かけっこ練習ノート - 仕組みから目的を理解する腕振り
5月6日(木)
練習前のドロケイには中1になった元6年生たちも参加してくれました。
ドロケイOBみたいで嬉しいですね。
このまま逃走中のハンターまでやってほしいくらいです。
今日の練習は「腕ふり」と「足の振り下ろし」の2つのテーマについて話しました。
両方ともお互いに深く関連しあっているだけでなく、全ての出発点であり、そして目的地のように思いますので、何度でもやりたいテーマです。
ここでは選んだ子の多かった「腕ふり」について書きたいと思います。
「腕振りの目的ってなにかな?」
まずはこの質問から始めました。
仕組みから目的を理解して動きを考える。
このプロセスを大切にしていきたいからです。
「体のバランスをとる!」
「足を速く動かす!」
「弾む!」
いろいろな意見が出ました。
どれも正解だと思います。
もう少し具体的にすると「腕振りは4の字を速くするため」という言い方もできると思います。
つまり、接地した足をできるだけ素早く4の字の形にする、これが腕振りの役割です。
そのためには腕振りでバランスもとらないといけないし、足の動きは速くなるし、結果として弾むわけですし。
次の質問は、
「腕振りはどの瞬間に力を入れるべきなのでしょう?」
これに対しては、腕が後ろから前に来る瞬間という意見と、前から後ろに行く瞬間という意見に分かれました。
腕振り一つとっても、このように人によって正反対の感覚を持っている。
非常に面白いし、だからこそ動きの仕組みを理解して考えることは大切だと改めて思いました。
では、仕組みから考えてみます。
「4の字」とは足を後ろから前に移動させる動作です。
そのとき、上半身で何もしないと体が水平方向に回転してしまいます(左足であれば時計周りに)。
それではまっすぐ走れませんので、バランスをとるために上半身では足の動きと逆向きの動きをしてやる必要があります。
つまり、4の字の動作をしたときは、同じ側の腕を前から後ろに移動させる必要があるのです。
これを踏まえると、先ほどの
「腕振りはどの瞬間に力を入れるべきなのでしょう?」の答えは、
「腕を前から後ろに振る瞬間」となります。
そしてさらに大切なことは、それ以外の時は腕に余計な力を極力入れない、ということです。
特に腕を後ろから前に振る時。
ここは、腕が後ろに振られた反動で自然に前に戻ってくる、でいいのです。
これは今日のもう一つのテーマである「足の振り下ろし」で説明した、足は振り下ろすときには全く力を入れる必要がなく、重力に任せて降りていけばいい、ということと連動します。
足が自然に振り下ろされるのですから、腕も自然に後ろから前に戻ればいいのです。
話が難しくなってきましたが、これが理解できると自分で色々な工夫と試行錯誤ができるようになると思います。
実は「大根切り」で腕を振ると、大根を切る瞬間、つまり前から後ろに振る瞬間に力を入れるイメージになります。
ですので、イメージ先行で話をするときには、大根切りの話をするのです。
まとめると、腕振りの目的として以下の2つの事が言えます。
- (前から後ろへの)腕振りは体が回転しないため
- (前から後ろへの)腕振りを速くすれば4の字も速くなる
この2つの目的を理解することがとても大切です。
というのも、腕ふりを頑張っている子の半数くらいは、体を腰から水平方向に回転させることで腕を振っている(つもりになっている)のです。
そうすると、体が回転してしまうし、速くも振れません。
これでは上記の2つの目的に合わない腕振りになってしまいます。
目的を理解することがここでも重要になってきます。
さらに言えば、体を回転させる腕振りでは、先ほど書いたような「後ろから前への腕振りは自然に任せて」ということができません。
捻られた体は、力を入れないと逆向きには戻らないためです。
そうすると、その力が足にも伝わり、不要な足の動きにつながってしまうのです。
そこで、腕振りのイメージを持ってもらうために”秘密兵器”を用意しました。
必要最小限の人間の関節を再現した模型ロボットです。
このロボットを使って、先ほどの体を回転させる腕ふりを再現するとこうなります。
一見腕を振っているように見えますが、腰から体を水平に回転させることで、腕が移動しているだけということがわかります。
これだと、確かに4の字に対してバランスはとれますが、重い体を動かしているため速く動けず、結果として4の字を逆に遅くしてしまいます。
つまりこの腕振りは、速さに寄与しないどころか、足をひっぱってしまっているとも言えるのです。
一方、速さに寄与する腕振りはこうです。
ここで注目したいのは、腕を振っているとき胸が全く動いていないことです。
実際にトップ選手の走りをスローで見てみると、驚くほど胸が動いておらず、腕だけが大きく動いています。
上半身の体部分が、正にロボットのように微動だにしていません。
トップ選手が肩や胸筋、背筋ががっしりしているのは、この腕振りが最後まで速く大きくできるため、と言えます。
このロボットの動きで腕振りのイメージを掴んだ上で、実際に走ってみました。
大きく改善した子もいれば、今までの癖が抜けない子もいます。
みんながすぐに改善できるとは思いません。
実際、足の速さをぱっと見て判断するときには、腕の振り方がいい指標になるくらいです。
でも、腕振りの仕組みと目的を理解して走っていれば、少しずつでもよくなっていくはずです。
大切なのは、意識しながら、こつこつと、継続的に、だと思います。
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