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KADOKAWAが発刊中止を決めた「IRREVERSIBLE DAMAGE」(取り戻すことのできない痛手ー私たちの娘を惹き寄せるトランスジェンターの流行」)を読んで

● 議論の理由
 日本ではKADOKAWAが、市民団体からの反発で、発刊を取りやめた同書。
 
米国でも、発刊にあわせて、猛反発があったことを、作者は序章で記している。

 「この本を販売してはならない。製本の直前
  になって、出版社には、そんな手紙が多く
  寄せられた。

        曰く、

        多くのトランスジェンダーの子供たちは、
  家族に認められず、肯定されず、

       そのため、高い確率で、うつ病や中毒、そして
       自殺に追いやられている、ということだった」

 以前、筆者がLGBT法に反対していることを 
知った米国の知人が、同じような理屈で、
筆者を非難をしたことがあった。

それでも、彼の国では発刊されて、日本では見合わされた。

同書をBook of the yearに選んだ英誌エコノミストは、選考理由を、以下のように説明している

「明らかに、議論を呼ぶことになるだろうが、敵意は全くない一冊だ」

議論が巻き起こることを回避した日本と、議論は巻き起こるだろうが、それでも、公平な視点を失わなかった彼の国。

日本にとって、国情の違いということだけでは収まりきらない禍根を残したと思う。

●トランスジェンダーの特徴

 果たして、トランスジェンダーとは、従来の同性愛者とは、一体、何が違う のだろうか?

ウオールストリートジャーナルの記者でもある作者のABIGAIL SHRIERは、
以下のように本書で記している。

They want to be seen as "queer" , not "cismen". 

(トランスジェンダーを選ぶ子供たちは、正真正銘の男性(cismen)にみられたいわけではない。
風変わりに(queer)に思われたいのだ。)

そして、トランスジェンダーを選ぶ子供の相談にのっている専門家Sasha Ayad の次の言葉が、その特徴を知る上で、本質を突いている。

A common response that I got from female client is something these lines;
"I don't know that I want to be a boy . I just know I don't want to be a girl . 

 (相談を受ける女性からの反応は、一様にして、次のような感じね。
 「男の子になりたいのかどうかわからない。だけど、女の子はいや」)

●選択の理由

従来の女子がトランスジェンダーを選ぶパターンには、2通りある
そうだ。

First, the clear majority (65 percent ) of the adolscent girls who had discovered transgendet identity in adolescence -"out of the blue" -
had done so after a period of prolonged social media immersion. 

Second, the prevalance of transgender identification within some of the girls' friend groups was more than seventy percent rate.
Why ?

(ひとつめは、トランスジェンダーの青年女性のうち、多数派(65パーセント)は、 SNSに一定期間を超えて没頭し、青年期に、ある日、突然(out of the blue )そうだと気がつくパターンだ。

ふたつめは、女性の友人グループで、自らをトランスジェンダーだと自認する女性が増加したからという理由が、70パーセントを超えている。

なぜなのだろう?)

作者の疑問に対して、トランスジェンダーの研究を進めているLisa Littman 女史は、当初、トランスジェンダーが社会的に容認されたことが、急激な増加の背景と考えていた。

しかし、それでは、友人間でのトランスジェンダーの急激な増加を説明できない。そこで、Littman女史は、それまで見過ごされいた、一つの仮説に行きついた。

Peer contagion(仲間うちの伝染)

そこで、Littman女史は、この伝染を、ROGD(rapid -onset gender dysphoria 、性別違和感の急激な始まり)と名付けた。

作者は、Littman女史とは別の表現として、少女たちの間で流行るトランスジェンダーはCraze(流行現象)だと評している。

”Craze" is a technical term in sociology , not a pejorative , and that is how I use it here. ( Dr. Littman never  does.). It applies to Hula Hoops and Pokemonand all sorts of cultural fads. 

(Craze は、社会学の専門用語で、蔑視用語ではないので、使いたい。(Littman 女史は使っていないが)。 それは、フラフープやポケモンなどあらゆる文化的ブーム(cultural fads)に適応される)

●支持者からの猛烈な攻撃
 
 その後、Littman女史は、医師に対して、トランスジェンダーかどうかを悩む女の子に、不必要な薬や取り返しのつかない手術という手段を講じるのでなく、

  性別に限らず、彼女たちの悩みに一体どんな問題があるのか知ることが大切だと呼びかけた。

 Littman女史の主張を、「よくぞ言ってくれた」と賞賛する人々が一方で、トランスジェンダーを支援する団体が、彼女の主張を激しく攻撃し始める。

 They claimed that Littman's paper , accusing her of anti-trans bigotry .
    They claimed that D. Littman had deliberately solicited parent report from  conservative, anti-trans parent groups. 

