AIを始める前にやるべき事~会社の組織はイノベーションのエコシステムになっているか?~
日経電子版の記事【AIを加速させる組織 WAVE)米エヌビディア日本代表 大崎 真孝氏】は、第4次産業革命の時代のアクセラレータであるAIを導入するためには、それ以前にやっておくべきことがある、という事を改めて認識させてくれます。
そもそも、会社がプロダクト(モノ・サービス)イノベーションを達成し、また、継続的にイノベーションを起こし続けられるようなプロセスイノベーションを達成するには、会社が、イノベーションを起こせるような組織=イノベーションのエコシステムになっている必要があります。この記事は、そのようなイノベーションのエコシステムは、会社としての『意思が統一』され、その『行動がスピーディー』である必要がある事を教えてくれているように思います。
そして、この『意思の統一』と『行動のスピード』を担保する仕組みとして取り上げられているのが、『情報共有』と『統一された技術アーキテクチャー』です。
まず、所属部門に関わらず全社員が業務上の体験(成功・失敗・課題など)を週報として発信し、全社員でその情報を共有する事で、ミッションが見える化して⇨意思が統一⇨行動がスピードアップする。
『情報共有』によって、情報が組織を横断して流動化することで、イノベーションを起こすミッションが活性化するのです。
そして、所属部門・チーム・プロジェクトに関わらず『統一された技術アーキテクチャー』を使う事で、全社員が誰でも特定のミッションにアドバイス・関与・結集できるようになり⇨意思が統一⇨行動がスピードアップする。
『統一された技術アーキテクチャー』によって、人的リソースが組織を横断して流動化することで、イノベーションを起こすミッションが活性化するのです。
AIを導入してDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現・加速させるには、その前提として、上記のような『組織を横断した情報と人の流動化と交流』が機能しているイノベーションのエコシステムが構築されている必要がありそうです。
イノベーションのエコシステムが存在しない旧態依然とした『縦割り組織』の中にAIを持ち込んでも、特定の部署・製品に特化したAIが『タコつぼ』状態に乱立するのがおちです。本来なら組織横断的な、あらゆる製品群を横串にできるAIの『プラットフォーム』が望ましいのに、無駄な経費をかけ、しかも、統一的に機能せず、限られた情報のみで稼働する使えないAIが残った、という事態になりかねません。
また、旧態依然とした煩瑣な決裁プロセスがスローペースで仕事を進め、時として革新的なアイデアが摘み取られてしまうような環境にAIを持ち込んでも、とてものことにビッグデータの解析から導き出された斬新な予測を業務に生かす事など出来ないに違いありません……