でもさ保育園は迎えに行こうよ!
マニラで子育てをしながら子供の放課後を考えている谷です。
タイトルの言葉、どきっとした人いませんか?
もしかしたら、カチンときた人もいるかもしれません。
このタイトル、実は放送中のNHKよるドラ『伝説のお母さん』でのセリフです。
(カチンときた人は、特にこのドラマおすすめです)
伝説のお母さん
この『伝説のお母さん』、オープニングからすごいです。
魔王が復活した世界で、かつての伝説のパーティーが再結集。
でも、そのメンバーの一人は子育て真っ最中。
待機児童の列に並べば2年待ちと言われ、区役所の担当者からは
「子育てを後回しにした人類の負けですね,大人しく滅びましょ」
と突き放される。
魔王討伐 vs 子育て という奇策
この言葉、ぐっと来ました。
「魔王討伐」と「子育て」。
一見すれば次元が全く異なる問題です。
当事者でなく、冷静で、俯瞰的に世界を見られる"コメンテーター"は、
「当然、魔王討伐を優先させるべきですね」
なんて言われると思うのです。
でも、これって現実世界の「仕事」を「魔王討伐」に置き換えた隠喩だと思うのです。
よく聞きませんか?
「お父さんのお仕事は、日本(世界)のためなんだよ。
だからとても大切なんだ。」
って。
そう考えると、区役所の担当者のセリフってすごく心に重く響くのです。
「子育てを後回しにした人類(≒日本人)の負けですね,大人しく滅びましょ」
いつかそんな日が来たらどうしよう。
そうなったら、僕ら世代のせいだな、と思います。
でもさ、保育園は迎えに行こうよ!
そして、タイトルのセリフです。
このセリフには背景があります。
伝説のパーティーのリーダーである勇者、実は彼も子育て中のパパでした。
仕事も育児も両立させようと奮闘する彼は、魔王討伐の冒険中も子供のお迎えは分担すると奥さんに約束します。
しかし、あるとき彼は戦いが激しくて(一時的に死んでいて!)お迎えに行けなかったのです。
その夜遅く、彼が泊っている宿に子どもを背負った勇者の奥さんが乗り込んできて、叫んだセリフがこれでした。
「魔王討伐はいいよ。それは立派だし必要だよ。
でもさ、保育園は迎えに行こうよ!」
その時の、歪んだ必死の顔が印象的で、心に刺さりました。
頭では、魔王討伐という仕事の大切さはわかっている。
でも、子供というリアルな生き物を前にして、やり場のない追い込まれた中で、「立派な仕事」「必要な仕事」だけではどうにもならないじゃないの!
その結果、勇者の奥さんは歪んだ顔になって、助けを求めたんだと思います。
ドラマがあぶり出している日本の現状
それが、今の日本の子育て環境なんだと思います。
「立派な仕事」「必要な仕事」の大義名分に隠されて、歪んだ顔で助けを求めている人を、見て見ぬふりをしていないだろうか。
日本の男性の子育て時間は先進国中最低水準です。
「大切な仕事」の時間と「子育て」の時間を、同じレベルで考えられないだろうか。
魔王討伐 と 子育て
本来、比較するまでもないレベルの問題が、比較されないといけない状況。
それ自体が異常なのだと、このドラマは警鐘を鳴らしているのではないでしょうか。
「子育てを後回しにした人類の負けですね,大人しく滅びましょ」
「でもさ、保育園は迎えに行こうよ!」
そんな、ぐさぐさ刺さるセリフとともに、この『伝説のお母さん』、注目していこうと思います。
余談、よるドラの話
余談ですが、日本にいるときからよるドラ、けっこう好きでした。
ゾンビの町で人生を考える話や、明るくない高校生ゲイの話など。
凄くメッセージ性が強いのです。
そのメッセージも、ポリティカルコレクトネスに縛られ過ぎていない、むき出しの、作り手の叫び、みたいのが感じられるのです。
よるドラ、楽しみにしています。