 (トランスジェンダーを支援する団体は、女史の
 主張は、反トランスジェンダーの偏見であると
 非難した。

 さらに、当該団体は、女史が意図的に、保守派や反トランスジェンダーの親の集団から、parent report (親が子供たちが適切な教育を受けられるうに提出する報告書)を入手したと主張した)

しかし、実際のところは、
 
 In fact, 85 percent of the parents self - identified as supporting LGBT rights.
((Parent reportによると)85パーセントの親は、LGBTの権利を支持すると自認していた)

にもかかわらず、論文を掲載したBrown Universityは、活動家たちの圧力に負け、女史の論文を撤回し、謝罪までした。

さらに、活動家たちは、女史の職場に詰め寄り、結局、失職に追い込むのである。  
 
●トランスジェンダーを支持する人たち

 作者によると、トランスジェンダーの流行に浮かれる女子たちは、中の上の白人層の家庭出身が多いそうだ。

作者は、そのことについて、以下のように理解している。
 
 With the help of battalions of therapist , the upper -middle class has  made a habit of extirpating anxiety , depression, and even the occasionaldisappointment whereever they find them. 

   (中の上の生活をする家庭は、治療家の力を借りて、不安や落ち込み、しばしの失望さえも、根絶しようとするのだ)

 そこで思う。

 誰にでもある青年期の葛藤を、当該の女子たちには、特権として映らないのだろうか。

 作者は、今の時代の10代の傾向として、以下のように仮定している。

  Perhaps we've trained adolescents to regard happiness as a natural and   constantly accessible state .

   Perhaps they' ve come to believe momentary 
   sadness amount to a crisis - teenage doldrums a catastrophe to rectify rather than a phase to ignore. 

  (おそらく、私たちは、青年たちを、幸せは、当たり前にあり、そして、常に掴める状態なんだと捉えるようにしつけているのだろう。

そのため、 青年たちは、一瞬の悲しみを危機と信じ、
10代の憂鬱を、放っておくべき通過点というよりも、むしろ、正すべき災難と捉えているのだろう)

そうした「完璧主義」に襲われている女の子たちを、医師や、学校は”背中から押す”。

性自認に悩む自分の娘Maddieをセラピストに診せたとき、状況の異変に気がついた母親Katherine の証言。

 What I found out was that this so-called therapy was really putting her to  the next step.

And I actually finally eavesdropped on a conversation    [between Maddie and the therapist ] because I didn't see that there are  any exploration of feelings or how this came to be. 
     
  Rather , it was , okay, what is your next plan ?  And my daughter would       be pushing harder. 
 
  (私が気づいたのは 、いわゆるセラピストが、娘を次の段階に進めようとしているということなのよ。

 (性自認に悩む)感情を探ったり、その原因を突き止めてくれているのかどうか確認しようと思って、Maddieとセラピストの会話に耳をそばだてたの。

  すると、セラピストは、 「じゃ、次はどうしよう?」と言って、彼女の背中をさらに強く押しているようだったわ」)

さらに、学校も、トランスジェンダー教育を意識的に推し進めている。

子供たちの性自認についての指導を促すPositive Prevention Plusなるカリキュラムでは、教師に対して、以下のように生徒に指導するように指示している。  

  "Ask students to stand up , turn around twice , and sit down again. 
        Then say, 'I want each of you to imagine that you are a diffrent gender.'"
 
        If the students fail to engage, the teacher should press them: Ask     'What would be different in your life if you were diffrent gender ?'
       
         List student response on the board … Then ask , 'How would you feel   to be another gender ? What would be fun about being another    gender ?

        What things in your life would not change if you are another  gender ?' 

   (「生徒に起立するように言って、2度回らせて
   着席させなさい。
  そして、「みんな、違う性別だと想像してみて」
 と呼びかけてなさい。
  
        もしも、真剣に取り組んでいない生徒がいたら、
  こう言って、強く呼びかけなさい。
  
    「もしも、あなたが違う性別だったら、あなたの人生
  はどう違ったと思う?」
  
         そして、生徒の反応を書板に書いて、尋ねなさい。
  
 「違う性別だったらどう思う?
  違う性別だったら、どんな楽しいことがあると
  思う? 
  もしも違う性別だったら今と変わらないことは
   ある?」

 これでは、教育というよりも、明らかな洗脳だ。
 
そして、医療では、行き過ぎた肯定的診療
(Affirmative care) 。

 It surparsses sympathy leaps straight to demanding that mental health  professionals adopt their patients' belief of being in the " wrong body". 

    Affirmative therapy comples therapists to endorse a falsehood : not that  a teenager girl feels more comfortable presenting as a boy - but that she actually is a boy. 

  (肯定的診療(Affirmative care )は、共感を飛び越えて、心療医師は、もしも患者が間違った身体(wrong body)を持っているという認識を持っているならば、それを採用することを求めている。

さらに、肯定的診療は、セラピストに、欺瞞(10代の女の子は、男の子のように振る舞うことで、心地よいのではなく、実際に男の子なんだ)に賛同するように促している。)

 教育現場では、「相手の立場に立って」という視点が悪用され、医療の世界においては、「患者目線」という視点が悪用されている。

 そして、その結果として、親が気がつかないまま、追い込まれていくのは子供たちである。

●薬漬け、そして取り返しのつかない傷

   本書を通して、日本人が、絶対に避けなければならないと認識したのは、
 薬の服用と、そして、身体にメスを入れることだ。

 薬の服用に関しては、例えば、成長を止める薬(puberty block)。
 本書によると、医師は、子供たちの早熟を病気をみなして、   成長を止める薬を処方し、薬が効いている間に、診療を行うと述べているそうだ。

