タイらしいホスピタリティ。なごんだひととき
BBQの店、定休日やったわ。場所決まったら、またら連絡する。
タイ人の友人から電話がかかってきた。
日が沈んだにもかかわらず、うなだるような暑さと渋滞。わたしは、バイクタクシーで待ち合わせ場所に向かっていた。
無秩序に入り乱れる車。そのすきまに、車体をねじ込むバイクタクシー。それでも、なかなか進まない。
渋滞と暑さで、頭がどうにかなりそうだ。
しばらくするメッセージが届いた。どうやらホテルのブュッフェへいくらしい。
えらい、グレードアップしたなと思いつつ、目的地変更を運転手につげた。
それにしても、5月のバンコクは暑い。
そういえば誕生日だった
髪の毛はグチャグチャ、汗もダラダラ。わたしの目の前に聳え立つのは、4つ星ホテル。
幸いにも、襟付きのシャツとジーンズを着用していたので、ぎりぎり許されるだろう。
友人たちは、すでに席についていた。カニやオイスター、ファアグラなど思いのまま食事を楽しんでいた。
バンコクに住んでいた頃、グループ内のメンバーでお祝いごとがあると、このブッフェで食事をしたのを思い出す。
ここには、私たちが大好きなシーフードのオプションがたくさんある。週末でなければ、割とお得な値段でたのしめる。
「そういえば、先週、ギフトの誕生日やったやん」
ギフトが席を立った時、友人のひとりが小声でそう言った。焦りだすわたしたち。なにも準備はしていない。
そんなわたしたちに追い打ちをかけるように、後ろのテーブルで、ハッピーバースデーの合唱がはじまった。
これはまずいどうしよう。
即席ハッピーバースデー
とりあえず、近くにいたホールスタッフに友人が声をかけた。
「ぼくらの友人が誕生日なんです。急で申し訳ないのですが、バースデーケーキを用意していただくことはできますか?」
ダメ元でおねがいしてみたものの、予約していないのでケーキの用意はできないと断られた。
我々に落ち度があるので仕方あるまい。ホテル側の対応になんら問題はない。
みんなで話し合った結果、ギフトが席に戻ってきたら、バースデーソングで迎えようということになった。
突如やってきたバースデーケーキ
そうこうしているうちに、ギフトが戻ってきた。
同時に、先ほどのホールスタッフが、ニコリと微笑みながらこちらにやってくる。
よく見ると、ロウソクがしつらえらたケーキがそこにあった。しかも、お皿にはこんな文字が書かれている。
Happy Birthday K. Gift
さらに、タイミングよくバースデーソングが始まった。ホールスタッフも、まじえて、みんなでギフトの誕生会がはじまった。
別のスタッフが、Happy Birthday とかかれたフラッグを持ってきてくれた。歪んでいたけど、ソファに飾り付けもしてくれた。
ギフトも、わたしたちも、どんでん返しのサプライズに大喜び。
あるもので心温まるおもてなし
ケーキをよく見ると、ケーキコーナーにあるひとくちサイズの小さなブラウニーと同じものだった。
しかし、そこには一工夫があったのだ。
切り分ける前の大きなブラウニーに、生クリームとイチゴをトッピング。そしてハッピーバースデーの文字。
見た目は立派なバースデーケーキである。
フラッグも、別のパーティで使われたものであろう痕跡があった。どこかから引っ張り出してきたのだろう。
ルール上は、ここまでサービスをする必要はない。にもかかわらず、機転をきかせてくれたのだ。提供できるものを工夫して、最大限のお祝いをしてくださった。
そんな気持ちがひしひしと伝わる。
ああ、このルールに縛られない臨機応変なサービス。これこそが、タイのあたたかさだ。
ブラウニーをおいしそうに頬張る友人たちを眺めながら、またひとつタイの魅力を再発見した瞬間だった。
お店のご紹介
今回、わたしたちが訪れたのは、Ploen ChitにあるPlaza Athenee Hotel内のRain Tree Caffe
ブッフェ形式のランチとディナーを提供している。シーフードブッフェにはじまり、ウェスタン、中華、タイ、日本料理、デザートが並ぶ。
KlookやEatigoで予約すれば、割引特典もあるのでオススメ。