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#51 体感からしかはじまらないなって思ったボリビア(国内)出張
2025年2月19日 miércoles
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今朝、ボリビアのcorazón[コラソン](=心臓、心)と呼ばれる常春の気候が魅力的なコチャバンバ県10泊の出張を終え、ラパスに帰ってきた。寒い。眠い。
行き帰り共に、このところえげつなく遅延するボリビア国営の航空会社BOAを利用したが、驚きの定刻通り。(驚きの白さ!と言いたくなる衝動。)
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2月9日夜にコチャバンバへ入り、日本からの調査団に付き添って、障がい者関連事業に関して行政の取り組みを視察。JICA本部から全盲の女性がいらっしゃるということで、部分的な介助と補助的な通訳を頼まれたのだ。
JICAボリビア事務所の担当者より「アツコさんは普段から障がい者と接しているので慣れているでしょう」と、この仕事を依頼されたものの、全盲の方の介助は初めてだし、もうおひとかた兵庫県の自立生活センター代表の方(車椅子を利用されている)が来られる、というところに、ど素人の自分でいいのか?と思いながらも、いい経験になるので引き受けることにした。
訪問先もSEDEPOS(コチャバンバ県の福祉政策局)以下、行政管轄の施設、障害認定センターや県庁等々なので、SEDEGES(ラパス県の社会福祉局)に自分の進めているプロジェクトを認めてもらうのにうまく働けばよい、少なくとも政治的な枠組みとか組織の動きがどんなものか見れるはずだろう、と。
到着の翌日、ホテル内でのミーティングで、サンフアンから来られた通訳の女性(サンフアンは日本人移住者の入植地で日本の文化が今でも色濃く残っている)、日本からの調査団の方々と顔合わせ、打ち合わせをする。
私はまず、どういうサポートが必要か教えてもらうことに。
一緒に歩く時は、彼女が私の肘を持ち(肘を体の横につける)、私が少し先を行くことで方向がわかる。方向を知ることが大事だという。
幅が狭いところは肘を背中に回し、一列になって歩く。プラス、足元に障害(段差、穴、隙間など)があるときは言う。
座る時は、椅子の座面の高さ、背もたれの向き、テーブルとの距離など、彼女が行動するにあたって目安になる情報が何であるか、を教えてもらった。
またご飯を食べるときは、どこに何が置いてあるかを言って、彼女が選べるようにする、など。
「後は実際にやりながら慣れてってください!」と、明るく言われた。
毎日行動を共にする中で、やめてほしいことはストレートに言ってくれるおかげか、三日くらい経つとなかなか自然にサポートできるようになっていた。気がする。
「お、だいぶ慣れてきましたねーw。私が『そうじゃない。それやめて。』とか言ってないので、できてますよ。」と言われたので、合格点かな。
朝、部屋から出てきた彼女に
「〇〇さーん、おはようございまーす!」と、呼びかけながら近づき、
「あ、ナカノさん、おはようございますー」
右肘を彼女の左側に持っていき、
「今日もよろしくお願いします。じゃ、いきましょー!」から一日スタート。(彼女は右手で白杖を持つので、私は彼女の左側に立つのが基本体制)
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肌寒かった初日に反してその翌日、朝早くから陽が出ていて暑くなりそうだった。
部屋から出てきた彼女が薄いダウンを羽織っていたので
「今日は、今の時間から外明るいです。暑くなるかもですよ!」と声をかけ、「お、やばい、じゃあ上着置いていきます」と彼女。
なるほど、普段、視覚から判断していることめちゃくちゃあるなーと、その多さに気づく日々。
例えば、会議の時に複数人の人が出入りする場合。
今、この場所に何人の人がいて、今は誰が発言しているか、さっきまでいた人がいなくなっている、とか、状況が分かりづらい。なので、そういったことも言葉で伝える必要がある。
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あと、音で認識できると言っても、通常、私たちは「この人、今から喋ろうとしている」みたいなのも視覚で確認し、その心構えができている状態で話を聞いている、耳だけでなく目で動きを追いながら話を聞いているのだ。
彼女が、喋り出しの瞬間から1テンポ遅れるような反応で、会話についていっている様子から、それに気づく。
「あれ、いま誰がしゃべってる?」と聞かれることもあった。
同時に複数人が喋る状況は混乱するのかな、と思ったので、補足的に言った方がいいかな、ということも、メインの通訳さんの声に集中されているときは、あとで言うようにしたり。(この部分は私の観察からの推測です。)
コチャバンバ県庁でセミナーを開催した際、私は彼女のセミナー通訳を急遽!(汗)担当することに。
前日夜に全体の流れ打ち合わせだけを済ませ、「後は、その場の雰囲気で変えながらやるので」と言われ、さらに汗!!
来ている方にワークをしてもらうような双方向のセミナーだったので、周りの人の反応(手を上げているのが大体何人か、ワークを書き終えたかどうか、など)を彼女に伝えながら、通訳し、彼女がみんなのワークの様子を伺いに会場を回るので一緒に歩きながらその様子を伝えつつ、また個別に質問(通訳)したり、と。
おおお、これは忙しい・・・
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そして、見えている情報を言葉で詳細に形容するの、難しいな、と、シンプルにそう思った。
彼女は「見えていた経験」を持っているので(中途障害)、色も名前でそのまま伝えられるけども、これが生まれながらの場合は、どういう伝え方になるのだろう、、。
コチャバンバの旧市街にある障がい者が使いやすい街づくりモデルエリアに、音の出る信号と点字ブロックの歩道がある区画がある、と、初日にSEDEPOSで聞いたので、みんなで行ってみた。
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点字よりも、歩道ベースの六角形凸凹の方が認識されやすく、点字ではなくそちらの方に誘導されてしまうという致命的な欠陥。。。
ただ、普段、点字ブロックを意識していない私としては、「そういうふうに機能していたのか!!」と、初めて知ることばかり。
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『青です、渡ってください』『赤です、待ってください』と喋る信号は、信号機のそばでしか声が聞こえないが、これについては、
「こっちの方がいい。日本にある、音が大きいやつは、近所からの苦情で夜8時以降鳴らなくなったりして、でも夜も出歩くじゃん、その時は勘で渡る。」と話されていた。え?勘?!
ただ、すべて同じ男性の声なので方向がわからない、という問題。(この信号機が設置されているのは交差点。)そして余談だが、この声は市長の声らしい。。。とりあえず設置した!という感じか。
そんな感じで、10日間一緒に過ごさせてもらったおかげで、今まで気にもかけていなかった、見えない世界で暮らすことの一端に触れることができた。
彼女と一緒にスーパーへ買い物へ出かけたり、お土産を選んだり(ボリビアニータのペンダントトップを一緒に選んだ)、こんなふうに判断するのかーと、それは障害だけでなくもちろん彼女の判断基準があるのだけど、それを尊重して必要なサポートをする、ができればいいのね、と。
ずっと一緒だったバスのドライバーさん(ボリビア人)も、後半になると「この道にもスロープあるよ」とか、言うようになっていた。
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仲良くなっちゃえば、自然とその人がどうすれば心地よくいられるかを考えるようになる、ただそれだけのことだ。
ラパスの町を歩きながら「この道は目が見えないと危なすぎるなー」とか思いながら、もう私の右肘をつかむ人がいない寂しさを少し感じた。
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最後にボリビアの大食い県(グルメ県)と言われるコチャバンバのご飯を紹介しておきます。
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