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1月26日(日)有望若手応援寄席 金原亭杏寿独演会(飯能・一丁目倶楽部)


杏寿  アジアそば
 お正月は故郷・沖縄には帰らず、こちらで過ごした。年越しそばは沖縄そばを取り寄せて食べたそうだ。世之介一門でのお正月の過ごし方を紹介する。

 「アジアそば」は三遊亭白鳥作の新作落語。
 怪しげなインド人女性に誘われて入った店はそば屋だった。彼女は「富士そば」で修行を積んだという。だが、出てきたのは沖縄そば。沖縄料理の店「やんばる」でも修行していたそうな。エスニックでアジアンテイストな白鳥落語を杏寿さんは沖縄テイストにアレンジした。高座に琉球の風が吹いた。

杏寿  反対俥
 上野発の最終電車に乗るため、人力車を探す主人公。つかまえたのは八人の子供を抱えた退院したばかりの病み上がり俥夫。その走りは遅く、老俥夫にも抜かれる始末。
 他の俥に換えようとすると、威勢のいい若い俥夫がつかまる。ドラム缶を飛び越えたり、電車のとなりを疾走したり…。
 女性落語家でこの噺を演る者が多い。蝶花楼桃花・林家つる子…。揃いも揃って皆よく跳ぶ。ヒザのためにグルコサミンを摂ったほうが良かろう。

ー仲入りー

杏寿  天狗裁き
 女房に起こされた夫は彼女に「どんな夢を見てたの?」彼は「見ていない」と答える。以降、隣家の友人に聞かれても大家さんに聞かれてもお奉行さまに聞かれても、旦那は「見ていない」と答える。だって見ていないんだもの。

 違うのは天狗のくだりから。天狗の持っている羽団扇は物を破壊したり生命を与えたりする事ができる。もちろん空も飛べる。主人は羽団扇を貸してくれたら夢の内容を話すという。天狗は「少しだけなら」と羽団扇を貸す。彼が夢の内容を話し出すと、彼の身体が浮きはじめ…。

 ラスト、お楽しみの寸前で女房に起こされ、おあずけを食うのは「夢の酒」に似ている(もっとも「夢の酒」で主人を起こすのは息子の嫁だが。)。柳家さん喬師など一般的な「天狗裁き」とは一味違ったこの噺を杏寿さんが情感深く描いた。ちなみに一般的な「天狗裁き」は主人公が天狗に襲われた後、女房に起こされ、「どんな夢見たの?」でサゲる。


終演後の記念撮影©有望若手応援寄席

 終演後、杏寿さんと少し話した。「天狗裁き」の最後のくだりは十代目金原亭馬生師から、その弟子・金原亭世之介師(杏寿さんの師匠)へと伝わったものだそうだ。別れ際にサインを書いて頂いた。


杏寿さんのサイン

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