勝つ就活って本当に必要なの?(前編)
私は理系の大学でのキャリアデザインの講師や、塾の経営をしたりしています。起業して10年になります。
その前は放送機器メーカーでのエンジニアやIT企業でのSEを足掛け10年やってきました。
塾で中高生を教えていて、近年の傾向として、偏差値の高い学校や有名大学に行くことが幸せだと思っている親や子供は減ってきています。
もちろん、それぞれに行きたいところに行けばいいと思うのですが、20年前とは価値観が変わってきています。20年、30年前は難関校に合格することがまず最初の目標でした。
そして、有名企業や官庁などで公務員になることが幸せロードみたいな。
大学については、難関校に行くことが全員の幸せではないと気づいている人が多いのに、どうも企業選びについては名の知れた企業にばかり応募する人達が多いと感じます。
説明会に行けばわかりますが、有名企業には人だかりができているのに中小企業には殆ど人がいません。
中小企業には合同説明会の開催会社の社員が学生に声をかけて連れてくるような状況。
この傾向は、30年前も20年前も10年前も、そして今もあまり変わりません。
また、講義の中で大学生に話を聞けば「年功序列はイヤだけど、終身雇用がいい」と言う始末。
年功序列(入社した順に給料が上がっていく仕組み)と終身雇用(一度就職したらずっと雇用される仕組み)はセットですから。終身雇用を成り立たせるために、年功序列ができるわけです。終身雇用などがない外資系の企業に行けば、年功序列などはないでしょう。仕事ができるやつが稼ぐことをできるわけです。
みんなが知っている大企業に入る、公務員で働く。そうすると安心が得られるというわけですね。仕事がずっと続くという。
有名企業になれば、100倍の倍率などザラです。
そこで内定を勝ち取った人が勝ち組みたいな風潮が日本には根強くあります。
それって本当かなぁ、と今となっては私も思います。
確かに20年前の私の若い頃は、そういう企業から内定をもらえることが一つのステータスのようなところがありました。
そういう企業に入社すると、自分の時間を大量に浪費させられるだけで、自分で管理できる時間が少なくなりますが、それでいいんですかと。
それでも、安定した企業に雇用されたいという人が多いのは知っています。
それを望まない人までが、就活レースを作り出している企業紹介業者に踊らされているような気もします。
行列のできるラーメン屋がおいしいとは限りません。なぜなら、価値観は人によって異なりますから。
同じ「カチ」でも、「勝ち」ではなく、「価値」に重きをおいて就活や転職活動をするほうが幸せになる人達もいます。