<第32話>外務省をぶっ壊す!~私、美賀市議会議員選挙に出ます!~
月曜日~金曜日更新
この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
<第32話>
久々に未来荘で机に向かう。
遠くで「火の用心、戸締りしましょう」と自治体の防犯パトロールが回っている。
もう世間では夕飯の支度をする時間だ。
「あ~、最高の政見放送を作らなきゃ。みんないろんな趣向を凝らしてくるぞ!」
自然と拳に力が入り、作らなきゃ作らなきゃいけない!と思えば思うほど、井戸失踪の件について考えてしまう。
集中力が5分ともたないのは生まれつきだ。
名倉署での警部補との会話が思い出される。
「例ば、井戸がもう殺されてたとして・・・・でもなんとなーく、私の事が怪しいなぁ~って警察が思ったとしてぇ~・・・」
「っていうか、私の周りで一体、何人消えた時に警察って動くのかしら?」
「・・・え?一人目で?!」
「おい!」
「一人目でもう動くの?死体もあがってないのに~?」
全裸で自問自答する。
ペン回しが失敗して陰部に刺さるとこだった。
「誰も死んだなんて言ってねーぞ!お前やったな!」
という昼間の卓谷のセリフがリフレインする。
「ちょ、やってないわよぉ~!」
自分のセリフもリフレインする。
堂々巡りだ。
「ちょ、待って!マジで待って!」
もし今、なんか別件かなんか、転び公妨も何でも、でっち上げでも冤罪でもでっち上げられて逮捕勾留でもされたら、私どうなる??」
「冤罪」と入れて検索する。
やっぱり足利事件が出た。
無実の罪に着せられた男性は後に無罪となったが、支援の輪が出来る切っ掛けとなったのは「公共料金の支払いを欠かさずしていた」事だった。
で、かくいう私は・・・公共料金は払ってる。
けど・・・NHKの受信料払ってない。
また「逮捕され,勾留されることによって,最大で23日間も身柄を拘束されることとなってしまいます。」
とどこかの法律事務所が解説してくれている。
「今日が7月3日で、えーと、えーと。」
指折り数える。頭に熱が上ってきた。
「もし今、逮捕されて23日間勾留されるとなると・・・25日まで出れない」
「25日まで出れない?」
「告示日はいつだ?」
「18日だ! 18日に絶対、立候補届けを出さないといけないのに!」
ヤバい!マジでヤッバい!
頭髪も含めて、全裸の全身が汗だくになってきた。
慌てて園町代表と取り交わした契約書を机の引き出しから引っ張り出す。
親指と人差し指にツバを付けて目的のページまでマッハでめくる。
「持ち逃げ又は立候補しなかった場合は10倍の3000万円にして弁償する事」
ギャーーーー!そうだった。こんな地獄の条件がついていたのだった。
しかし、こんな不測の事態が起きるなんて誰に想定出来ようか?!
「第一、 私、なんもやってないんだから!」
「てか、払ってたまるか!!」
全身がワナワナしてきた。
腹も減って邪悪な妄想に脳が取りつかれる。
「もしかして、もしかして実は園町代表と警察がグルで私から3000万円を奪取する事自体が本命だったのではないか?」
PCの画面には園町代表の外務省大臣をバカにした変顔サムネが映っている。
「私以外の候補者40人全員にも3000万円のトラップを仕掛けているんだろうか?」
「そんなはずはない!」
「てか、私そもそもは無実ではないか!」
「逮捕なんかされたら、選挙で支持を集める前に冤罪事件に立ち向かう支援の輪を広げなければならなくなるではないか!」
「それでも債権者と化した園町代表からは逃げられまい。」
「支援の輪の切っ掛け・・・『欠かさず公共料金を支払っていた』。
「アーッ、私、NHKの受信料払ってないじゃんかー!」
半ば正気を失って、ブラジャーを穿いていた。
「ぎゃ~!」
私は、警察から逃げるべき?代表から逃げるべき?真犯人を見つけるべき?それとも・・・。
つづく。
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