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人生何が起こるかわからないよ③夢のシティカレッジで始まった苦悩

シティカレッジでの新学期が始まりました。古いけどこんな素敵なキャンパスです。学部の入口の前の芝生に、大きなテーブルとベンチがあり、授業の合間にそこに集まっては、あーでもないこーでもないとハングアウトするのがとても楽しかったな。ちなみにクラスメートに、かなり辛口でだめだしされながらも、いろいろ助けてくれる、優しい日本人のベーシストの男の子がいて、偶然今年の春にセッションで十何年ぶりに再会しびっくり。今も一緒に演奏してまたこれは後日別の機会に書く機会があれば。

とにかく私には時間がないとアグレッシブだったので、空き時間があると単位いらないから聴講させてくださいといろいろな先生にお願いして、興味のある授業に特別に参加させていただいてました。

一応日本の大学の単位をトランスファーという形で編入したので、外国人留学生がまず取らないといけない、ESLという英語のコースを取るのは免れ、いきなり専門の音楽の授業を受けれるようになったものの、今考えれば、あの時英語をもっとちゃんと勉強してたら、今もっと英語が上手になっていただろうな~。後悔先に立たず。

最初の音楽を聴いて感想を書くテスト、赤ペンで一言「私は英語の先生ではない」と回答用紙に手厳しく教授に書かれて、ひー。さすがにその先生に提出する次の宿題の感想文、提出前にクラスメートのアメリカ人の男の子に、お願い文法だけでいいから直して!とお願いしたら、彼も私のひどい英語に頭をひねりながら文法どころではなく、君はこういうことをいいたいんだよね?と確認しながらほぼ全文書き直してくれたり。

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シーラジョーダン先生というビバップの時代を生きてきたレジェンドシンガーのワークショップが週に1回だけあって、それに参加するには全学年のシンガーの中からオーディションで10名の中に入る必要がありました。あのセメスターは多分シンガーが30名以上いたんじゃないかな?

オーディションの時に、シーラ先生からダーリン、あなたは私のところに来る前にもっとやることがあると言われ、見事に落ちてしまいがっくり。毎週後ろで聴講しながらも先生に見てもらえるシンガーの先輩たちが本当にうらやましかったな。ジャズピアノの先生でワークショップの伴奏を担当していたピアノのレイギャロン先生は、なぜか私のことを面白がってくれて、次は君の番だよとなぐさめてくれて。

そんなこともあり、学校だけの世界ではだめだとにかく歌いに行こうと、積極的に外の世界にも飛び出すようになりました。

実はニューヨークに来たもう一つの理由、ブルーノート東京のショウでジャズボーカルの楽しさを見せつけて下さった、マリオンカウィングス先生に習いたいということでした。

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ただ最初は英語もままならないし、こんな状態でお会いするのも恥ずかしく、実際に連絡する勇気が出るまで1か月ほど時間がかかりました。私は本当にあなたのファンでワークショップに参加させて下さいと言っても、最初は薄気味悪がられ半疑いだったマリオン先生も(笑)そのうち私の真剣さをわかってくださって、ジャズシンガーとしてのあり方を一から教えて下さったのでした。

またブルックリンのアップオーバージャズカフェというところでサックスのビンセントハーリングさんがセッションリーダーで月曜の夜のジャムセッションをやっているということで、一度聞きに行ってみたところ、とにかくそこで繰り広げられいるのは、ものすごくヒートアップした演奏。これは聞き逃がせないと、これは毎週行かずにはいられない状態に。

ハウスバンドは、ベースのリッチーグッズさん、ドラムのEJストリックランドさん、ピアノはヘレンサンさん、アンソニーウォンジーさんという、今や超売れっ子のメンバーで、毎週かなり白熱して面白いセッションが繰り広げられていました。まだニュースクールの学生だったロバートグラスパーさんや、今覚えているだけでもピアノのシダーウォルトンさんやブルースバースさん、さまざまな大御所ミュージシャンもよく遊びに来られ若いミュージシャンにアドバイス下さったりしてました。

ある日、ビンセントさんが不在の時、サブのリーダーがセッションを仕切ることになり若いトランペット奏者がリーダー。彼とは面識はなかったけれど、私はちゃんとサインアップシートに早々と名前を書き込んだのに、いつまでもステージに上げてくれなかったので、私は早くにサインアップしたのに、なんで呼んでくれないの?と抗議したところ、若いトランペットの彼は、なんだこのきちがい女!みたいに言い捨てたのです。

は?とびっくりして言葉を失っていたら、お店のバーテンダーの女の人をはじめ、周りにいたお客さんやミュージシャンが、彼女は毎週毎週歌いにきてるちゃんとしたミュージシャンだ、お酒だって決して男の人にたかったりしないし、自分のお酒は自分で買うような子だ、お前が間違えたんだろう?彼女のこと知らないくせにそんなひどいこと言うな!と、みんなで異口同音、わーっと一斉にかばってくださったのです!

一瞬、何が起こったかわからずびっくり。実際に声かけずとも、実は皆さん私のことを暖かい目でちゃんと見守っていて下さっていたんだ!心の底からありがたかった…。

その彼もさすがにびっくりして、ちっと舌打ちしながら気まずくお店を出て行きました。

きちがい女事件、すっかり忘れていたけど、今思い出してもありがたすぎてうるうるくるね。

つづく

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