<第40話>外務省をぶっ壊す!~私、美賀市議会議員選挙に出ます!~
月曜日~金曜日更新
この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
<第40話>
今や私の国政選挙の選対となった卓谷を打合せと称してカラオケ店に呼び出していた。
一つずつ点と点を結んでいくと、先端の矢印は一直線に「門田マチルダ犯人説」へ向かう。
もうそういう検察ストーリーまで出来上がっているんじゃないか?!
足利事件とは対照的に私の「NHK受信料不払い」という事実が、巻かれた調書に誰も疑問を差し挟まず、太鼓判さえ押してしまうのではないだろうか?
「そもそもどいつもこいつも私に恩を仇で返すとは何だ!」と拳を振り上げる。
「たかゑは高いパンツを買ってやったのに!」
「辻崎は自慢話ばっかりしやがって!」
「辻崎の票田をゲットするつもりが恩を売る前に井戸が消えてしまったじゃないか!井戸はなんで辻崎が私に頼って来るまで辻崎を虐めなかったんだ!」
「警察には敬意を払ってきたのに!私を疑うなんて!」
歯ぎしりで奥歯が、この数カ月でかなり摩耗したと思う。
「呪ってやる!ぶっ殺してやる!ぶっ壊してやる!爆破してやる!毒殺してやる!ギトギトバラバラにしてやる!強酸で溶かしてやる!下水に流してやる!」小刻みに首が震えてきた。
「こ、こえ~よ。お前、グレン・クローズみたいだな」
「誰それ?」
「危険な情事って映画があったろ、あの主人公の不倫相手の女」
「古い事言うわね。とにかくあたしだって、必死なのよ!必死!」
秘密基地であるカラオケ店だが、暢気に歌ってる場合じゃない。
「義理・人情・ダイエット」は国民の三大欲求って言うじゃない?!
私はどれも満たされてないのよ!」
「少なくとも今ソフトクリームは食う必要ないだろ」
オプションで食べ放題のソフトクリームをガツガツ食べているのを忘れていた。
「ところでここに来るのに誰にも付けられなかったでしょうね?」
「いちいち気にしてねーわ。」
「私、3000万円の弁償が掛かってるのよ。みんな他人事なんだから」
「あ、NAKAYAMA LANDRY の車が止まってたけど、あの俺に怒鳴ってきたオッサンじゃなくて、若い兄ちゃんが乗ってたぜ」
「息子よ、息子。ご主人がいないからよくお手伝いしてくれるんだって」
これも実都子が言ってきた自慢だ。
「ここのスタッフの制服のクリーニングだって、辻崎さんに紹介してもらったのよ、きっと。あのオッサンこそ、辻崎さんには頭が上がらないんだからね!」
「あの市役所、来年には移転だろ?あのオッサンが言ってたように保存できんのか?」
「それも、それよ!巨大風車建設反対が忙しいからもういいって言いにきたんだってさ!」
「まったくパヨクのやる事には信念も糞もねーな!」
卓谷も解ってきたようだ。
「なんか、変よね~。結局、辻崎さんの一人勝ちじゃん!」
「ほやな」と卓谷も食べ放題のソフトクリームをてんこ盛りによそって食べていた。
「井戸はどっかに行方不明だし、何でも反対の船盛のお陰で中山さんの目先も巨風車に行っちゃって、きっとそっちの方が、利権がデカいんだろうね」
「測量の仕事回してくれる用に船盛に言っといてくれな」
「何よ!風車は私も反対なんだから!」
「何だかんだで、取り壊しまでの花壇管理の受託事業まで辻崎さんのNPOに転がり込んだみたいだし。随意よ、随意契約!」
「金は金のある奴のところに集まるな~」
「チキショーー!」
本気の本気で腹が立ってきた。
「お前が抗議に行った花屋のオバハンが『参議院選挙で外国党と門田マチルダに投票しなかった人には値引きするってお客さんに言ってるらしいそ』
「はぁ?誰に聞いたの?」
「たかゑ」
「たかゑに会ったの?」
「これよ、これ」と卓谷はズボンのウエスト部分からド派手なトランクスのゴムを引っ張り出し
「ベルサーチみたいだろ?」と言って見せた。
「パンツ買ったんだ・・・。ああいう女が好みな訳?」
「んな、訳あるかーーー!」と言葉では言っているが、満更でもなさそうだ。
たかゑはけっこう美人なのだ。
男からみると案外、守ってやりたくなるタイプなのかもしれない。
しかし、あの花屋には二度と抗議に行かないと約束した途端にこれである。
そうなのだ!
パヨクはねちっこくて執念深くて、しつこいのが最大の特徴なのだ。
中山にしても、もっと辻崎を虐めておいてくれたら、恩を売れたのに!
「ん?」
そもそもが、中山が保存運動に関して辻崎を攻撃するのだって相手を間違ってるし、恩のある辻崎を虐めたいだけなら巨大風車建設でも辻崎に難癖言い掛かりをつける事はいくらでも出来るはずだろうに。
なんであっさり「市役所保存運動」を止めたのだろう?
否、運動自体はやってる。
船盛を崇拝してる以上、ネタはいくらでもある。
なんで辻崎虐めを止めたのか?
なんでわざわざ辻崎に「保存なんか、もーえやんか」なんて言いに行ったのかしら?
つづく。
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