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2月5日(水)林家つる子独演会(江戸深川資料館 小劇場)





 柳家権太楼師が食道がん治療の為、今回は休演し、春風亭一朝師が出演する。

ぼんぼり  のめる
 桃月庵白酒師の弟子。ふっくら感がある。これからは林家ぽん平・林家たたみ・桃月庵ぼんぼりの3人をふっくら三兄弟と呼ぼう。

つる子  ミス・ベター
 改めて権太楼師の休演が告げられる。権太楼師からは良くなったらつる子師の会に必ず出演するとのお言葉も頂いたそうだ。
 つる子師のマッコト本名は「みなみ」という。母がマンガ「タッチ」のファンだったからこの名になったという。彼女は女子高に進学したため、ベタな恋愛などは経験できなかった。そんな彼女の「願望」が詰め込まれた一席である。
 その世界ではベタな出来事、ドラマや映画ではありがちな事件が続けざまに起きる。そのせいか、科白や演技も多分に類型的である。かつての大映テレビのドラマのようでもある。ジェットコースタードラマなんて言葉もあった。
 果てしなく続くベタな世界が果てしなく続くというベタなサゲで終わる。

一朝  片棒
 だから先に上げてくれと言ったんだ。

「坊やは良い子だオヒャイヒャイトーロー」や「われ死なば焼くな埋めるな野に棄てよ やせたる犬の腹をば肥やさん」のクダリなどから察するに、つる子師は一朝師からこの噺を習ったのではなかろうか?
 ただ、つる子師と違って、りきみがなく、その分軽やかさが感じられる。だからお客はつい笑ってしまうのだ。「片棒」の教科書のような一席でありながら、さわやかな笑いの連続であった。

ー仲入りー

つる子  井戸の茶碗
 二人の武士と娘と屑屋と金子(きんす)をめぐる輪舞曲。清廉潔白も度を過ぎれば、はた迷惑である。頑固というより頑迷に近い二人の武士に振り回される屑屋の清兵衛がおかしくも哀しい。そんな彼に千代田卜斎の娘は優しい。つる子師の「井戸の茶碗」では彼女が大きな役割を果たす。千代田と高木佐久左衛門の間で右往左往する清兵衛を見かねて大家に相談したのは彼女である。
 また、終盤、娘は父に初詣の際に絵馬に「高木様に会えますように」と書いていた事をバラされてしまう。それを受けて、彼女は「屑屋さんのお話から、高木様は父によく似た立派な武士だと感じた。一度お会いしたいと思う」と言う。つまり、いきなり夫婦になるのではなく、一度会ってから考えると言うのだ。百五十両のカタではないひとりの女性の意志が感じられる。
 落語の前面に立つ男性の陰で女性達は何を思い、どう動いたのか?林家つる子の「挑戦」は続く。

 


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