『働き方』の方程式~イノベーションを生む職場~

 今、「働き方探検隊」の記事を読むのが、毎回楽しみです。登場する企業のユニークで考え抜かれた働き方の仕組みが、多くの気付きを与えてくれます。そんな中、最近考えるようになったのが、『働き方』という名のシステムの、個人や企業に与えるファクターとしての影響度の大きさです。

『働き方』のシステムは、単なる言葉の上の概念ではなく、実際にビジネスパーソンの仕事に対する満足度や、企業業績に大きく影響するファクターだということです。『働き方』のシステムを数値化して定量的に表す方法は今のところないと思いますが、少なくとも定性的には大きな要因であって、前回の「働き方探検隊」の記事【仕事はゲレンデで、リラックスが人呼ぶ】を考えた時には、次のような方程式を作ってみました。

▶(✖)ビジネスパーソンの仕事満足度=仕事の内容+給料+働き方+充実したオフを送れるか

今回の記事【ノー残業でも連続増収、仕事を見える化】を読んでいて感じたのは、これでもまだ足りない、『働き方』というファクターは、他の要素に対して掛け算で作用する、という事です。つまり、『働き方』を指数化できたなら、その指数は、仕事の内容にも、給料にも、充実したオフにも掛け算で影響を与える、と考えたのです。

▶(〇)ビジネスパーソンの仕事満足度=(仕事の内容+給料+充実したオフ)✖働き方指数

●(働き方指数>1)の場合⇒満足度は向上する。●(働き方指数=1)の場合⇒満足度は現状のまま。●(働き方指数<1)の場合⇒満足度は悪化する。

そして、この『働き方』を形作る構成要素は、単なる制度的なサポートだけでは駄目で、心理的なサポートも必要なことが「働き方探検隊」の記事から分かってきました。

▶『働き方』のシステム=制度的サポート+心理的サポート

●制度的サポート=出退勤時間に関するもの+出勤日+休日+出勤場所+その他自由度を高める制度        +従業員間の平等を担保する制度+自己研鑽(読書・美術館etc.)の補助        +健康増進(スポーツクラブetc.)の補助+・・・・・・●心理的サポート=ストレス解消の仕掛け+リフレッシュの仕掛け+リラックスの仕掛け        +心身の活性化の仕掛け        +スキルを発揮できるツールの支給+・・・・・・ 

『働き方』は、今や、ビジネスパーソンが自分の仕事満足度を推し量り、就職・転職を考える際の大きな要因であり、また、ビジネスパーソンが変化する環境の中でポジティブな心理状態を持続可能とするための『心理資本』に大きな影響を与えています。『心理資本』は、個人にとっては、自身の生き方、生きがいに向かって前進するため、自分の能力を最大限に発揮するために必要な心理状態であり、企業にとっては、競争力を最大化するために、どうやってそのような心理状態を引き出すかという課題なのです。

▶働き方システム⇒ビジネスパーソンの仕事満足度⇒心理資本⇒生産性向上⇒競争力最大化

 このように、『働き方』のシステムを、制度面・心理面から実効性のあるものに構築することは、そこで働く者と企業の双方にWin-Winの関係をもたらす、最優先課題であると考えられます。

 このような考え方は、企業活動を経済面からだけ分析・検討する手法がもはや通用せず、ポジティブ心理学や社会学的な知見も取り入れたより総合的な企業経営が求められている証ではないでしょうか。

▶企業が考慮すべき資本=財務資本+人的資本+社会資本+心理資本

●財務資本Financial Capital・・・いわゆる資本。資本主義社会における投資。●人的資本Human Capital・・・財務資本を生み出す人の能力。●社会資本Social Capital・・・人が学習し、その人を支援する場としての、社会的ネットワークにおける人間関係。人的資本を生み出す人間関係。●心理資本Psychological Capital(PsyCap)・・・変転する環境の中で、ポジティブな心理状態を持続可能とする要素。財務資本・人的資本・社会資本など、全てを生み出す源。個人にとっては、自身の生き方、生きがいに向かって前進するため、自分の能力を最大限に発揮するために必要な心理状態。企業にとっては、競争力を最大化するために、どうやってそのような心理状態を引き出すかという課題。

心理資本や社会資本は個人やその人間関係をめぐって形成されるものですが、企業には、これらの資本も含めた総合的な洞察力、そして4つの資本を最大化する実効性のある施策が求められていると思います。

従来的な考え方では、企業の持つ力(資産)は、次のような式で表されていたかも知れません。

▶(✖)企業の力=ヒト+モノ+カネ+テクノロジー+データ

しかし、この式では、企業の現在の位置・状況が棚卸されただけで、企業の持つポテンシャルがどのように開花していくかまでは分かりません。ヒト+モノ+カネ+テクノロジー+データがどのように組み合わさって、その相互作用から何が生み出されるかが分からないからです。

 企業にとって何よりも大切なことは、自身の持つ資産を組み合わせて最大の効果を出すことです。その文脈で考えると、人的資本・社会資本・心理資本とは、資産を組み合わせるための接点、接着剤の役割を果たすものなのです。そこを梃入れして、『働き方改革』を推進することの重要性はこの点にあります。

 イノベーションがカギを握る現在進行形の第4次産業革命の時代、一番大切なものは何か?私は、それはイノベーションの種となるアイデアだと思います。そのアイデアを生み出すのは、その会社で働く人です。そして、イノベーティブなアイデアを生み出し育んでいくことのできる心理状態こそ、まさに、心理資本のポジティブな心理状態を持続可能とする4要素に思えます。

▶心理資本の4要素

●自信・効力感Efficacy●楽観性Optimism●希望Hope・・・成功のイメージと、そのための具体的なプロセスのイメージ。●粘り強さ・再起力Resilience

 企業にとって、自分の会社の『働き方』システムと決裁プロセスが、イノベーションの揺籃になっているか、逆に足枷になっているか検証することは、きわめてプライオリティの高い作業と言えそうです。        

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31546630Y8A600C1X13000/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31546730Y8A600C1X13000/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31358100U8A600C1X11000/

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