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<第28話>外務省をぶっ壊す!~私、美賀市議会議員選挙に出ます!~


月曜日~金曜日更新
 この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

<第28話>
「マルコ」とは、三重県にある性犯罪被害者支援センターの事だとその時に初めて知った。
ちびまる子ちゃんみたいに元気になって欲しいというのが名前の由来らしいが、被害がナーバスな問題であるのにそんな能天気な感じで良いのか?
第一、さくらももこ先生の承諾を得ているのか?


とにかく、陽子は昨年 性犯罪の被害に合ったらしい。
いわゆるデートレイプというやつで加害者は2,3度会った事のある社会人で共通の知人がいるとの事だった。
加害者は「みんなに知られたくない。和を乱したくない」という被害者の状況に付け込む。
まだ敦と付き合う前で、陽子は警察に駆け込むより先ず大輔に相談した。
相談された大輔も困惑したと思うが、陽子も気が動転していたに違いなく、男女の性別を超えて頼りにされた事は親として息子を誇りに思う。
これが「よし!オレに任せろ!」と胸を張って言える問題だったらどれだけ良かっただろう。


大輔も俺がやったように鎮痛な思いで「レイプ・相談」とネットで検索し、三重県には「マルコ」という県立の相談センターがある事を知ったのだ。
HPには「性犯罪・性暴力被害者支援のためのワンストップ相談窓口として、被害発生後速やかに被害者支援を行うことにより、被害者の負担を軽減し早期の心身の健康の回復を図ります。」と書いてある。
被害の日から随分と時間が経ってはいたが、大輔は直ぐにメールで連絡をとり陽子に寄り添ってセンターに赴いた。
「え、2人・・・どういう関係?」
天下りの還暦過ぎた女性スタッフの神経に触る驚き方、どうせ捜査機関ではないという楽観的態度に不信感もあったが後戻りする訳にも行かず、HPに書かれていた文言とはかけ離れた奇異な視線を浴びながら2人して相談室に入ったという。


性犯罪の相談センターに来た被害女性が幼馴染とはいえ男性同伴で訪れる事はめったにない。
かくして、それが返って目立つ案件という事になってしまった。
「いいもん見っけ!!」と年甲斐もなく小躍りする井戸の姿が目に浮かぶ。
相談内容が厳重に管理されていると思っているのは一般人の幻想だ。
人権センターの職員でDV男の井戸が行方知れずになっている嫁の手がかりを血眼になって求め、日々資料をあさりまくり、その相談メモに行きついた事は想像に難くない。
そして、井戸がどこまで本気だったかは知らないが、仕事を休んでわざわざ辻崎の娘である「陽子の秘密」を言いふらしに市役所までやってきていたのだ。
本気だったかからかい半分だったか、今となってはもう取返しがつかない。

「おーい。」
額にじんわり汗が滲んだ船盛が向こうで大きく手を振っている。
最初から多くを用意していないビラがはけて今日の政治パフォーマンスは終了のようだ。
チラシ配りと言いながら、自分は一歩も動いてなかったと気付く。
怪しい組織から金が一銭も出ていないのだから、地元民以外誰も本気でやらない。
せめて自分だけでも巨大風車の建設が阻止される事を切に祈りながら、大して減ってないチラシをため息と共にカバンにしまう。


「人権尊重の町」
誰に言ってるのか?、無機質でひときわ大きな看板が船盛の背後に聳えていた。

つづく。

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