2月10日(土)林家つる子独演会(江東区深川江戸資料館 小劇場)
ニ之吉 松竹梅
三遊亭吉窓師の弟子。
つる子 お菊の皿
入場するお客様をイジって笑いを取る。
ゲストの五街道雲助師には人間国宝に認定される前からオファーしていたと強調する。
つる子さんお得意の一席。
いい女ならひと目でも見てみたい。たとえそれが死んでいてもかまわない。
江戸っ子の凄まじいばかりの了見。
最初にお菊が出てきた時の恐ろしいほどの美しさ。それは林家つる子が持つ身震いするほどの美しさでもある。その後、一連の騒動が「興行化」し、お菊の行動は「演技」となり、クサくなり、陳腐化してゆく。
人が二人寄れば、そこから「演技」が始まる。どんな芸人や役者もはじめは無心に芸に打ち込んでいたはずが、人気が出るに連れ、欲や色気が起こり、芸はクサくなり、陳腐化する。つる子さんの『お菊の皿』は3月には真打になる彼女自身への戒めである。
雲助 干物箱
今まで、つる子にはカワイイネとかキュートとか言ってきたが、最近はオツな年増になってきた。一緒に楽屋にいるとムラムラする。
人間国宝にのみ許されたセクハラ発言(笑)。
先日の文京シビックホールでの雲助師の会では弟弟子の金原亭馬生師が口演していた。同じ演目でも設定が色々違う。一例を挙げる。馬生師は孝太郎自身が「本屋の善公」を思い出す。雲助師は友達に占ってもらう。最初に出した「カゴ抜けの法」は以前やってしくじったので、却下。友達が「身代わりの術」として「本屋の善公」に孝太郎の声色を真似させるよう提案する。
親父と善公のやり取りは爆笑の連続。軽さはあっても軽々しくはない雲助師の「芸」は決して陳腐化しないし、色褪せない。
ー仲入りー
つる子 紺屋高尾
「高尾目線」ではない本来の『紺屋高尾』である。だが、随所につる子さんの工夫が光る。
寝込んでしまった清蔵に親方が事情を聞く。清蔵が吉原で花魁道中を見る場面は回想シーンとなり、三味線が入る。高尾の堂々たる花魁道中を演じる林家つる子の美しさ。清蔵のハートを射抜いた弾丸は私のハートをも射抜いた。
高尾と清蔵の場面。嘘を詫びる清蔵に高尾は叫ぶ。
嘘じゃない!嘘はつき続けてこそ嘘になる。嘘を打ち明けてくれたアンタは嘘じゃない。
嘘と偽りにまみれた吉原で高尾は清蔵の小さな嘘を見逃し、大きな真(まこと)に縋った。
ラストでは晴れて夫婦(めおと)となったふたり。妻をいたわる清蔵と紺屋の仕事にも慣れ、手が真っ青に染まった高尾。つる子さんの晴れやかな笑顔で締めくくられた。
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