2月7日(水)鈴座Lisa Cafe 落語会 ツルノヒトコエ vol.2
つる子 スライダー課長
2月3日(土)に豊川稲荷東京別院で行われた節分会で声優の日髙のり子さんと出逢った事を興奮気味に話す。日髙のり子さんはアニメ『タッチ』の朝倉南役。そして、つる子さんの本名は須藤みなみ。みなみちゃんの世紀の対面だ。
とある企業の課長の息子が少年野球チームに入り、ピッチャーになる。野球のやの字も知らない彼は部下の田中君に教えを請う。その甲斐あって、スライダーを投げられるようになった課長は、田中君にある辞令を出す。
キャッチボールの時、ミットにボールがおさまった音に腰をバンとたたく。このシグサは古今亭志ん輔師のアイデアだそうだ。新作にも理解のある師匠。
課長と田中君の会話がまさにキャッチボールのように軽快に進む。課長の無知を田中君が戸惑い気味に指摘する。実は田中君は課長に試されていたというラストにも説得力があった。
つる子 片棒
赤螺屋ケチ兵衛の息子達は二人しか登場しない。時間の関係か「通夜を二晩出す」兄貴はカット。
金太郎が父の弔いに紅白の幕を張り巡らせたら、お祭りが始まる。つる子さんのひとりお囃子に感心するやら笑うやら呆れるやら。果てにはお客様を手拍子に誘い、会場はさながらロックコンサートの如き様相を呈する。金太郎がバンザイをしながら出てゆくと祭りの後の虚脱感が訪れた。
ー仲入りー
つる子 しじみ売り
もとは上方の噺。つる子さんは師の正蔵師から教わった。
先日聴いた志の輔師の『しじみ売り』と違って、鼠小僧次郎吉は出てこない。設定もだいぶ違う。
ただ、雪の中小僧がしじみ売りに来て、兄イがそれを買い、小僧の身の上話を弟分と聞くという構造は同じ。恩のつもりが仇になっていたというテーマも変わらない。
小僧と兄イ・弟分の関係は講談における『清水次郎長伝 小政の生い立ち』の政吉と清水次郎長・森の石松の関係に似ている。小僧の言動に弟分が怒り、兄イがたしなめるという笑いの構図。
つる子さんが描く子供はいつも可愛くて無邪気、そして哀しい。本作でも強がりで笑っていた小僧の顔が不意にゆがんで泣き顔に変わる。すると演者であるつる子さんも涙をこぼす。ボロ泣きの涙ではなく堪えきれずに溢れ出した涙である。林家つる子の噺に嘘偽りのない事の証明である。
辛い寒さが続くが、明けない夜はないし、終わらない冬はない。春は必ず来る。