なんちゃって『イクメン』
イクメンという言葉を私が思いついて、使い始めたのは、2005年と早い。2004年に厚生労働省が公表した「少子化に関する意識調査」で、結婚相手に求める条件をみると、男女差が大きい項目がいくつかあった。まず、容貌容姿を重視する割合は、若年男性27%、若年女性7%。一方、家事・育児に対する能力姿勢は、若年男性25%よりも若年女性30%が上回る。イケメンよりもイクメンがもてる、イケメンにはなれないがイクメンにはなれる、と2006年頃から講演会等で使っていたところ、あっという間に流行した。2010年には流行語大賞までとった。
あれから十年。すっかり言葉としては社会に定着したものの、男性の育休取得率はたいして上がっていない。それどころか、数日から数週間の「なんちゃって育休派」と半年以上、取得する「本格育休派」に二極化している。「わずか数日、1-2週間休んだぐらいで、イクメンなんてエラそうな顔をしないでよ!」と憤慨する女性の声も聞こえてきそうだ。
「なんちゃって派」は、他の男性と比べて自らのイクメンぶりを自慢する傾向にある。「本格派」は逆だ。妻と自分を比べたら、自分は授乳できないし・・・多くのことを妻がやっているから、自分のやっていることなんて大したことないと妻の前にこうべを垂れる傾向にある。
なんちゃってイクメンが増えると、「大したことやってないのに何よ」と妻のストレスが高まる可能性がある。そして、もしかしたら自分の子どもだけを可愛がる「モンスターペアレンツ」の温床になるだけかもしれない、と私は危惧している。
名付け親(?)として今の気持ちは、イクメンなんて早く死語になってほしい。男性が子育てすること自体が普通になり、逆に「ワクメン(仕事中毒な男性)の方が珍しい」という時代に早くなってほしいと思う。
子育てをきっかけに地域につながり、自分の子どもと同じように地域の子どもたちのことに目をかけて可愛がる「イキメン」が増えてほしいと心から願っている。