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#13 ボリビアでの(自主的な)自粛生活でやること、いろいろ。
2022年1月20日 jueves
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身近なところでもコロナ感染をちらほらと聞くようになり、オフィスに出勤したい気持ちはあるが、念のため、自宅で仕事する日も設けたので、家で過ごす時間が増えつつある。
雨が降るかどうか気にしないで、洗濯物を干しながら部屋で作業できるのは家で仕事をする利点でもある。雨季の今、朝に雲ひとつない青空でも、昼にいきなり雹が降ったりするラパスなので、ほんとに天気が読めない。
(↓急な土砂降りの雨、雹に外を眺める同僚)
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ボリビアは1月末から新学期が始まる(らしい)ので、先週からその準備に忙しく、私の職場でもほぼ毎日なんらかの会議が行われている。なので、みんな出払ったオフィスに一人だけ残り、静かに作業する日が続いていた。そこにきてコロナ感染の全国的な拡大。急遽、オンラインの授業に切り替えたり、と、マネジメントが大変。
私は今のところ、自分の提案している活動の調整と、2月から始める連続のデザインワークショップ「APPLE」の準備に時間を費やしている。
「APPLE」はグラフィックデザイナー三木健氏が考案した「デザインとは何か?」をりんごを通じて学ぶ、「気づきに気づく」ワークショップのシリーズ。私はファシリテーターとして自分なりに解釈したこの「APPLE」をボリビアの学生に向けて構成し、秋まで週一回の授業として提供する。
実は、2020年にボリビアと日本をつなぎ、「APPLE」の遠隔授業を既におこなっており、WEBサイト上でこの取り組みを公開している。今回も同じサイトをつかって随時、活動の様子を公開していく予定なので、情報の更新作業をコツコツ始めた今週。
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ちょうど、職場で配られたりんごが手元にあったので、部屋で撮影したものを新しいサイトの表紙に使った。こちらのりんごは小ぶりでかわいい。
こんな感じで、家で仕事をしている。テレビをつけて、なんとなくスペイン語を耳に入れつつ。
今日は午前中、私の提案したプロジェクトの件で、ひとりの教員と打ち合わせをする予定があったので、午前は3時間ほどオフィスへ。彼は、障害を持つ人たちとのデザインプロジェクトに興味を示してくれ、南米でもソーシャルインクルージョンの考え方が浸透してきていて、ボリビアでもそういった動きが見られるようになってきている、という話を聞かせてくれた。私より5歳ほど若い彼だが、10代の頃からグラフィックデザイナーとして働いていて、もう20年近くのキャリアがあり、デザインに対する情熱はすごい。私は彼に資料として「DIVERSITY IN THE ARTS PAPER」を渡した。「全部日本語で書いてあるけどね。見るだけでも。」と言って。そして少しデスクで作業を続けてから、学校を出る。
息抜きと楽しみの料理も変わらず続けているが、ランチは外で食べるようにしている。空気の入れ替え的な感覚で。今日は少し歩いたところの健康食品店に寄りたかったので、その近くにあったファストフード店に入った。(健康食品を求めに行ったのに、ファストフード。時々ハンバーガーが食べたくなる。)
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ロース肉のハンバーガー。ジュースも頼んで、全部で18ボリ(=約300円)。前にかわいい犬が座っていたのでこの席を選ぶ。
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そして店内のメニューグラフィック。雑味満載なこの感じ。
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メニューのグラフィックは整然と、とか、おしゃれであればいいものではなくて。なんというか、、旨い刺身は、ホワイトボードにマジック!みたいな鮮度をのっける勢いも大事な要素だったり。何を提供するかで、もちろん変わるのだけど。メニューのデザインに関しては、色々おもうところがある。食は本能に直結するから?その整え方は、どこに答えがあるのか。
ランチの後、デザイナーでミュージシャンの友人に頼まれていたミュージックビデオ用の短い動画を撮影。そのためだけにテレフェリコに乗って、すぐ家に帰ってくる。
午後は、今月末の「CLUB de Intercambio(直訳すると、「交換クラブ」)」第一回目の準備。日本の近代グラフィックデザインの歴史をまとめて紹介する予定だ。私自身知らないことも多く、調べるのもそうだが、予定の時間内に構成するのも結構大変な作業だった。そしてようやくスペイン語のチェック。授業をつくるには準備に時間がかかる。それがさらにスペイン語で、となると、週一回の活動を3種類ほど持つ、って、やっていけるんかー・・・と、ちょっと想像がつかない。けど、やるとなれば、どうにかなるか、というか、どうにかする。というわけで、家でもデザインの勉強に勤しむ日々。(そして在宅になると、さらにスペイン語に触れられなくなり、一ヶ月前より喋れなくなっているような気がする。)
今日のところの作業を終了してから、髪の毛をセルフカットしてみることにした。そのまま一年伸ばしても、形が保てるカットで整えてもらっていたのだが、短かくしたい欲に負けてしまった。キッチンに大きな鏡を移動させ、ビビりながら、はさみを髪の毛に入れる。一時間少しかかって、美容師さんの見よう見真似の技(上から髪を散らし、内側にはさみを入れるやつ)も、つかって「やってる感」を出しながら、なんとなくのショートボブが完成。
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うしろの方、飛び出てる毛もありますね。。中の方、ザクっといった箇所もあります。隠れているので問題ないけども。まあ、とりあえず軽くなったのでよし。しかし改めてプロは全然違う、と感じる。
これしかないから大事に使う、とか、手に入らないから代用してみる、自分でやってみる、という日常なので、改めて日本の普段の生活がありがたいー、とおもう日々。まあ、でもそんなこんなで実験の連続なので、それはそれで楽しんでいる。
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2022年1月22日 sábado
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今日は、コロンビア人の同僚に誘われ、アーチェリーの練習に連れて行ってもらう予定が、彼の体調不良のため、予定変更。
