
12月8日(日)林家つる子パルテノン多摩独演会(パルテノン多摩小ホール)
つる子 やかん
つる子師匠が中央大学に通っていた頃、彼女が属する落語研究会はここパルテノン多摩小ホールで年2回落語会を開いていた。
「そんな思い出のある場所で独演会ができるなんてとても嬉しいです」
と言いながらまた涙ぐむ。
中央大学で落語に出会ったエピソードなどを語る。
「ワタクシ中央大学文学部で中国語を専攻していたんですが、中国語よりも落語ができるようになってしまいました」
『やかん』はつる子師匠がよく掛けるネタ。
「ここで一つの珍事出来!」
といった後、「フッ」っとため息をつくのが艶っぽい。
デタラメ講釈を流暢に「読み」、テンポの良さでお客の気を逸らさない。
「ヤッカーンヤッカーンでやかんになった」
「冗談言っちゃいけねえ」
でサゲる。痛快なり。
つる子 反対俥
つる子師匠は中央大学在学時、立川市富士見町に住んでいたそうだ。西立川駅にも近い。当時の須藤みなみさんはここから立川北駅に行き、多摩モノレールに乗って通学していた。
そんな事情から前座時代のつる子さん、師匠・林家正蔵に「中央線に詳しい」と思われ、吉祥寺での落語会におともする事になる。東京駅から中央線に乗る。だが、乗ったのが「中央特快」で吉祥寺を通過してしまい…。
『反対俥』は林家つる子ので代名詞とも言える演目。今日も客席から手拍子が巻き起こり、演者と客席が文字通り一体化した。
ちなみに目的地は「高崎」ではなく、「多摩」に変更された。
ー仲入りー
つる子 おかみさん目線の芝浜
つる子師匠が「挑戦」し続けているシリーズ。
勝五郎とお光が出逢う場面。お光がアジの目を見て「美味しそう」と言うと魚勝は
「目の付け所が違うね」
と感心する。
勝が去ってお光が大家に「あの人の目がこのアジの目に似ていて綺麗だった」と指摘すると、大家は「あいつは仕事が好きだからなあ」と返す。
三年後の元日、芝の浜で拾った五十両で皆にお礼の宴会を開く。夫婦の語らい。
お光「今のあんたの目はこのアジに似て輝いてるよッ」
勝「新年早々人の目をアジにたとえる奴があるか」
「女目線」だけあって、目線が気になる一席である。また、勝五郎の職業が魚屋なので、アジと絡めたのだろう。それに得意先の岩田のご隠居の好物もアジなのである。この目線のおかげで『つる子の芝浜』に目が入ったように思う。
