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わかりやすい説明の仕方って?

 私は普段の仕事で小学生~大学生に勉強を教えたりもするのですが、その際に気づいた、わかりやすい説明の仕方について述べたいと思います。
 普段教えていて感じることとして、人の理解力などの能力差というのは、体力差よりも何倍もあると感じます。100m走るのに、オリンピック選手は、10秒を切ると思いますが、普通の人が走っても遅くても20秒などでしょう。つまり、2倍程度しか差がないことになります。ところが理解力などの能力差というのは、子供たちを教えていてかわいそうになるくらい、差があります。数値化することは難しいですが、2倍どころか、5倍か10倍の差があるように感じます。
 そういった、本来差がある人に対してもわかりやすい説明というのが求められるシーンは多いと思います。
 仕事をする中でも、上司や部下に説明することもあれば、営業先で説明することも多いと思います。もちろん、学生だって、友人同士で話すときに何かを説明することありますね。
 自分ではわかりやすく説明しているつもりでも、「え、どういうこと?」と聞き返されたり、「悪いけど、もう少しまとめてもらえる?」と言われたり、どうしてわからないのか、と思うこともあるのではないでしょうか。
 人にはいろいろな能力がありますが、何かの説明を聞いて飲み込みが早い人というのは、1回の話の中で、続けて言われてもそれを頭に貯めることができる量が多く、また、言われたことを理解できる処理速度をもっています。
 例えば、何か作業をするときに、「はじめに、○○をして、それが終わったら○○をして、もし○○だったら、Aを使って、そうでなければBを使ってください。」というようなことを言われたときに、パッとこれを覚えて理解することができる人もいれば、「はじめに、○○をして、それが終わったら○○をして」までしか覚えられないので、ちょっと待ってください、となってしまう人もいます。
 1回の話で貯められる量が多い人と少ない人、理解が早い人と遅い人というように、ざっくり2つのパラメータが人の理解には影響していると思います。みながみな、理解が早いということはありませんので、誰に対しても理解しやすくなるような話し方、説明の仕方をお伝えしていきます。
 話す相手が一人なのか、複数なのかによっても変わる部分もありますが、わかりやすいかどうか、まずは、一人に対して考えたいと思います。一人に対してわかりやすい説明ができないと、複数人に対してもわかりやすい説明はできません。

ポイント1 早口にならないようにする、話を区切る

 まず、その相手との関係性によります。普段からよく話す相手や同僚であれば、早口などの話す側のクセなどもわかっていますし、また、使う用語などについてもわかりますから気を使う必要はないですね。ところが、多くの場合、そうではない相手に対してわかりやすい説明が必要になると思います。
 話している本人はあまり気づいていないことが多いのですが、説明が下手な人というのは、早口だったりします。話している本人がせっかちだったり、頭の回転が速くてということもあるかもしれませんが、普段から会話していない相手の早口というのはとても聞き取りにくいです。早く伝えたいという気持ちはわかりますが、早口になると言葉も少し潰れたりしていて伝わらないということもありますので自分が早口かどうかを他人に聞いてみるのも大事です。また、早口になると、一気に話してしまおうとしますので、相手の聞いている側の一回に聞ける量を超えてしまうかもしれません。そのため、話を区切る必要があります。話を区切りながら話さないと、聞き手が質問をしたいのに、と思っていても話し続けられると聞き手はストレスがたまり、また理解も深まりません。伝えたい側はとにかく伝えたいと思うのかもしれませんが、相手に正しく理解をしてもらってはじめて伝わるものです。音声として伝えればそれで良いというものではないはずです。

ポイント2 専門用語は補足と例をあげる

 専門用語や自分たちだけの用語を使って良い相手なのかを考える必要があります。自分たちにとっては当たり前だと思っている用語も相手によっては当たり前ではないことも多いです。昔聞いた笑い話ですが、あるお医者さんがおばあちゃんに、「今度、MRI(エムアールアイ:磁気共鳴画像)検査をしましょう。」と言ったそうです。それを聞いたおばあちゃんは、家族に「今度、イモ洗いをするんだって。」と言ったそうです。家族は、なんで、イモ洗い?と思ったそうですが、MRIをイモ洗いと勘違いしているわけです。医者にとってはMRIは日常用語ですが、おばあちゃんにとっては、初めて聞く用語かもしれませんから自分の知っている近い言葉に置き換えているのでしょう。
 この用語というのが難しいところで、世代ごとに異なったりもしますので、基本的に何か専門用語かもと思う言葉を使ったら、その都度、一言説明を入れると理解が高まるということもあります。数学の説明で例を挙げますと、「だって、次数が2なんだからさ、解は2個あるわけでしょう。次数というのは掛け合わされている文字の数ね。だから、xの2乗だったら、xかけるxだから次数が2ということ。」のようにです。聞いている側が忘れている言葉かなと思うことは少し補足してあげてわかるようにするのですが、その時に例をあげているわけです。例があると話というのはとても分かりやすくなります。

