#16 ボリビア・ラパスの街に見るアート&グラフィックデザイン
2022年2月8日 martes
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今日はランチの後、散歩をして寄ったオーガニックコスメのお店でかわいいパッケージを発見した。子どもが描いた、竹の歯ブラシの箱。この一角だけ異質な空気を放っていた。
その後、本屋さんでボリビアの薬草の本を購入。ボリビアで印刷される本は、コピー紙をまとめたような簡易なものも多い。この本も、カラーコピーを製本したような体裁。アンデスの穀物についてのリーフレットも併せて買ったので、少しずつ勉強しよう。
この本屋さんの近くにある文化施設 Espacio SimonⅠPatiño の入り口に木版画の展示の貼り紙があったので、ふらっと入ってみた。この施設は二年前にも、日本の古いアニメーション映画「桃太郎 海の神兵」を観に来たことがある。たまにこういった文化施設もあるので、やっぱり都会なラパス。広いギャラリースペースには展示紹介などもなく、ただ作品だけが淡々と並べられていた。
ぐるっとしてから展示室を出ると、建物のエントランスで感想ノートへの記入を求められた。そこはしっかりしてる。
在宅になり予定していた仕事も進められず、時間を持て余しているこの二週間。散歩や買い物へ出かけるのと料理するのがもっぱらの楽しみだが、今夜は、Centro Cultural de Españaという、スペイン文化のアート施設の主催する無料の映画会に行ってみた。コ・ワーキングスペースや図書室、ギャラリーなどがあり、都会ならでの環境だなー、と感じる。
以前、不意に施設の裏側にたどり着いた際、壁面のタイポグラフィに「おっ!」と注意を引かれ、その後この施設とわかった時は、すごく腑に落ちた。その空間だけは、ふだん街中で目にするビジュアルとは違う体裁でグラフィックが整えられているから。人を惹きつける際の違和感は、やっぱり効果大。
ボリビアのドキュメント映画「Tarija, tres cortes.」が観られるとおもい、足を運んだのだが、急遽上映作品が変わり、内容重めの映画を鑑賞することになった。(帰り道、気持ちズーン・・・となりながら歩く私。)2月から3月は人権をテーマにした映画(スペイン語圏のものが中心)が、いろいろと上映されるので、あと数回行ってみようとおもう。
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2022年2月10日 jueves
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今日の午後は、先日訪れた Centro Cultural de España で作業してみようと、PCをリュックに入れ出向いた。ギャラリーでの展示を一通り見てから
施設の利用方法について受付の男性に聞いたところ、どうやらすべての解放スペースは無料で使えるらしく、図書室の本は4冊まで15日間貸し出ししてくれるが、これにはID登録が必要だという(私のヒアリングがあっていれば)。二人までしか使えないコ・ワーキングスペースは、すでに利用者で埋まっていたので、図書室に案内してくれた。アート、デザイン系の本もあり、ボリビアのグラフィックデザインの本などパラパラ見てから作業に取りかかる。
ボリビアの国際ポスターデザイン展 BICeBé の2015年カタログ。
「お!」とおもって手に取った本は、ドイツへ留学したボリビア人デザイナーの卒業制作をまとめたものだった。
こういう雰囲気の中で仕事をするのが久々で、なんとなく変な感じがする。
今日は午後5時まで作業をして、施設を出た。と、一気にボリビアに戻ってきたー、という感覚。この落差はなんだ?!さっきまでの周りの空気、目にしていたビジュアル、と打って変わっての雑味感。
きっと、どっちに偏ってもダメで、多様な表現が選べる環境であることが、豊かである、ひとつのものさしのような気がした。
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2022年2月13日 domingo
