
スペイン流では自分をマークしている相手を常に見る体の向きを取る必要があります。
そのためパスの出し手に正対することは避けられます。正対するとボールを受ける選手は受けた後にボールを進める方向からチェックに来る相手を見ることが出来ません。
日本では180度ターンで華麗に前を向くプレーを評価し、指導者もこれを鍛えるトレーニングを良しとしている様に思いますが、スペインでは相手が見えていないトラップとターンでリスクの高いプレーとして扱われるようです。
その結果、ひし形の縦に頂点を結ぶパスは出さず「同じレーンの選手にパスを出さない」「パスを入れる時は常にななめ」というルールが生まれているように思います。
この点については、G大阪OBの橋本英郎と岩尾憲が、ロティーナ、リカルド・ロドリゲス、リュイスといったスペイン人指導者が拘ったポイントとして紹介しています。
5レーンとフォーメーション
ペップ・グラウディオラのポジショナルプレーが世界を制していく過程の中で広まった「5レーン」という考え方。
ピッチを5つのレーンに分割し、そのレーンごとに選手が正しいポジションを取る考え方は、体の向き、ダイヤモンドの陣形の延長線上に生まれた戦術と考えます。
例として示すのは8人制のフォーメーションだけですが、
体の向きとダイヤモンドの形が基本
1列前の選手が同じレーンに並ぶことを禁止
1列前の選手は隣のレーンに位置する
を基本にしたフォーメーションが実現可能であることが確認できます。
「ペップ・グラウディオラ キミにすべてを語ろう」マルティ パラルナウ著
これまで触れてきた「5レーン」をはじめとするグラウディオラの考えは、バイエルン時代のグラウディオラを取材した「ペップ・グラウディオラ キミにすべてを語ろう」を参考にしています。
すでに絶版になり、またページ数も多く読むことが大変な一冊ですが、バイアスの掛った誤った解釈ではない本当のグラウディオラの理論に触れるためにも是非手に取っていただきたいです。
参考までに本書の5レーン、偽サイドバックに関する箇所を抜き出して紹介します。
本当は「ハーフスペース」「ライン間」「偽サイドバック」についても触れたかったのですが難しかったです。そちらはたくさんの解説があるのでそちらをご覧いただけたらと思います。