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<第39話>外務省をぶっ壊す!~私、美賀市議会議員選挙に出ます!~

月曜日~金曜日更新
 この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

<第39話>
とにかく、ツカミは英霊の遺書でNHKにリベンジするのだ。
「たかゑさん、ちゃんと聞いてくれてますか?」
お詫びの電話をしてきたたかゑを巻き込むことにした。
詫びると言っても私に迷惑を掛けている自覚なんか全くなく、実際にはセールスの電話である。
「マチルダさんの玉の輿に乗ったお姉さんを紹介してよ。お願い!」なんてヌケヌケと言えるのがこの女の凄いところだ。
「いつか機会があればね」と冷たくあしらう。
「で、こう続けようと思ってます。いいですか?」
私は出来たてホヤホヤの原稿を読んで聞かせる。

「『もう令和という新しい時代に入りました。
私たちは国際的な観点に立って生きてゆかねばなりません。
しかしこの番組は旧態依然としたNHKの現場からお送りしています。』
まず、『受信料制度は不公平です。女性宮家、女系天皇は必要ありません。』」
この二つは絶対に入れると決めていた。
そして「『日本は中国にODAだけでも4兆円近く援助致しております。なのに中国は尖閣諸島への領海侵犯を止めません!』
『これらの事を国民に知らしめるのがNHKの使命なのにやってません。
それにNHKは反社会勢力と連帯しています。』」
「どう?」と感想を聞く。
「なんかNHKをターゲットにしてるみたいやな」
たかゑが何か食べながらクチャクチャして言う。
「うー、NHKも問題なのは問題なんですわ・・」
うまく「外務省をぶっ壊す!」方向へ国民の関心を喚起させる内容にしなきゃいけないのに、うまい言葉が見つからない。
「とにかく、私がなんか変な事してるみたいに警察に吹き込まないで下さいよ!3000万も弁償しなきゃいけなくなるんだから!」というも、たかゑは「イヒヒ」と厭らしく笑うだけであった。
ホントに役に立たない女だ。


野鳥の会会員オマワリの誤解を解く苦労を背負うのは私なのだ。
「また良いのが浮かんだら相談します」と言って電話を切る。
あれでも一応は文学部出身なのだからちょっとは良いアドバイスをくれると思ったのが間違いだった。
Wowtubeを開くと、外国党の園町代表が動画を更新していた。
「選挙は点!政治は線!」とスーツに身を包んだ巨体を右往左往させながらホワイトボードの前で力説している。
「もうすぐ、外国党の初の国政選挙です。各々が独自に考えた政見放送を作ってくれてます。」
外務省をぶっ壊す!のポーズと共に檄を飛ばす。


代表の期待も大きく、みんな頑張ってると思うと、益々プレッシャーが掛かってきた。
「この選挙は私にとって命がけです!だから告示日には絶対に各候補者はちゃんと立候補届けをしてもらいます!どんな理由であれ、届けが出来なかった場合には3000万円払ってもらいます!」
「裏切ったら、お前の人生、潰してやる!」とカメラを通して指を差してきた。
代表の本気度と狂気がひしひしと伝わってくる。
「絶対に獲りに行きます!ダチョウだけに!」といつも自身を例えるダチョウと「獲り=鳥」というダジャレで締めくくっていた。
百歩譲っても全然、笑えない。
これも親子ほども年上の獣医の彼女の受け売りなんだろうか?

夜風が浴室からキツイ芳香剤の匂いを運んできた。
たかゑから買った高級ブラジャーとパンツは早く傷むと嫌なので面倒だがバケツで手洗いしている。
「クリーニング屋の倉庫・・・」
大家さんがそう言ったのを思い出した。
アパートの一窒を倉庫にしているクリーニング店はそうある訳ではない。
はっはーん。
中山のオッサンはあの部屋が恐かったんだな。
でも本当に恐がっているのは、幽霊以外の何かがあるんじゃないのだろうか?

つづく。


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