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2023年10月1日(日)サザンオールスターズ 茅ヶ崎ライブ2023

 この日の茅ヶ崎はライブだけではなく、茅ヶ崎エフエムの開局があった。北口の茅ヶ崎エフエムスタジオ前では、社長の中西正樹(アミューズ社長でもある)がサザンファンと記念撮影をしていた。
 茅ヶ崎の駅ビル「ラスカ茅ヶ崎」ではBGMにサザンが流れていた。普段BGMなど流さない小さな店でもサザンを聴く事ができた。海へと続く道には大勢のサザンファンが歩き、今日が「特別な日」であることが実感された。
 会場の茅ヶ崎公園野球場に行く道である高砂(たかすな)通り。会場の前後にはチェックポイントが設けられ、地域住民とチケット所持者以外の入場を制限した。会場周辺がライブ会場になったようだ。茅ヶ崎市民の多大な協力のもとに行われてきた四日間のライブはこの日、大団円を迎える。
 

 夕方5時過ぎ、先頃茅ヶ崎名誉市民に選ばれた加山雄三の「夕陽は赤く」が流れる中、斎藤誠を先頭にサポートメンバーが入場する。曲は「君といつまでも」に変わり、桑田佳祐を先頭にサザンオールスターズのメンバー5人が並んで前の人の肩に手を置いて入場する。

【1】C調言葉にご用心
 スコーンと抜けるようなイントロに客席は一気に盛り上がる。野外ライブで歌われることの多いこの曲は軽いながらも艶っぽい歌詞に流れるようなメロディが印象的だ。サザンオールスターズというバンドの音がする。

【2】女呼んでブギ
 二曲目にして、公序良俗に反する卑猥な歌が登場する。

〽女呼んで揉んで抱いていい気持ち

は、ある意味鉄板のフレーズだ。原由子の

〽もういっちょー

 という合いの手が悩ましい。
 
ーMCー

「里帰りしました」
 という桑田の表情が清々しい。
 なぜか桑田が桜田淳子の「わたしの青い鳥」の歌いだしを歌う。桑田が「ようこそここへ」と歌うとお客が「クッククック」と返す。このバカバカしいコール&レスポンスが以後何度か繰り返される。

【3】YOU
 波紋のような原坊の一音目から流れるようなメロディが会場を抱きしめる。ここからしばらくはまだ日没前なので照明が効かない。なのでイントロ一発でファンとメンバーが分かり合えるようなナンバーが続く。

【4】MY FOREPLAY MUSIC
 鉄板のイントロから胸をかきむしられる。疾走感あふれるメロディにセクシーな歌詞。ギターが若い衝動を奏でる。

【5】涙のキッス
 ここでサザン屈指の名曲が登場する。ヒット曲の持つ安心感・安定感が横溢する。ポップスの意味を考える。

【6】夏をあきらめて
 研ナオコがカバーした名曲。「Pacific Hotel」はもうないが茅ヶ崎公園野球場の目の前のサザンビーチからは「江ノ島が遠くにぼんやり寝てる」のが見える。そんなロケーションに感動する。

【7】MOON LIGHT LOVER
 サザンには月をモチーフにした歌が多い。月あかりの下で繰り広げられる男女の逢瀬をうたう。扇情的なメロディに陶酔する。

【8】栄光の男
 この歌にも月が登場する。長嶋茂雄の引退から始まる桑田佳祐の人生論。2番以降はメロディを変えた部分があった。

【9】OH!SUMMER QUEEN(夏の女王様)
 先日の「NHK MUSIC SPECIAL」でも歌われた。ライブでは2008年の『真夏の大感謝祭』以来。かなり盛り上がるので、ライブの定番になるかもしれない。

【10】そんなヒロシに騙されて
 3月の鎌倉でのソロライブでは歌われなかった曲を。曲半ばでは原坊キーボードを離れ、ギターを弾く桑田さんのとなりで歌い踊る。なんて素敵なご夫婦。

【11】いとしのエリー
 原由子の静かなキーボード演奏から

Ah,you should go back〜

 一気に厳かな雰囲気になる。やっぱりこの曲は特別。間奏における原坊のキーボードが涙を誘う。サザンのメンバーとファンの絆を感じる。

 エーリィー

 という桑田の叫びが茅ヶ崎の海に飛んでいった。

ーメンバー紹介ー

 まずは桑田によるサポートメンバーの紹介。
 ここで突然ムクちゃんが「桑田クン、君の話はつまらない」と言い出し、自らを「真のリーダー」と自称する。ヒロシは「私が正真正銘のバンドマスター」と言えば、毛ガニは「フレーフレー毛ガニ」とお客に唱和させる。極めつけに原坊が「サザンの総合プロデューサーです」。バンド内における主導権争い(笑)。
 最後に桑田佳祐を紹介し、ムクちゃん主役の時間は終わった。

【12】歌えニッポンの空
 ここで新曲の披露。このライブのテーマソングでもある。「ここが故郷」を「ここが茅ヶ崎」に変えて歌われた。桑田佳祐の朗らかな歌声が故郷に響き渡った。この姿に観客から「ありがっと」の声が飛ぶ。
 
【13】君だけに夢をもう一度
 アルバム「世に万葉の花が咲くなり」に収められた佳曲。ドライブ感溢れるメロディアスなナンバーである。茅ヶ崎公園野球場に隣接する国道134号線を車で疾走するイメージ。
 
【14】東京VICTORY
 リストバンドが光り、桑田が「wow wow」と雄叫びのように歌い出す。今やライブの定番となった感がある。お客が一斉に腕を上げシャウトする奇跡の一体感。

