【コラム】日商簿記1級保有者からみた中小企業診断士試験の財務会計及び事例Ⅳの難易度
中小企業診断士の試験では、事前に財務会計の知識があると、他の受験生よりも、アドバンテージがあるとされています。
そこで、日商簿記1級を保有する私が感じた、これらの難易度について、説明したいと思います。
1.一次試験の財務会計
正直に言いますが、日商簿記1級を持っている人であれば、かなり簡単に感じると思います。選択肢のすべての正誤が素早く判断できる、無双状態の感覚です。
実際、私は全く対策をせずに受験しましたが、21点でした。ただ、期待収益率などのファイナンス系の問題は簿記の範囲ではないので、全く分からなかったのを記憶しています。
2.二次試験の事例Ⅳ
NPVやCVPの難問扱いとなる問題は、中小企業診断士試験の方が、日商簿記1級よりも難しいです。
10年ほど前までは、日商簿記1級でも、取り替え投資、リース投資等の難しいNPVの問題が出題されていましたが、どうしても条件設定に問題文が長くなることや、NPVの問題は確実に計算を積み上げる必要があり、最初の段階で計算ミスをすると、すべての問題を間違うリスクがあることから、基本問題程度の出題になっています。
そのほか、事例Ⅳでは、CF、オプション取引、為替取引などが出題されうるのですが、CFを除いて日商簿記の範囲ではないので、1級を取得している人でも、1次試験ほどアドバンテージは無いと思います。
3.事例Ⅳの分析と対応
上記のように、過去問を確認すると、事例Ⅳの一部では、日商簿記1級の原価計算よりも難しい問題が出題されています。
ただ、私は、試験全体のレベルとしては、日商簿記1級の方が、中小企業診断士よりも難しいと思っています。
つまり、
日商簿記1級>中小企業診断
であれば、おそらく、中小企業診断士試験において、日商簿記1級よりも難しい問題が出題されたとしても、殆どの人は解けないと、確信していました。
私は、中小企業診断士の二次試験は相対評価であると考えていますが、計算問題は必ず答えがあるので、相対評価であったとしても、正答であれば満点加算され100点に近い人がでることもあり得ます。
特に、公認会計士等の会計系の超難関資格を持っている方であれば、事例Ⅳの得点が伸びることで、全体の点数を大きく押し上げる要素になり、二次試験がかなり有利になります。
その為、出題者の意図としては、難易度が高く、かつ、計算量が多い問題を1問は盛り込み、点数が突出して高い人が出にくくするため、出題されている。
と理解し、難問は相手にしてにせず、完答よりも、正確性を重視して、出題された問題の8割ぐらいしか解答を作りませんでした。(厳密に言えば、ダブルチェックをしながら解いたので、時間が足らなかったです。)
4.1級取得者はどれだけ優位なのか
結論としては、一次試験の優位性は非常に高いです。テキストの購入不要、勉強不要です。また、財務会計の問題をみた個人的な感想ですが、中小企業診断士の財務会計を勉強しただけでは、十分に企業会計を理解することは難しいと思います。
二次試験については、日商簿記1級の原価計算では、NPV、CVP、原価計算、差額原価収益分析、事業部制の意思決定など幅広く論点をカバーしているので、その面ではどんな問題にもある程度対応でることから、安定感は高いといえます。
但し、高得点を取れるかというと、NPVの難易度が高い問題は正答が難しいこと、経営分析など計算外の要素も必要なことから、一次試験ほど優位性が高いとは思いません。
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