こわいということ
今住んでいるところには近くに湖があり、季節によっては毎朝のように湖から霧が立ち上ってきます。その霧が向こうに見える山を隠し、だんだんわが家の方に流れてきて、みるみるうちに家も庭も霧の中。
霧はドキドキします。見えるはずのものが見えない、見えないというより、隠された感じ。霧の中に何かひそんでいるように感じる。
そんな霧の日に思い出すのが「霧の中のはりねずみ」という絵本。はりねずみがともだちのこぐまくんの家へ遊びに行く途中、霧の中で、少し怖い不思議な思いをする話です。薄暗い森の空気を感じる絵本です。
私ははりねずみくんのこわい気持ちがよくわかる。はりねずみくんが体験したような思いは、子どもの頃に確かに自分も感じたことがあって、それは自分だけの大切なものとして心の中にあることを思い出させてくれます。
みなさん多かれ少なかれ、そういった気持ちを子どもの頃に感じたことがあるのではないでしょうか。だいたい一人の時に。
先日娘が「トンビがね、随分低いところをぐるぐるしているなあと思っていたら、目の前に降り立ったんだよ!道にだよ!」と興奮して報告してくれました。とてもこわかったそうです。まさか自分の目の前に降りてくるなんて。トンビは大きいですから。
下の娘は一人で廊下や別の部屋に行くことができません。トイレの流れる音も、吸い込まれそうでこわいと言います。流す時いつも私が行きます。
これも最近の話ですが、私と下の娘が近所の原っぱに座っていた時、とても良いお天気で静かだったのですが、急に何かにおいがしました。犬のような、でも違う、獣のにおいとでも言うしかないにおい。そして、藪からガサガサっという音がしました。娘も私もこわくなってすぐその場を離れました。そのちょっと前に畑のブロッコリーが鹿にかじられたという話を近所の人から聞いていましたので、あれは多分鹿のにおいだったのかなあと思います。
こわいのは、目に見えなもの、得体の知れない何か、潜んでいるかも知れないもの、何か大きな存在への畏怖。自然への畏怖。
大人になるにつれて、闇雲にこわがることは減っていきますが、私は子どもの時にこういうこわいという気持ちを知ることはとても大事だと思っています。
「霧の中のはりねずみ」以外にも、子どもの頃に感じたちょっとこわい気持ちを思い出させてくれる絵本としては、「幽霊フェルピンのはなし」「こねこのピッチ」も我が家の絵本棚から見つけました。
霧の中のはりねずみの著者、S.G.ゴズロフの「ハリネズミくんと森のともだち」もいいです。こわいというのとちょっと違うけど、大事な何かを守ってくれている本だと思います。