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昨日は、午前中ボリビアの映画「Mi Socio 2.0」を観に行った。映画開始時刻には私含め3人しか観客はいなく、その後、数人入ったものの、全員で10人いたかな?というくらい。
午後にチャランゴの練習をする約束だったのがドタキャンされ、レッスンを受けられず。約束をすっぽかされることは多々あるので仕方ない、と思いつつ、それが続くとやっぱりイラっとする。少し気持ちを落ち着かせるため、アラシータの会場へ散歩しに。ワイワイしている人の波をぼーっと歩いていると、なんとなく楽しい気持ちになる。あるお店にいた、まだ1歳のかわいい女の子と少し遊んで、家に帰った。
今朝は、コロンビア人の同僚に朝ごはんを招待され、彼のパートナーも紹介してもらった。これが典型的なコロンビアの朝ごはんらしい。玉ねぎとトマトのスクランブルエッグに、とうもろこしの粉で作ったパンのようなもの。それをみて「お煎餅みたい!」というと彼が笑っていた。(彼は日本語がわかる。)
3人でそれぞれの国のこと、今まで行った国、行きたい国、言葉の違いや、音楽、映画の話などいろいろなことについておしゃべりし、お昼まで楽しく過ごした。二人とも落ち着いた感じの人柄でゆっくりと会話が楽しめるので、一緒にいて心地よい。かなりの近所(味噌汁が冷めない距離)ということもあり、また一緒にご飯しようね!次は、ボリビアの朝ごはんを一緒に、と彼女が言ってくれた。たのしみ。
仕事に関しては、状況が動かない時間を過ごすことの多かったこのところ、散歩しながら街中のグラフィックを集めてみた。
太陽の顔よ。
ラパスの街は至るところに壁画、グラフィティがある。
大きな作品が飾られている箇所も。
左にはチョリータらしき壁画。看板には名前だけでなく、少しでも多くの情報を詰め込みたい様子。青空の中に赤文字で配置されているのがかわいい。
「Mi Chola」というレストラン。看板ではなく、直接壁に描いている。
おもわず惹かれた値札。バランスがなんともかわいい。
手書き文字の方が印刷物よりもよかったり。
切り抜き文字。ケータイキャリアのカードを売っていることを示すもの。
お店が並ぶエリアは大体こんな感じで、テキストで埋め尽くされている。ちなみに、ここは散髪屋さん通り。走っているミニブスのフロントも切り抜き文字で埋め尽くされている。
ここは印刷屋さん、文具屋さんが並んでいる。
チラシが掲示されてる、その背景がいいなぁ、とおもったり。
ラパスのビール PACEÑA[パセーニャ]の広告。
これは「マスクをつけなさい」という意図の広告か。
ボリビアでは今週10日からカーニバルが始まっているので、最近は広場などでダンスの練習をしている姿もみられる。今日は、大学前の広場で練習に励む学生たちを見かけた。ボリビアの各地域それぞれのダンスがあり、これはMorenada[モレナダ]と呼ばれるアンデスの高地に由来する踊りの型。
このステップを見ると、ドリフのオープニングが頭によぎる。踊る姿は、みんなかっこいいのだけどね。
街中の広告物や「整えられた」デザインを見ていると、どうしても技術の拙さやアイデアのなさに目がいってしまう。市場の雑多なワクワク感やカーニバルのダンスに見る熱気やリズムには、気分も高揚するし魅力を感じるのだけど。。。
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ATSUKINO(アツキーノ)
2006年〜日本でグラフィックデザイナーとして働いた後、2013年に渡英。スコットランドの The Glasgow School of Art で修士号(Communcation Design: Graphic Design)を取得。帰国後はアートディレクター、キュレーターとしてデザインディレクションとともに現代アートの展示企画制作なども行う。海外での生活、旅を通じて得られる新たな表現や人との出会いが次の可能性につながると信じて動く、旅するデザイナーでありアーティスト。現在は南米のボリビア、ラパスにてJICAボランティア活動中。デザイン教育環境の改善にあたっている。
http://nakanoatsuko.com/
https://shadow-candle.com/