IoT時代のニセモノ
この記事「ケイ・ウノ、AIが鑑定したダイヤモンド販売」では、AIによるダイヤモンドの鑑定が紹介されています。宝飾品から始まって、美術品、ブランド品、古銭・切手、果ては玩具に古着まで、ユーザーの最大関心事は自分が買おうとしているモノが本物かどうか。比較的安価なリユース品をアプリで売買するならいざ知らず、ある程度高額なモノには保証が欲しいのが人情です。記事にあるAI鑑定は、そんなユーザーに『安心』と言う名のUX(ユーザー・エクスペリエンス)を提供している素晴らしいサービスだと思います。まずは、AI鑑定とそのデジタル鑑定書の利点を列挙してみると――
① 人間の鑑定士にはある体調・経験・技術による誤差がなく、客観的である。② 気泡などの内包物を、予めデジタル鑑定書でしっかり確認できるので、購入後の返品やクレームを防げる。③ デジタル鑑定書だと、画面上で簡単に他のダイヤとの比較検討ができる。④ 3Dルーペ機能で、販売員と顧客が同時に360度回転させたダイヤの検討ができる。
顧客が高額品を購入する際に最低知りたいのは、そのモノの真贋・瑕疵・相場(価値)の3点ですから、上記のような利点は、差別化のポイントになりそうです。これらの利点を、ダイヤに限らず、一般的なAI鑑定およびデジタル鑑定書の特徴として捉え直すなら――
① AIによる客観的な基準による公正な鑑定。⇒真贋と価格について安心して購入できる。② デジタル鑑定書に明記される商品のキズ、その他。⇒予め納得の上購入できる。③ 複数のデジタル鑑定書を簡単に比較検討できる。⇒数ある中からベストチョイスをしたという満足感で購入できる。④ 3Dルーペ機能を使って、販売員と商品について十分に相談、吟味できる。⇒十分吟味したという納得感で購入できる。
私は、AI鑑定およびデジタル鑑定書の提供できるサービス、UXは、高額品の購入に欠かせない『安心』と『納得』であり、今後広く、ラグジュアリービジネス、あるいは美術品業界などの中でも、このようなシステムと親和性のある分野で拡大していくと考えます。高額品を『安心』『納得』して購入できるショップは、顧客との抜群の信頼関係を築き上げ、将来のさらなる購入へと、また顧客の友人サークルから広がる口コミでの伝播によって、盤石の顧客基盤を形成できるでしょう。
一方で、AI鑑定ソリューションのベンダーは、それぞれに個性のある高額品をどのようなセンサーでキャプチャーするのか、AIへの学習データをどのように収集するのか、顧客企業とのオープンイノベーションを通して、アプリの革新性と採算性を追求しなくてはならないと思います。また、この状況を逆手にとって、IoTチップを高額品に予め搭載して、トレーサビリティを担保するなど、IoT時代は、ニセモノにとっては肩身の狭い時代になりそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29941110X20C18A4XQH000/