朝から、昨日、消毒用アルコールに水没したミラーレス一眼の様子をチェックする。昨日撮影したデータは生きていて、とりあえず安心。そして試しに撮影してみる。部屋のカーペット。
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かろうじて撮影はできるものの、撮影画像の確認ができない、一枚撮ると電源が切れる、という不具合。これとは別に、一眼レフを持ってきておいてよかった、と心底おもった。カメラのチェックを終えて、少しテンションが下がりながらメルカド・ロドリゲスへ買い出しに行く。帰り道、お昼ごはんに、サルテーニャを食べた。今が時期の、いちごのジュースも一緒に。
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サルテーニャの味はそれなりに、という感じだが、お店の雰囲気が気に入った。配置や質感、色の組み合わせがなんだか、いい。
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このあと来たおじさんが、今日最後のサルテーニャひとつを買っていった。
個人商店のような規模のサルテーニャ屋さんは、お昼過ぎには売り切れになることも多いみたい。
家に戻って、買ってきたものの整理。1kgの鶏肉を一回に使う分に切り分けて冷凍庫へ入れた。そのあと、コーヒーを淹れて、買ってきたチェリーを食べる。最近のお気に入りは、チョコレートアイスにチェリーをのせ、レーズンと胡桃をかけたもの。
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コーヒーにも赤ワインにも合う。そして、休みの日の朝ごはんには、日本でもけっこうな頻度で食べていた、ザジキのキャベツサンド。今朝も、これをつくって食べた。
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ザジキとは、ギリシャでよく食べられるヨーグルトのディップで、きゅうり、ニンニク、塩、オリーブオイル、ディルが入っている。基本的にお肉に合わせるものらしいが、私はキャベツとピクルス、チーズをはさんだサンドイッチに入れて食べるのが好きで、小腹が空いたらこれを作って食べていた、日本で。ここでは、ディルが見当たらないので、今回はコカの粉末を入れてみた。
少しチャランゴの練習をしてから、今夜の友人の誕生日会の準備。プレゼントに、と昨日つくったピアスのラッピングをする。
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2022年1月23日 domingo
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今日は朝、いい天気だったのが、いま(12時)は、雨降り。
洗濯機を回したが、外には干せそうにない。
チャランゴのレッスンに行きたかったが、レッスンをしてくれるGonzaloから、「来週末に」との連絡があったので、とりあえず部屋でゆっくりと過ごすことに。雨が上がったら少し散歩に出かけようかな。日本にいるデザイナーの友人が来月出産予定なので、最近は散歩をしていて赤ちゃんや子ども向けのものを見つけると、チェックしている。
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観光客向けの露店で売っていたものだが、使いやすそうで、いい。出産予定の友人は寒い地域に住んでいるので、アルパカのニット製品など、いいものが見つかればな。子どもが1歳になってから会えるので、まだ選ぶ時間はたっぷりある。
私が以前ホームステイしていたところでは、アルパカの製品をデザインし、販売していた。休みの日にショールーム兼作業場の部屋で、セーターのデザインについて話していたのがなつかしい。日本向けに販売するセーターのデザインで、大人用なのに動物のシンプルなイラスト柄を中央に配置するのは、あまりに子供っぽくないか?と言われ、日本のわたしたちの世代(30代〜40代)はこういうデザインも好んで着るよ、と言うとびっくりしていた。そこらへんの感覚は全然ちがうよなー、と実感した記憶。
そのおうちで、わたしが自分用に選んだセーターは、日本向けにつくったものとフランス向けにつくったサンプル品と、あとで教えてくれて納得した思い出。これが日本向けのデザイン。(このぬいぐるみはオオハシ)
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これがフランス向けのデザイン。
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依然、空は暗く、雨が降り続いている。洗濯機の不具合で、13時には終わるはずの洗濯がまだ終わらない。雨も降ってるし、出かけるのをあきらめ、部屋で仕事の資料の整理などしていたら「トントン」とドアを叩く音。大家のエリカさんがなんと、お手製の餃子を持ってきてくれた!
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「皮から作ったんですか?」
「そうですよ。だって売ってないから。」
「ボリビアにきて初めての餃子です!うれしいーーー!!」と歓喜する私。
ちょうど少し残っているザジキをつけて食べれる!と、ワクワク。
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エリカさんに「ザジキって知ってます?私たまに作るんで、よかったら今度お裾分けします。」というと、グルメのエリカさんは、ボリビアでは売っていないザジキのこともやっぱり知っていた。その後、ここではディルが手に入らないから、コカを入れてみた、という私に、「コカは苦いでしょ。それだったら、ボリビアのハーブの Huacataya か Quirquiña をつかったら?」と。そのあと、ボリビアの薬草のことも少し教えてくれた。
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ATSUKINO(アツキーノ)
2006年〜日本でグラフィックデザイナーとして働いた後、2013年に渡英。スコットランドの The Glasgow School of Art で修士号(Communcation Design: Graphic Design)を取得。帰国後はアートディレクター、キュレーターとしてデザインディレクションとともに現代アートの展示企画制作なども行う。海外での生活、旅を通じて得られる新たな表現や人との出会いが次の可能性につながると信じて動く、旅するデザイナーでありアーティスト。
現在は南米のボリビア、ラパスにてJICAボランティア活動中。デザイン教育環境の改善にあたっている。
http://nakanoatsuko.com/
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