6月29日(土)つるの恩返し〜 林家つる子 真打昇進記念落語会〜(横浜にぎわい座 芸能ホール)
さく平 つる
林家たい平師の長男。
小駒 元犬
先代金原亭馬生師の孫。隔世遺伝か?
小馬生 幇間腹
前名は「馬玉」。
幇間の一八の女将に対する態度と伊勢屋の若旦那に対する態度の違いをうまく演じ分けていた。普段にこやかな人間の二面性を浮き彫りにする。
正蔵 お菊の皿
つる子師の真打昇進披露興行、全国どこへ行っても、前列のお客様は同じ顔ぶれ。
仕事は大丈夫ですか?
幽霊で儲けようとする男達と売れて芸(?)が團十郎っぽくなったお菊と彼女に夢中のお客達。『一眼国』にも共通する野次馬根性と物見高さである。
ー仲入りー
(高座左より)【司会】小駒・あずみ・つる子・正蔵・小馬生・馬生 口上
小駒さんの司会ぶりを正蔵師が心配そうに見つめる。まず、つる子師の親友である三味線漫談のあずみさんが口上を述べる。色物の芸人さんが口上に並ぶのは異例である。両親の看病をしながら群馬から仕事に来ていたつる子師。その姿を間近に見ていたあずみさんは親友が真打になって我が事のように嬉しいと涙をこぼす。つる子師ももらい泣き。
正蔵師は、池袋演芸場上の喫茶店でつる子師とはじめて会った時のエピソードを語る。
馬生 看板のピン
サイコロはお釈迦様が作ったというエピソードから博打噺へ。若い衆が老いた親分をダマそうとしてダマされた話が前半。
その親分のやり口を真似ようとしてしくじった馬鹿な男の話が後半。
親分の狡猾さと度量の広さとまねた男のおろかさと可愛さ。馬生師が飄々と小気味よく演じた。
あずみ 三味線漫談
「すいりょう節」「おふろのうた」「おてもやん」
「おふろのうた」はあずみさん作詞作曲。「面倒だからお風呂に入りたくない。でも入ったら気持ちいい」と言うテーマを高らかに歌い上げる。
つる子 中村仲蔵
寄席の真打昇進披露興行でも数回かけられた。
「カカア天下」という言葉が実は世界遺産の高岡製糸場で働く女房達を旦那達がたたえたものだという。ここから、歌舞伎界の内助の功の話になり、本題へ。
偉大な歌舞伎役者の陰には賢い女房がいた。
今度の『仮名手本忠臣蔵』で仲蔵に与えられた役は五段目の斧定九郎ただ一役。嘆く仲蔵に妻のお岸は「私の父は芝居好きだった。父はよく斧定九郎と言う役をもっと良くする役者がきっとあらわれる。それがあなたよ」と諭す。
悪い方へ行きがちな旦那の思考を、前向きな方向へ誘導する。『芝浜』とは別の意味で賢く、旦那を手の上で転がすできた女房である。してみると、お岸はつる子さん自身がなりたい理想の女性像なのだろう。