ポイント3 話す順番を整理してから話す

 話す順番を整理するといいますのは、基本的に大枠から話すということがあります。
 細部から話されると、話をどこにもっていくつもりなのかを聞き手は常に考えなければなりません。そうすると、聞き手が考えながら聞かないとならないですので、せっかく説明をしていても伝わりにくくなります。そのため、まず伝えるべき結論や大枠を伝えて、そこから理由や詳細を説明をするというような順番です。
 本も目次を見ると、概要がわかるので、買うかどうか判断がつくというのと同じかと思います。

ポイント4 相手の反応を見ながら話しかたを変える

 説明のうまい人とへたな人ということの違いは、学生時代の先生たちを思い出すと良いかもしれません。
 生徒の反応を見ないで、「あの先生、一人で授業やっている」という先生の授業はわかりやすくはないですね。(実はそういう先生の話もこちらからきちんと聞こうとすると案外良い話をしていたりすることもあるのですが)
 説明のうまい先生というのは、まず、生徒たちの方を見ていると思います。ただ、教科書を読んでいる、または解説をそのまま読んでいる先生の説明がうまいということはないと思います。
 正直、説明する際には、このポイント4を一番意識すると思います。相手が何を理解して、何が伝わっていないのかを、相手のあいづちや、目線の動かし方、質問などから理解します。もちろん、相手が興味を持っていない、と感じたら、相手が何を興味を持っているのかを予想したうえでその話にします。
 いくら、自分が伝えたいことがこれだ、というものがあったとしても、相手に興味を持ってもらえないと話も進みません。
 そのため、何かを説明したいのであれば、まず先に相手の話を聞くというのも有効な手段です。営業で何かを買ってもらいたいとしても、いきなりうちの商品はこうです、と話すよりも、まずは、どんな理由で、その商品を探されていますか、と逆に質問をするのです。そうすると相手の困っていることを聞き出すことができたりもします。
 そこから、自分の説明をし、またあらためて相手に質問をするようにすると、相手が望んでいる内容を伝えながら、またこちらの伝えたいことを伝えることができます。ただ、それは相手が自分の商品などに興味を持ってくれている場合の話です。いきなり営業電話して、何か困っていますか、と言っても誰もそんなことを答えてはくれません。

ポイント5 相手に興味を持つ

 結局のところ、説明がうまい人というのは、聞いている相手に興味を持っている人かと思います。相手がどのような人で、どのように説明を聞いているのか、どのように理解しているのかを予想します。これは、相手に質問を投げかけることでわかってきます。何かが正しく伝わらないとしたのならば、どうしてそのように考えるのかを予想するのです。何かを説明したりするということは、相手に何かを理解してもらいたかったり、または行動してもらいたいということかと思います。それが通らないということは、もしかすると正しく伝わっていない可能性もあります。一度伝えて、うまく伝わらないからもう終わり、ではなく、どのように伝わっていて、どうして伝わらないのかを考えます。それは相手に興味を持つことに他なりません。相手に興味を持ち、相手の立場の視点でものを見ようとすると、今まで見えていなかったものが見えてきたりします。
 ただ、相手の理解が悪いだけだ、としてしまっては何も得られません。誰しも、物事は色のついた眼鏡でものを見ています。同じ言葉でも誰が聞くか、誰が伝えるかでも伝わり方は異なります。

終わりに

 逆説的ですが、理解の悪い人は、うまい説明ができるようになる可能性が高いです。なぜなら、理解の悪い人は理解の悪い人の気持ち、状況がわかるからです。自分だったらどうすればわかりやすくなるかな、どうされるとわかりにくいかな、というのを身をもって体験しているので、その経験をそのまま出せばよいということになります。
 説明がわかりにくいといわれる人は、逆に頭が良く、理解の早い人だったりすることがあります。理解の早い人は自分ならば、これくらいで、と思って説明をしますが、理解の遅い人の気持ちというのはなかなかわかりにくいところがあるからです。
 理解が遅いというのは、短所でもありますが、人に説明をするというところにおいては、もしかしたら長所になるのかもしれません。
 もし、自分が理解が遅い方だ、学校の授業などでもそういえば、集団で説明されるとどんどんおいていかれる方だったな、と思うのであれば、説明がうまい人になれる可能性は高いと思います。
 理解が遅い人というのは、じっくり聞かないとわからない反面、どうしてそうなるのだろう、など人が考えていないところまでを考えることができることもあります。そのため、一つ一つを丁寧にとらえることで納得しながら進むために、スピードは遅いけど、その分人に説明するのはうまくなる、そういうこともあります。
 簡単な文ではありますが、読んでくださった方にとって、何かプラスになれば幸いです。


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