スマートホーム~未知のジャンルのUXを開拓する~

 無数にあるIoTの現場の中でも、ホームIoTは、重要度の高い現場の一つと言えそうです。ホームIoTは、ユーザーの日常生活との接点になるからです。『日常生活』と関わっているということは――

(1)より広範なサービスプラットフォームとの連携・・・・・・ユーザーにとって、IoTデバイスを家庭内に設置して多様な制御をするホームIoTの機能は、家庭内の日常生活の一部分を担うものですから、日常生活のそれ以外の部分(例えば買物、予約)に関わる、より広範なサービスのプラットフォーム、AIスピーカーなどとストレスレスかつシームレスに連携できる必要がありそうです。ホームIoTとサービスプラットフォームを別々のUI(ユーザーインターフェース)で扱わなくてはならないとしたら、それだけでストレスです。(2)ホームIoTのUX(ユーザーエクスペリエンス)・・・・・・ユーザーにとって、一口に家庭内での日常生活と言っても、健康、睡眠、癒し、くつろぎなど範囲は非常に広く、一体ホームIoTで何ができるのか、どんなUXが得られるのか、今までにない未知のジャンルの商品ですから、今のままの日常で特に不満を感じてないユーザーに必要性を納得してもらうには、特段の努力が必要そうです。

――やはり、『日常生活』という視点で捉えても、ホームIoTがイノベーションカーブのキャズムを越えるには、(1)先行しているAIスピーカーと連携し、(2)UXを徹底的に追求する必要がありそうです。

それでは、スマートホームという未知のジャンルのUXを開拓するには、どうしたらいいのか――

【1】キラーコンテンツ

一つ考えられることは、スマートホームという未知のジャンルが普及へと飛躍するには、圧倒的な魅力を持ったサービス、キラーコンテンツを何としても発見する必要がある、という事です。それなくしては、ユーザーにスマートホームの必要性を納得してもらうことは、難しい作業になるかも知れません。全く新しい、あっと驚く様なサービス、その為だけにでもユーザーがスマートホームの導入を決断するようなサービスがないか、パートナー企業とのオープンイノベーション、ダイバーシティな開発体制など、『尖ったアイデア』が生まれてくるような環境が必要です。

【2】ユーザーコミュニティー

スマートホームのユーザー同士が情報交換できる交流サイト、ユーザーコミュニティーのようなものがあれば、企業にとって、ユーザーの生の声を聞ける数少ない貴重な場となります。『尖ったアイデア』の種は、実際に毎日スマートホームの中で暮らしているユーザーに密着した、『現場』に転がっている可能性があります。

【3】ユーチューバー

スマートホームのような新しいジャンル、未知のジャンルのUXをプロモーションするのに、ユーチューバーはまさにうってつけの存在ではないでしょうか。ユーチューバーがスマートホーム化した自宅から動画を配信するというのは、ユーチューバーとスマートホームは、きわめて親和性が高そうです。しかも、その動画は、単なるプロモーションで終わらず、新しいUXの気付きの場にもなりそうです。生配信で視聴者とのリアルタイムの交流を行えば、さらに斬新なアイデアが飛び出してくるかも知れません。

【4】見える化

IoTと言えば、やはり、今まで見えなかったモノを、最先端のセンシング技術でストレスレスに見える化、数値化することではないでしょうか。家の中で見えなかったモノと言えば、光熱費、健康……エネルギーやヘルスケアの分野のサービスにチャンスがあるかも知れません。

――未知のジャンルのUXを開拓する時、具体的なアイデア、サービスをすぐに思い付くことは難しくとも、ことIoTに関わるジャンルは、第4次産業革命のコアをなす部分であり、簡単に考えるのを止めていい、チャレンジを諦めていいジャンルではないと思います。変革していくモノが持っている『価値』が理解できずに、気付いたら世界の潮流から取り残されていた、ガラパゴス化していたということは避けたい事態です。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33144970Z10C18A7000000/

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