スモールマスと人手不足の間で揺れる飲食チェーン
日経電子版の記事【メニュー減らし人手不足克服 オリジン弁当は3割減
リンガーハット20種廃止】は、深刻な人手不足を克服すべく、メニューの絞り込みで効率化を図る飲食チェーンにフォーカスしたリポートです。はたして、メニュー数の削減という選択は正しい施策なのでしょうか?
そもそも、ユーザーにとって、飲食チェーンのメリットとは何でしょうか?――
▶飲食チェーンを使うメリット
① 近い・速い・安いといった利便性。
② オリジナルメニューの魅力。
③ 豊富なメニュー。
――メニューの豊富さは、間違いなく飲食チェーンを利用するメリットの一つである、と思われます。その部分にメスを入れることで、飲食店、そしてユーザーには、新たにどのようなメリットが生じるのでしょうか――
▶メニュー数削減のメリット
(1)飲食チェーンにとっては……
① アルバイト・外国人従業員でも働きやすい作業になる。
② 客の回転率が向上。
③ 作り置きの余裕。
④ スケールメリットを出しやすい。
(2)ユーザーにとっては……
① 待ち時間が短くなる。
② ?……
確かに飲食チェーンにとってはメリットがありそうですが、ユーザーにとってメニュー数の減るメリットというのは探すのが非常に難しい……。待ち時間が短くなる、と言っても、今でも十分短いような気もするし、席に着いて間髪おかずに注文したメニューが届くよりも、むしろ、ちょっと一息ついた頃に届く方が良いような気もします……。
要は、いくら飲食チェーンの側にメリットがあっても、ユーザーの方にメリットがなければ、本末転倒で顧客離れに繋がる恐れすらありそうです。そこで、メニュー削減のデメリットを考えてみると――
▶メニュー削減のデメリット
(1)『飽きる』・・・ユーザーにとって、メニュー数が少ないという事は、
飽きるのも早いという事。
(2)『リピート率』・・・メニューを削減する際に、何を基準にするのか?
単純に注文率だけから決めるのはリスクが大きすぎる。
注文率が低くても、ID-POSデータの解析によって、特定
の顧客が高頻度で注文していたり、他のメニューと
セットで注文されているようなリピート率の高い
メニューまでカットしてしまうと、その顧客を失うこと
になる。
(3)『スモールマス』・・・コト消費の時代は体験の重視される時代で
あり、体験とはその性質上、人の数だけ多様性がある。
今の時代は、本質的にメニューの多様性が求められ、
様々な傾向・ジャンルのメニューがスモールマスな市場
を形成している。安易にメニューを『削り込む』のでは
なく、ブレないコンセプトで『絞り込む』コトが大切
ではなかろうか。
基本的にスモールマスになりつつある市場は、万人受けのする飲食チェーンのような業態には不利な環境であり、飲食店の生命線とも言えるメニューを効率ドリブンな発想で決定することは、極めてリスクが大きいのかも知れません。
どんな業界であっても、手間をかけるという作業は、顧客に寄り添う第一歩なのであって、効率に気を配りつつも、提供するメニューには最大限の配慮をする必要がありそうです。
▶スモールマスと人手不足を乗り切るには……
(1)『週替わり・月替わりメニュー』・・・メニューの減少を、魅力的
で話題性のある週替わり・月替わりメニューでカバー
する。
(2)『多業態化』・・・全国一律のチェーン制を排し、いくつかの
有望なスモールマスにフォーカスした業態に分割する。
など
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