六月十一日・十二日・十三日@エデ・ウィーン

六月十一日@エデ

先週の日曜日(六月五日)にはデュッセルドルフのアニメフェスティバルDoKomiに行ってきた。ネットの友達十人ぐらいと会う。当初数人だけと会うつもりだったが、ドイツで六月から八月までの期間限定で9ユーロチケットというのが販売され、ICEのような特急以外のローカル電車(しかも地下鉄、トラム、バス含む)が乗り放題になったため、急遽遊びに来た人が何人かいた模様。DoKomiは何とドイツ最大の漫画・アニメコンベンションらしく、コロナが収まったこともあってすごくたくさんの人が来ていた。

こういう様子を見ると、ゲームやアニメが海外で作り出している利益ってすごい割りには、あんまり国内で認知されていないように思う。

ウィーンに帰る前に恋人の家に寄った(さらに西に行ってるのでわざわざ行ったのであるが)。ウィーンはいきなり夏が来たように暑くなったが、オランダはまだ春の空気で若干肌寒かった。

いつもとうもろこし畑になるらしいがなぜか今年はこの花らしい。とても綺麗。菜の花みたいだけど菜の花ではないだろうし…Rapsölのパッケージの花に似てるからそれかなぁと思う。日本語ではセイヨウアブラナらしい。日本の菜の花は同じアブラナ科アブラナ属だけどカラシナらしいですね。

四月に学振の申請書に載せるために論文一本を提出し、そして五月に学振の申請書を書き上げた疲労が全然取れず、そのまま現所属の指導教員やイギリスの先生との面談を重ね、その上年明けに「六月ごろになんか発表しよう!」と意識が高かった過去の自分が意気込んで予約した研究発表の番が回ってきて、苦し紛れにイギリスでやった研究の一部を話して今である。今風邪を引いたら困るということでそれだけは気を付けていたものの、数年ぶりに口内炎ができて辛い。

何かが終わると何かが始まるというか、ほっと一息をつけるかと思いきや、年明けに出した別の論文の査読が返ってきたのと、初めて他の論文の査読者になってくれと知り合いの人から直々にお願いされて、良い機会だから引き受けることにした。誰にも初めてがあるとはいえ、まだ博士号も取得してないのに査読していいのだろうかと思ったが、みんなやってるんだろうなきっと、私が知らないだけで。

六月十二日@エデ

とにかく五月が忙しく全然疲れが取れない。正直休んでる場合ではないと思ったが、今週は思い切って仕事量をめちゃくちゃ減らした。おかげで口内炎は直ったし、精神的にも回復したと思う。この一週間はただだらだら、何をしていたのかわからない(最低限、学会の概要の修正期限があったので、それだけを提出し終えた)。なんだかんだ付き合い始めてから4、5回ぐらいオランダに来ているが、田舎で恋人とのんびり過ごした時間は一生忘れないと思う。自分の人生どうなるかわからないが、こういうなんてことない風景を歳をとってから何回も何回も思い出すんだろうなと思う。昔こんなこと考えたこともなかったが、私はもうすぐ死ぬのだろうか?

昨日から今日にかけてル・マン24時間耐久レース(Lemans24h)とF1があったので、テレビでずっとそれをみる。全然車には興味がないのだが、ル・マンの方ではトヨタの車がぶっちぎりで優勝していた。日本の車はすごいな〜しかし過去には悲しい悲劇もあったらしく、知り合いがこの動画を教えてくれた(悲しい)。

早めの夜ご飯にフィッシュアンドチップスを食べて、夜行列車に乗るためにユトレヒトに向かう(ちなみにユトレヒト(Utrecht)ってオランダ語の発音と全然違うから日本語読みをしても通じない)。

六月十三日@ウィーン

夜行列車のNightjetでユトレヒトからウィーンに帰ってくる。30分ぐらいの遅れだったので、いつもより遅れが少ない方だが、十時から始まる学部の全体ミーティングには間に合わず、スマホからズームの会議に参加する(便利になったなぁ)。対面の生活が戻ったらズームの選択肢はどんどん消えていくのかも知れないが、できれば継続してくれたらいいなとも思う(まぁもちろん基本的には大学にいるので対面の方がありがたいのだが)。ミーティングの議題は、学部で二年ぶりに対面で行われる博士学生の研究発表会と博士号取得の要件について、そして大学の税金の話。

私の大学は二年前に政治的理由のため、ハンガリーから国外追放されたので、オーストリアのウィーンに引っ越してきたのだが、国を跨ぐと当たり前だがいろんなルールが異なる。その一つで大学も学生も懸念していたのが、税金の問題で、ハンガリーでは無課税だった博士学生の奨学金の扱いがオーストリアではどうも課税の対象になるというかもしれないということが指摘されていた。

しかし大学は(おそらく)なるべく税金を払いたくないという意向もあり、オーストリアの税金の専門家に相談しながら、なんだかんだ解釈をこねくり回して、大学の公式な情報として「博士課程の奨学金は給与じゃないから課税されない(よって税金の申告は無用)」ということを、一回や二回ではなく、何回も何回もこの二年間の間に言い続けてきた。

それが突然先週になって大学から、「もしかしたら課税の対象かもしれないから税金の申告をした方がいいかもしれない。締め切りは六月末だからお願いします」というようなふざけたメールが回ってきて、大学中が混乱と怒りに包まれ、大学全体の議論の場や博士学生だけのミーティングが急遽先週行われた。ほとんどの情報が不確定で、正直何をどうしたらいいのかわからない状態である。

ここに書くにはあまりにも情報が多すぎるし自分自身も混乱しているのでまた別の記事にするとして、まぁこんなこともあるんだなぁと何だかしみじみ考えている自分もいる。このまま行ったらうちの大学の学生全員が脱税者扱いになるところであった。

先週金曜日に説明に来た税金の専門家の話を聞くところによると、そもそも奨学金の額が少ないので課税額はないかあっても少しで問題なさそうなのだが、税金だけではなくて社会保障費も払わないといけない。税金が掛からなくても社会保障費だけで私たちのような貧乏学生でも3000ユーロ(年)払わないといけないそうだ。

21世紀にもなってEU圏内の大学が政治的理由で国外追放され、その結果さらに脱税の疑惑までつくところだった(というかついてるのかもしれない)。何なんだうちの大学は。日本では無名の大学だし、何でそんなところに行ったのかと思われるかもしれないが、しかしうちの学部には分野で有名な先生がたくさん所属しているので、この大学院でPhDを取得することに関して何の不満もない。しかしこの五年間で予期せぬ政治的議論に巻き込まれて、予想もしてなかったアカデミアの一面を学べたと思う。