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11月23日(土)ヒューマンライツ・フェスタ東京2024 林家つる子 さんトーク&落語会(東京国際フォーラム G510会議室)

つる子  トーク
 つる子の落語との出逢いは中央大学で半ば拉致同然にして入部した落語研究会においてであった。それまでは落語とは縁のない生活を送っていた。落語好きな家族もいなかった。そんな彼女がオチケンの先輩の落語を面白いと思った。
 熊さん八っつぁんご隠居さん。そんな人たちが活躍する落語がこんなに面白いなんて! 落語に登場するバカの与太郎。彼のような人が現代に生きていれば診断名がつけられて隔離されてしまうのかもしれない。だが、落語の世界の人達は与太郎を隔離せず、「バカだバカだ」と言いつつも仲間に入れている。そんなところがインクルーシブに通じるのではないか?
 リーマンショックに翻弄された就職活動。良縁に恵まれなかった彼女にオチケンの卒業公演が迫る。これまで以上に落語に打ち込む中、自分の中で就職活動よりも落語のほうが重いことに気づく。彼女は落語家になる事を決意する。
 林家正蔵に入門した彼女は大変な修行時代を送る。そんな中、師匠にかけられた一言が今でも林家つる子の支えになっている。

落語は男性が作ってきた文化だから、それには従わなければならない。だけど女性にしかできない落語もある。思い切ってそれをやってゆけ」

 師匠の言葉に背中を押されるようにして彼女は『芝浜』に取り組む。

 もともと呑兵衛だった魚屋の勝五郎が芝の浜で五十両を拾う。そうすると勝は仕事へ行かなくなり、長屋連中を呼んでどんちゃん騒ぎをする始末。

 このままではダンナがダメになる。

 女房のお光は勝五郎が浜で五十両を拾った事自体を夢にしてしまおうと画策する。

 ちょっと男側に都合が良すぎないか?女房を「都合のいい女」として描きたくない。女房お光の視点から、女側の想いや事情を描いたのが、続けて演じられた一席である。

つる子  おかみさん目線の芝浜
 大家の家に商いに来た勝五郎はそこでお光と出逢う。大家の計らいもあって、二人は結ばれる。だが、とある出来事から勝の足が河岸から遠のく。酒浸りの日々。そんなある日珍しく仕事に出た芝の浜で勝は財布を拾う。

 勝が財布を拾うクダリは描かれず、お光が大家の家に飛び込んでくるクダリが丁寧に描かれる。ダンナが拾ってきた五十両をどうしたものか。お光が思わず漏らす。

 「いっそ夢だったらいいのに…」

 大家は「それだ!」と叫び、お光に財布を拾った事が夢だったのだとダンナに思い込ませろと諭す。

 私はこの噺をはじめて聴いた時、素晴らしいウラ話だと思っていたが、最近は意外とこちらがオモテなんじゃないかと思うようになった。独演会などで演り込み、真打昇進披露興行や通常の寄席でも掛けられ、物語自体の強度や輝きが増したように思う。年末に向けていよいよ「つる子の芝浜」の季節が到来する。

帯のデザインが東京駅。

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