<第47話>外務省をぶっ壊す!~私、美賀市議会議員選挙に出ます!~
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この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
<第47話>
部屋で沈思黙考する。
大家さんの夕涼みにはまだ早い時間だ。
声を出さないようにマスクをする。
明日の告示日には以前職員によって厳重に封をされた書類一式を持って行きさえすればいい。
さて、事件について今日中にケリをつけておきたい。
「さあ、落ち着け」と自分に言い聞かせる。
やはり、井戸の失踪に中山が関わっている。
井戸の生死は不明だが、中高年とはいえ大の男を大人しくさせて匿っていられるとは思えない。
きっともうこの世にはいないのだろう。
大輔が「ある話」を父である中山にしてから、中山の態度がおかしくなった。
大輔から何かの話しを聞くずいぶん前から井戸の執拗な辻崎虐めは知っていたわけで、中山だって何とかしたいと思っていたに違いない。
しかし自分で井戸を諫めようとしても部外者だと一蹴されたら終わりだ。
それで、船盛に近づいたのか?!
私が辻崎に近づいて票田を狙ったように。
辻崎同様、船盛があてにならないと気づくのに時間はかからなかった筈だ。
だからといって、例え、命の恩人のためであってもずっと真面目に生きてきた男がいきなり人を殺したり出来るものだろうか?
力ずくで辻崎虐めを止めさせようにも、それで治まる保証はない。
はたまた力づくでも埒が明かないと踏んだのか?
何か逼迫する事態が起きたのだろう。
もう腹が減ってきた。
ただでさえ金がないのに、役に立たない卓谷にVIPな接待を施したために自分は殆ど具の入っていない素カレーしか食べれなかったからだ。
「きゅ~っと」鳴る腹を見る。
「妊娠?!」
辻崎が電話相談にかこつけて自慢話をしてきた内容を思い出した。
「で、なんか妊娠してる感じなのよね~」と娘の事で惚気る辻崎のセリフが蘇る。
体が震えてきた。
自分の推理が確実に真実に近づいている。
えええええ?
いつ妊娠した?
中山は知っていたのか?
否、あれだけ辻崎の自尊心をくすぐる事態が起きていたのだ。
京大を出たのに派遣でしか働きに行けない不遇な娘に病院の御曹司で列記としたドクターの彼氏が出来た。
あの辻崎が黙っていられる筈がない。
市役所の職員から聞いたか、営業先で耳に入っても不思議ではない。
それ以前に交際中のカップルに子供が出来る事は珍しい事ではない。
結婚前だろうが後だろうがやがて子供が出来る。
となると・・・・だんだんお腹が大きくなってくる。
里帰り出産という事もある。
そうなる前に!
「お腹が目立ってくる前に急いで井戸を消さねばならない」という何か逼迫した事件が起きていた?!
「何か」ってなんだ?
それが、大輔が中山に話した内容なのか?
井戸の鬼の形相が目に浮かぶ。
「あ!」と記憶の断片が降りてきた。
辻崎のNPOは発行しているニューズレターにあった伏せ文字。
「『俺は県の資料を何でも見れる立場にあるんだぞ!』というのが口癖で恐かったです。
『●●●のだって見ようと思えば見れるんや』とよく言ってました。」
この「●●●」は、●●●の事であるという悲しい憶測に漸くたどり着いた。
つづく。
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