なすの一生
「あなたの好物はなんですか?」
と訊かれた時、僕はいつも迷ってしまう。
好きなものが沢山ある。
嫌いなものすら思い浮かばない。
「〇〇が好きです。理由は〜」とさらりと言える人はカッコいい。
僕が迷っているうちに、その人は次の会話につなげる技術を持っている。
好き嫌いがないとは、優柔不断で不幸な事にすら思えてくる。
そんな簡単な答えも用意していない自分が恥ずかしい。
僕もそんな人になりたい。
そう思ったある日、美味しい田楽を食べて「生まれ変わったら茄子になりたい」と言ったことを思い出した。
世の中に美味しいものは沢山ある。
茄子は、どの国の料理にも縛られず、季節問わず、色んな美味しいものになれる、世界中で重宝されている食材だ。
実はスーパースターなのだな、君は。
僕は「茄子を好物」と言うことにした。
「来世は茄子になりたい」と言うことにした。
もし来世に茄子になったら、どんな料理になりたいか?
これはまたとっても悩ましい質問だ。
しかし、そこまで答えてこそ、茄子の話題で盛り上がるのではないか?
そうやって、冒頭の歌詞が生まれた。