 しかし、その結果として、突然自分はトランスジェンダーと自認した娘を持つBrieの告白。

 "You know, stopping puberty is going to stop her brain development."
 (いいかい?成長を止めるということはだな、脳の発達を止めるということなんだよ)

 さらに、胸の切除や、性器の接合手術と自分の身体を痛めつける子供たちもいることに唖然とする。

 医師Olson - Kennedy の見解。

  If you want breasts at later point in yout life, you can go and get them.
    (もしも今後、胸がまた欲しくなったら、着けたらいいじゃないか)

●憂い、そした立ち上がる人たち

 勿論、上述の胸を切除する手術について、反対している医師もいる。

 例えば、手術自体に異を唱えるLeppert医師は、以下のよう話している。

  ”There is no other cosmetic operation where it is considered morally acceptable to destroy a human function . None." he told me. 
         'There is no cosmetic operation that I could propose in front of a room full room of my colleagues where I could say

        ,'Hey , Listen, I 'm going to  improve this guy's nose but take away his ability to smell.' Or,' I' m going to improve the apprearance of this boy's
   ears but he's going to be deaf." 

          (「人間の機能を破壊すること整形手術なんて、
    道義的にあり得ないよ」彼は私にそう話した。
    「大勢の同僚の前で、「鼻を治療するけど、
     匂いがわからようになる」
     とか「この男の子の耳を治療するけど、
     聞こえなくなるよ」 とか語ることなんて、
     あり得ないよ」

そのあり得ないことが、現在、トランスジェンダーの世界で行われている。

本書では、一時の熱で道を踏み誤った女の子たちこう呼びかけている。

The regret (後悔)という章で、

If you believe you've made a mistake by transitioning , the best time to turn back is now.

The further you travel toward that impossible horizon , the harder it is to retrace you steps and find the person you might wish to be once more.Then, again, if anyone excels ay reinvention , it's you. 

(もしもあなたが、性転換手術が間違いだと思ったなら、引き返すのは、今しかない。 

  何もない地平線の彼方に向かえば向かうほど、引き返すことは難しくなるし、あなたがもう一回なりたい思う自分にはなることが難しくなる。 

 あなたを甦らせるのは、あなたしかいない)

そして、最後に、一番大切な人たちとつながることを促している。

May be they'll never understand you. May be you know the life you want , and  may be you're already leading it.  Then, you have nothing to lose. 
How about giving them a call ?

(あの人たちは、あなたのことを理解してくれないかもしれない。
 あるいは、あなたはもう歩むべきを心得て、一歩を踏み出しているかもしれない。

 もしそうならば、失うものなんてないじゃないか。
 連絡してみたら、どうだろう?)

●本書を読んだ感想

 三島由紀夫著の『仮面の告白』の中で、主人公が、
 以下のように吐露する場面がある。
 
「ぐるりのひとびとは、しじゅう、自分が幸福なのだろうか。
  これでも陽気なのか、という疑問になやみつづけている。

  疑問という事実がもっともたしかなものであるかの
  ように、これが幸福の、正当のあり方だ」

 先述したが、米国でトランスジェンダーを自認する若者たちは、心の葛藤を病いと捉える。

  If you ' re not supported in your trans identiy , you' ll probably kill yourself. 
   
 (もしも、あなたが、トランスジェンダーを自認して、それを支持してもらっていなければ、自死を選ぶだろう)

 本書で、親が一番怖がるのは、トランスジェンダーを選んだ子供たちを認めなければ、子供たちが迷った末に、自ら命を絶つのではないかと
 いうことだ。

 悩みを一過性のものと捉えられず、何か、病気めいたものとして捉え、その原因として、女性である、男性であるという点に原因を結びつけるのは、当人や親が、幸福感に満たされたと感じることが、ないからだと言えるのかもしれない。

 少なくとも、自らを愛せなければ、幸福感を覚えることはないだろう。

 本書を通して、トランスジェンダーの社会的問題だけではなく、人間の幸福を、再度、考える機会となった。

●日本への影響

 本書を読み進めるに連れて、自我と原罪意識の強い西洋人ならば、性別を替えるために、自らの身体に傷をつけることを厭わないのだろう。

 一方で、かつて律令制度を取り入れても、纏足を取り入れなかった日本人の審美眼を考えると、無用で危険な整形手術が蔓延るとは思えない。

 ただ、警戒すべきは、男性と女性の結婚・出産という、イザナギノミコト とイザナミノミコトの頃から続く、子孫繁栄の発想が否定されるようなことが、LGBT法に乗じて、行われるかもしれない。、

 現に、某国営放送では、男と男が結婚しても良いじゃないか、という番組を、年端もいかない子供に向けて放送している。

 公立学校向けに、LGBTQに理解を促すと称して、怪しげな、性教育を子供たちに教えようとする動きもある。

 本当に危険な状態なのだが、本書の邦訳が出なかったことは、非常に残念だ。

 どうか、他社が手を挙げること期待したい。
 
   

  
 



 










  


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