【15】栞のテーマ
 一転して、せつなくメランコリックなイントロが流れる。このタイミングでの、この名バラードの登場に胸が熱くなる。

〽渚にしなやかに通り過ぎてくメロディ

 という歌詞が、ここ茅ヶ崎で現実となった。

【16】太陽は罪な奴
 鈴の音から一転して流れるモータウンビート。10月というのにまだ暑い茅ヶ崎に再び夏が訪れた。

【17】真夏の果実
 野外ライブの定番。繊細なイントロに導かれ、表面張力を保つようにAメロ・Bメロを歌った後、堰を切ったように桑田佳祐がサビを絶唱する。「真夏の果実」はこの茅ヶ崎でその完成形を見た。

【18】LOVE AFFAIR〜秘密のデート
 茅ヶ崎で歌う横浜の歌。茅ヶ崎出身の桑田にとっては大都市・横浜が眩しいのだろう。そのまばゆい輝きの中にこの曲はある。ラストでザ・ロネッツの「Be my baby」の歌い出しを歌う。

【19】ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
 原由子が横を向いてシンセサイザーを弾くとこの曲が始まる。桑田と観客が腕を振り上げ、レーザー光線が会場の至る所を突き刺す。ライブは佳境に突入した。

【20】盆ギリ恋歌
 片山敦夫の妖しいキーボードから興奮を呼び醒ますイントロへ。着物姿で上半身諸肌脱ぎ(下着はつけている)のダンサーが登場し、踊り狂う。盆ギリダンス、私は踊ったが、他に踊っているお客はごく少なかった。ちと難しかったか。ラストは佐藤郁実さんの「いい加減にしなさいよ」という科白が決まった。

【21】みんなのうた
 近年この歌の前に歌われる曲とは別の歌を歌う。水をかけたい欲望を吐露、スクリーンに「水を出します」の警告が出る。歌い出しから桑田が消防用ホースで客席に放水する。サビではおなじみの手フリ。会場は一体感に包まれる。

   再び郁実さん達が妖艶な出で立ちで登場し、キメポーズを取る。桑田の「Rock ‘n Roll」のシャウトとともにクライマックスへ。
【22】マンピーのG★SPOT
 やはりこの曲で絶頂に達するのか。ダンサー達の妖しげなラインダンス。打ち上がる花火。まさにお祭り騒ぎ。あれ?桑田さん、今言っちゃいけない事を言わなかった?ラストでは桑田がテレビカメラを持って、ダンサーの微妙な部分を撮影する。演奏終了後、盗撮疑惑をかけられた桑田、郁実さんに「お客様の前で正直に言いなさいよ」と責められ、「何が悪いんだよ?」と居直って、本篇終了となった。
 
 
アンコール

 再びメンバーが登場し、桑田が「最近拍手がおろそかになってる。どうせ出てくると思ったでしょ?」とチクリ。

【23】ロックンロール・スーパーマン〜Rock ‘n Roll Superman〜
 10月1日(日)のみ演奏。弱いだめな自分が音楽を通じて強くなるこのナンバーに強い「励まし」を感じた。

【24】Ya Ya(あの時代を忘れない)
 通常はラストで歌われる。桑田がギターを弾きながら歌うのはミレニアムライブ「晴れ着DEポン」以来か?秋はもう始まっててもいい時分だが…。

ーMCー

 桑田から「道をはみ出して歩いたり、性行為をするのはおやめください」との注意がなされる。

【25】希望の轍
 曲中に出てくる「エボシライン」とは国道134号線の事である。それに隣接する茅ヶ崎公園野球場でこの曲を聴ける事に胸が熱くなる。
 そして、満を持してこの曲が演奏される。

【26】勝手にシンドバッド
 何しろ「砂まじりの茅ヶ崎」である。それはまさにイマココなのだ。この日一番の盛り上がりを見せる。声出し解禁なので、「今何時?」「そうねだいたいね」のコール&レスポンスがいつもより激しい。いつものようにしんみりとバラードで締めなかったのは、これが終わりでなく始まりである事を示している。このライブをデビュー曲で締め括った意味はそこにある。
 
 コロナ禍以来、エア手つなぎだったラインナップも、今回はしっかりと手が握られた。

「最後に花火見て帰ってよー」

 と叫んだ桑田佳祐の目には光るものがあった。
 メンバー全員がステージを去った後、「Relay〜杜の詩」の映像が流れた。6月25日のサザン活動再開発表から茅ヶ崎ライブ冒頭(初日か?)まで。今年の活動を振り返る。今日この曲が演奏されなかったのは「祝祭」の意味合いの強い茅ヶ崎ライブにおいて、メッセージ性の強いこの曲はそぐわないと判断されたのかもしれない。
 映像終了後、漁港から花火が打ち上げられた。パッと開いてサッと散っていく花火こそが僕らの絆だ。
 花火の後は規制退場。私のいたA13ブロックが呼ばれたのは終演30分後であった。茅ヶ崎駅への近道は高砂通りであるが、人で溢れていたので、海側へ迂回して、道幅の広い雄三通りから駅へ向かった。私の見聞きした限り、大きな混乱もなく、このライブは締め括られたようだ。

 また茅ヶ崎でサザンオールスターズのライブを見られるとは思わなかった。この記憶は日に日に募り、私の心の拠り所となってゆくだろう。コンサートセットは撤収され、跡形もなくなっても、思い出は消えない。



【追記】「Ya Ya(あの時代を忘れない)」について。2013年に行われた『灼熱のマンピー!!』ツアーでも桑田さん、ギターを弾きながら歌ってましたね。(2023年10月4日)

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