9月7日(土)代官山落語昼噺 林家つる子『紺屋高尾〜高尾編』(晴れたら空に豆まいて)
つる子・広瀬和生 ご挨拶
『代官山落語』今日は昼夜で。昼噺は林家つる子。ちなみに夜噺は三遊亭白鳥&立川吉笑。
数々の「女目線シリーズ」を手掛けてきた彼女が今夜は『紺屋高尾〜高尾』をかける。古典落語の名作を高尾花魁の目線から描く。
お囃子のかよさんが客席後方で三味線を弾き、噺に色を添える。
つる子 紺屋高尾〜高尾編
吉原では「お湯」を売りに来る者がいた。なぜなら遊女達はお湯ひとつ自分で沸かす事が出来なかったから。なぜなら遊女達が指先だけでも火傷してしまったら、「商品」にならなくなってしまう。彼女達はなにひとつ自分で自由にすることができなかった。高いオアシを払って、他の者にさせていた。そしてそれは借金となり、ここから出る事を更に困難にした。吉原とはそういうところ。
高尾太夫の花魁道中を遠くから見ている男がいた。搗き米屋の職人・久蔵。高尾のあまりの美しさに気を失ってしまう。
彼女には言い交わした男がいた。二人で「窓の月」を食べながら、長い夜を語り合う。
高尾の親友・たまき。彼女にも「いのさん」という身請けしてくれる約束の男がいた。
後に高尾の男は近江屋の娘と婚約し、いのさんはたまきを裏切り、他の女と逃げる。
高尾とたまき、男に逃げられた格好だが、ふたりの決断はまるで違っていた。
嘘ばかりの吉原で、やがてまことを見つけ、幸せに向かって歩き出した高尾と、結局嘘に振り回され、嘘から逃れる事のできなかったたまき。二人の人生はあまりにも残酷に、そして鮮やかにコントラストを描く。
喜怒哀楽をカラフルに表現し、高座に吉原の光と影を映し出した林家つる子。彼女にしか語れない高尾太夫がここにいる。
つる子・かよ・広瀬和生 トーク
つる子師、広瀬師と急遽、お囃子のかよさんがトークに加わる。かよさんは学習院大学を卒業後、国立劇場の養成所で寄席囃子を学んだ。それだけでは飽き足らず、東京藝術大学に入学し、長唄などを学ぶ。つる子師とは早い段階から『女目線シリーズ』でお囃子を担当し、噺を彩ってきた。
『女目線シリーズ』もそうだが、改作や新作、古典においても、花魁の目線から噺を再構築・創造・新解釈してきたつる子師。男の落語家が女性を描くと得てして自らの理想像に走りがちだが、つる子師は女性の気持ちをダイレクトに噺に織り交ぜてきた。そこには理想だけでも現実だけでもない、よりリアルな「吉原」が浮かび上がった。林家つる子は「廓噺」の新たな可能性を様々なスタイルで広げ続けている。
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