10月30日(水)鈴々舎美馬 独演会「美馬噺」(深川江戸資料館 小劇場)
美馬 金明竹
スペシャルゲストの貞鏡先生の思い出話をマクラに。宝井琴調主任興行の鈴本演芸場で出逢ったという。
美馬さんが前座時代からよく掛けている本作。店番のクダリから。今日も松公がキレッキレだ。猫を借りに来た客と口喧嘩になる。「バーカ」「バカはお前だ」
この話を聞いた主人が諭す。
松公、お前に1つだけいい事を教えてやろう。お前のほうがバカだ。
サゲに向かって面白さが加速してゆく。もうこれこそが「美馬噺」だ。
貞鏡 西行鼓ヶ滝
講談師の中でもズバ抜けてマクラが面白い貞鏡先生。今日も大相撲を観に行った際に起こった「謎の美女騒動」を面白おかしく話す。
落語家も演る人が多いこの噺。もとは講談だそうだ。西行を自らの才能に溺れた鼻持ちならない人物として描く。だが、おじいさんに歌を聞かせる際、「このジイサンにわかるのか?」という科白は余計だ。それを表情やシグサで表現した方が良い。
落語では木こりが西行を起こすが、講談では自ら目覚める。自己完結型。もちろん「バチはあたらない」というサゲもない。
ー仲入りー
美馬 死神婆
落語と一人芝居の違いは何か?
NHK新人演芸大賞で審査員であるぼう大物落語家から賜った忠告をリフレインする。令和の落語を令和の言葉で語ったら、それは落語なのか?一人芝居なのか?
NHK新人演芸大賞では規定の11分で口演されたが、今日は本来の30分完全版で。
美馬さんの落語には「心のない笑い」がしばしば登場する。自分の本心を隠すための形式的な笑いとでも言おうか。映画のジョーカーのような笑い。
『金明竹』では仲買の弥市の使いの者がこの笑いをしていた。『死神婆』ではまさに死神婆がこのように笑う。だが、その彼女が厳しい顔を見せるのはラストで生命の大切さを諭す場面。ヒロインはその言葉を文字通り肚(腹)で理解する。
美馬 マッチングアプリ
鈴々舎美馬作。
マッチングアプリで意気投合し、全身赤ずくめで待ち合わせばしょへやって来た女。そんな彼女の前に現れた3人のおかしな男。だけど一番おかしいのは…?
この噺でも、ある男が「心のない笑い」を笑う。
最後はダジャレでサゲていたが、「お前もかよ?」でサゲた方が良い。