イクメンの悲哀

 最初の育休中、公園デビューに失敗していた私に、親切な女性が声をかけてくださり、ようやくママ友の輪に入れた。ほっとしたのも束の間。ストレスだったのは、結論がないまま延々と繰り返される、ネバーエンディングストーリー。

 職場では、結論を求めて言葉のやり取りをするから、あまり男性、女性という性差を感じることはないが、地域の女性は別に誰も結論を出そうなんて思わない。皆さん、親身になって人の話を聞いているふりをしているが、実はあまり聞いていない。

 あれっ、さっき話がここまできたはずなのに、おかしいな。いつの間にか元に戻っているぞ。「メビウスの輪」みたいにぐるぐると堂々巡り。くらくらとめまいがした。

 育休当初、朝起きて晴れてると、とても憂鬱だった。あぁ、今日も公園に行かなくちゃいけないのか…。でも、行かざるをえない。なぜなら、急に行かなくなったら、絶対に悪口を言われるのが目に見えているからだ。

 ある奥さんの言葉にはカチンときた。「最近、イクメンが増えてるって聞きますけど、赤ちゃんにとっては、お父さんと一緒にいるよりも、お母さんと一緒にいる方が幸せじゃないかしら。」

 あからさまに、あなたの膝の上の子どもはかわいそうとディスられた私だが、こういう相手に言い返したところで、平行線だろうなと思って黙っていると、それを同意と受け取ったらしく、奥さんはなおも続ける。

 私が抱っこしていた生後8ケ月の息子に向かって、「ねぇ、ボク。そうだよねぇ?」次の瞬間、息子は不機嫌な顔でプイッと横を向いた。赤ん坊でも親への悪口はわかるんだと感動した。よしよしと頭をなでて、息子との絆を強く感じた。

 6年が経ったある日。小1になった息子と先日、お風呂に入っていた時に、「おまえはもう覚えてないかもしれないが、あの時、お父さんはほんとうにうれしかったんだぞ…」と私がしみじみ、ほのぼのと語っていると、息子がポツリ。「でも、ぼくママと一緒にいる方が幸せだよ!」…あぁ息子よ、あの時の絆はいったいどこへいったのだ。

 そして、さらに6年が経ち、息子にその話をすると、「やっぱ今は、気の合った友達と一緒にいる時間がいちばんだよ!」

 子どもがぐんぐん成長していくのは、親としてうれしくもあり、一抹のさみしさを伴うものです。だからこそ、まっすぐに親を見つめてくれる幼少期こそ、父親も子どもと一緒に過ごす時間を大切にすべきと考えます。男性育休はそのチャンスなのです。

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