11月5日(火)不忍谷根千落語会〜林家つる子独演会〜(不忍通りふれあい館)
つる子 箱入り
新しく始まった不忍谷根千落語会の第1回目。つる子師は落語を好きになったきっかけを語る。高校時分は歌や芝居が好きで、落語に興味はなかった。落語との出逢いは大学時代。
「ワタクシ中央大学の出身でございます。合格した時はワクワク致しました。東京の「中央」に行けるんだ!と。群馬県(つる子師の出身地)は山の中ですからねえ。で、大学に行ってみたらやっぱり山の中だったという。おかげでホームシックにならずに済みましたが…。」
修行時代はこの谷根千のあたりを自転車で走り回ったという。師匠・林家正蔵の家はここからほど近い根岸にあった。また、おかみさんである海老名香葉子さん(正蔵師の母)の思い出も語る。ここから、自らの前座時代を重ね合わせたような本題へ。
世間知らずの箱入り娘が巻き起こす大騒動。正直も「バカ」がつくと考えものである。
古典落語のようだが、新作である。つる子師は三遊亭竜楽師に習った。竜楽師も群馬県出身であり、中央大学を卒業している。
つる子 豆腐屋ジョニー
三平ストア浅草店で夜毎まき起こる抗争。ドン・カマンベール率いるチーズファミリーと木綿の親分率いる豆腐の一家。そこにチーズのマーガレットと豆腐のジョニーの恋や「公家」のマロニーの思惑が絡み、バカバカしくも壮大な落語劇が幕を開ける。
「ゴッドファーザー」と「ウエスト・サイド・ストーリー」と「仁義なき戦い」を足して「落語」で割ったような本作に、つる子師は「宝塚」を加えて華麗な作品に仕上げた。本物の「宝塚」で上演される日も近い!?
ー仲入りー
つる子 しじみ売り
ようやく肌寒くなってきた。落語は季節を先取りする。雪の夜の話をたっぷりと。
つる子師はマンガ好きとあって、劇画のような一席。特に稲葉屋清五郎と子分のやりとりがオーバーアクションで、つる子師が文字通り跳ね回る。
それでいて、小僧が身の上を告白する場面では、しっとりと泣かせる。ストーリーにしっかりとメリハリがついているから、長い話なのに客をグングン引っ張ってゆく。
長く暗い冬の夜の果てに、ちいさな「あかり」を見つけたようなたいせつな物語であった。